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宮城看板放浪記 第七回 「VOICE」

古き良き宮城の街並みをかたちづくっていた証。それは看板! 古くなるほど愛しさつのる。ライターりりっくれおなるどが、看板の声に耳を傾け一句したためる。今日も看板を求めさまよう、みちのく一人旅。今回訪れたのは、若林区河原町の洋服店VOICEさん。

Nov 11, 2018       


 
かつて、仙台市中心部に路面電車(通称市電)が走っていた事をご存知だろうか。市電は1976(昭和51)年の3月まで走っていた。現在は若林区土樋の愛宕大橋交差点から広瀬橋間の旧国道4号の道路が「昭和市電通り」と命名されている。
 
この通りは、松尾芭蕉が歩いたという奥州街道の最南端でもある。地下鉄南北線河原町駅を目指して歩くと、目を引く建物がある。
 

 
サーモンピンクの壁に「VOICE」というくっきりとした文字。60年代のアメリカの建物のような造り、「なんてかっこいいんだろう」と思い入ってみた。
 

 
店内に入ってみると、古いアメリカ製のおもちゃ、ヴィンテージのレディース服やアクセサリー、アメカジ系のメンズ服などが所狭しと並べられている。
 

 
「VOICE」は相澤さんご夫妻が営まれている。現在のオーナー夫妻がご両親から引き継いだお店だ。
 
ご主人は看板をはじめ、外装、内装、設計を手がけるだけに留まらず、Tシャツデザインなどオールマイティーになんでもできるすごい方。
 

 

 


店名 
VOICE(ボイス)
 
業種 
衣料品販売
 
創業年
1972(昭和48)年
「アメリカ屋」としてスタート
(松田優作や石原軍団が出演していた刑事ドラマ『太陽にほえろ!』放送開始。永谷園が『すし太郎』を発売。映画は『猿の惑星・征服』がヒット。)
 
1976(昭和59)年
「VOICE」に店名を変更
(映画『カッコーの巣の上で』や『タクシードライバー』などの名作が生み出された年、雑誌『POPEYE』創刊。花柄プリントのスカート、Tシャツドレス、Tシャツスーツが流行。)
 
看板制作年
2009(平成21)年
 
制作者 
オーナー(ご主人)
古き良きアメリカをイメージしている。
 
素材
⑴表の黒の「VOICE」ーウレタン素材
⑵表の水色の「VOICE」ープラスチック
⑶緑色の猫の「VOICE」ースチール製
全て手作り
 
自慢できること
子どもの頃から来てくれるお客様が、結婚して子どもを連れて遊びに来てくれることと、看板を含めて外装と内装を全て自分たちで作った事。
 
看板商品
レトロチックなお花柄のワンピース
 
もう一つの看板商品
実はオリジナルTシャツ作成の老舗でもある。地元の企業さんや、学校からの依頼でたくさんのTシャツを作成してきた。ひとつひとつ丁寧に対応することから、地元の方の信頼も厚い。


 

レトロチックなお花柄のワンピース
 
 

手作りの扉は表と裏で取っ手が違う
 
お店の各所にご主人が手作りで手がけたセンスやキャラクターが光る。外観や内装からとってもあったかい雰囲気を感じられる。
 

 
ヴィンテージのアメリカ製のガラスケースには、ピアスやイヤリングなどのアクセサリーが並んでいる。カウンターに立つ奥さんがお客さんに優しく声がけしてくれるので、初めて伺っても安心してお店を楽しむ事ができる。
 

 
所狭しと並ぶ、オールドアメリカンなゲーム機やジュークボックスや人形を眺めているうちに、古いアメリカ映画を観ているかのような錯覚に陥った。
 

『スカイジャンプ』(ピンボールマシン)
 
