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「ウジエファン」とともに目指すHappy&Happyな社会

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ウジエグループのスタッフの皆さん

株式会社ウジエスーパー/
「ウジエファン」とともに目指すHappy&Happyな社会

 「ウジエスーパーのウはうれしいのウ」のキャッチフレーズでおなじみ、ウジエスーパー。地産地消に力を入れた店づくりが人気で、宮城県内に34店舗を展開しています。一方で「食を通した社会貢献」の理念のもと、ウジエグループ一丸となり障害者雇用や環境への先駆的な取り組みも実施。小売業の枠にとどまらない、社会をハッピーにする事業展開について、お聞きしました!

Oct 31, 2019   

人の心を動かす優れた仕事をしている方にお話を聞く特集 “お仕事の極み”

地元密着型スーパーだからできる!

「ウジエファン」とともに目指す
Happy & Happyな社会

地産地消重視
行きたくなる楽しいスーパー

 ウジエグループの事業で私たちに一番身近なものは、母体である、小売業かと思います。一体どんな秘密があるのでしょうか。今年6月にオープンしたウジエスーパー吉岡店を取材しました。

ウジエスーパー吉岡店外観。シンボルマークは、リンゴの卸しからスタートした同社の原点がデザインされている(写真提供:ウジエスーパー)

 この店舗はウジエスーパーの理念がギュッと詰まっています。「店作りには3つのこだわりがあります」と店長の畑中さん。1つは「地産地消」。入り口近くに設けられた「富揃い(ふぞろい)産直市」には地場産の野菜だけでなく地元で作られた加工品やスイーツがずらり。他の各売り場で宮城県産品を多く揃えるのはもちろん、入居するテナントが全国チェーンではなく地域の小さなケーキ屋さんというのもユニークです。

地場野菜の他、地域で作られた加工品やスイーツも豊富な「富揃い産直市」は人気コーナー

「生産者に試食・販売会を行ってもらい、消費者と生産者の顔が見える工夫をしています」と畑中さん

 2つ目は「美と健康」。体にいい食品にはPOP広告を表示するなど工夫をし、積極的に健康への提案をしています。3つ目は「みんなに優しく」。カートやベビーカーが余裕を持ってすれ違える広い通路や、低めに設定した商品棚など、親子や高齢者が使いやすい設計。買い物帰りに一息つけるイートインコーナーも設置しました。

おしゃれで清潔なイートインコーナーはカフェのよう。メーカーを招いたイベントを開くことも

 また、鮮魚・精肉の専用キッチンを備え、新鮮なうちに店舗で調理をし、できたての惣菜を販売。「朝入った生鮮品が昼にはフライや煮物に。安くておいしいとご好評いただいています」と畑中さん。
 世界各国の飲料や調味料も豊富で、輸入食材店のような一角は見て歩くだけでワクワク。料理好きも満足できる品揃えです。その一方、共働きや高齢者世帯が多い地域のニーズを汲み、調理せずに食べられる弁当や総菜は種類・量目ともバラエティ豊か。日々の買い物だけでなく、来れば楽しく何かいいものが見つかる、そして生産者や地元の店も大切にするスーパー。まさに「三方良し」です。

低めで見やすい商品棚、大きく目を引く売り場案内、広い通路など、買い物がしやすい親切な設計
 

環境と障害者雇用
先駆的な取り組み

 選ばれる店とは何だろう。1円でも2円でも安い店か。「もちろん価格は重要。しかし、好きだから、応援したいから、この店から買う」という価値観があるはずだ、と常務取締役の𠮷田芳弘さんは考えていました。

𠮷田芳弘常務取締役。「スーパーという生業は大きな影響力を発揮できる」と熱く語る

 価格だけでなく、理念である「食を通した社会貢献」をもっと追求すべきではないか。この企業を応援することが社会を良くする、と思ってもらい、好循環を生み出したい。「共感を得て、わが社のファンになっていただく。そういう世の中を信じてやってみよう」。そんな思いで𠮷田さんが環境対応と障害者雇用に取り組み始めたのは2004年頃。まだCSR*1の考えは一般的でなく、もちろんSDGs*2という言葉が生まれるよりずっと前のことです。

 06年には特例子会社*3として株式会社ウジエクリーンサービス(以下、クリーンサービス)を設立。障害者の雇用を確保し、食品廃棄物を肥料として活用するリサイクルループの事業化に着手しました。

消費期限が迫った商品の値下げ表示「ウジエコシール」。消費者に「お得でエコ」を意識してもらい、食品ロスを減らす工夫も

 現在では、店舗の食品残さを同社で回収して有機肥料を作り、それを使って米や野菜、化粧品の原料となるハーブを育てて販売。さらに作物から酒やみそといった加工品を製造するという循環を生み出しています。「エコとオーガニック、さらに障害者の社会参加をすべて同時に実現することで、新たな価値を創造したい」と𠮷田さん。

 他の企業に先駆けた取り組みは全国的に高く評価され、14年に優れた地球温暖化防止活動に贈られる「低炭素杯2014」の環境大臣賞グランプリ、15年には「3R推進功労者等表彰」の内閣総理大臣賞を受賞しました。
 
*1CSR(企業の社会的責任)/ 企業が自社の利益だけでなく、より良い社会づくりに貢献する自発的な取り組み
*2SDGs(持続可能な開発目標)/ 2015年国連サミットで採択された、2030年までの国際目標。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成される
*3特例子会社/ 企業が、障害者雇用への特別な配慮を行う子会社を設立し、当該労働者を親会社の労働者数に加えることができる制度。障害者の雇用促進と安定を図る目的がある

食品残さから作る有機肥料で育てた米を使い、登米市の醸造メーカーと連携して製造したみそ「夢のぼり」
 

バラエティ豊かな仕事で
個性とやる気を引き出す

 クリーンサービスの従業員は重度を含む知的、精神、身体の障害があります。店