1960〜1970年代のアメリカ製の『スカイジャンプ』という名前のピンボールゲームのマシン。金属の球を用いて点数を競う遊戯機械。 基本的には、傾斜した盤面とそこを転がる球、それを打ち返すフリッパーで構成されるというもの。実際に遊ぶ事が可能。子ども連れのお客さんは、お母さんが買い物をしている間、奥さんがお子さんに優しくピンボールゲームの使い方を教えてくれたり遊んでくれたりしてとってもフレンドリー。夢中になって遊ぶ大人の方もいるそう。
 

 

1950年代のジュークボックス『ロックオーラ』
 
洋服をかき分けると角の方にひょっこり置かれている『ロックオーラ』という名前のジュークボックス。50年以上は経っているという。
中にはボブ・マーリー やビートルズなど、100枚程のレコードが入っており、昔はボタンを押せばレコードを楽しむことができた。今は壊れて使えないそうだけど、本物のジュークボックスを見るとテンションが上がる。「VOICE」と書かれた上にいくつかのサインがあるが、昔、お店に立ち寄った日本人ミュージシャン達のサインなのだそうだ。
 

 
そんな環境の中で成長した娘さんは、なんとアメリカンではなく、フレンチ路線! フランスの雑貨やフランス映画の雑誌、小物のコレクターとしても有名。オールドアメリカンとフレンチアンティーク。どちらも日本人が憧れた古き良き外国文化の象徴と言えるだろう。
 

 

レトロな雰囲気の洋服
 
以前は古着も扱っていらっしゃったそうだが、現在はセレクトされたレトロな雰囲気の新品のワンピースが並んでいる。他にはない個性的なファッションを楽しみたい方にはおすすめ。
 
この日来店されていた大学生のお客さんは、かわいいお洋服やポップな店内を楽しみに、時々寄り道されるそう。カップルで来店されたお客さんも、楽しそうに試着しながら店内を楽しんでいた。
 

 
「VOICE」を創業されたのは奥さんのご両親。
 
河原町界隈は、江戸時代から商人の町として栄え、そこから仙台城まで続く地名には、職人にちなんだ名前が多い。江戸時代は蔵が至る所にあった。仙台最古の蔵もあり、市の景観重要建造物に指定されている。
 
「明治から昭和初期にはフィリピンから輸入した青いバナナを熟すための『バナナ室』(バナナムロ)として使われたこともあるんですよ。」
と奥さんが教えてくれた。
 
現在残っている蔵は、旧仙南堂薬店(大正期の蔵)、旧丸木商店(市内最古となる江戸期の蔵)の2つだけなのだそう。
 

 
河原町から南材木町に入る場所にある蔵。上の写真の蔵の隣に初代「VOICE」があった。
 
「VOICE」は昭和48年に、自転車屋さんを営んでいた津国家さんというお店の蔵を奥さんのご両親が借り、アメリカ風の外観と内装に改装して始まった。店内にはセレクトした古着が並んでいたそうだ。その頃の店名は「アメリカ屋」と言った。
 

蔵を改装して店舗にしていた頃の「VOICE」(撮影2008年)
 

お正月に配っていたユニークなノベルティグッズ
 
1971(昭和46)年頃の初売りで配っていたノベルティグッズは、仙台弁を大相撲の番付表を真似て作ったもの。昔は河原町あたりも初売りに訪れる人で賑わっていた。
 
ここで一句

VOICEは奥州街道の最南端
蔵の中は思い出いっぱいアメリカン
思わず歌うよオールドソング
思わず詠むよ芭蕉の一句

 
VOICEの建物にはアメリカがたくさん詰まってます。扉を開ければ奥州街道。日本の歴史も堪能できるそんな素敵な場所に来たら、古き良きアメリカの若者になった気分で芭蕉の句を一句詠んでみようかと思うのです。
 
明日も看板を求め、みちのく一人旅はつづく。
 

衣料品店・オリジナルTシャツ作成

VOICE

  住所 宮城県仙台市若林区河原町1-1-2 電話番号 ‭‭022-264-4805 営業時間 10:30〜19:30 定休日 毎月第3水曜日

 

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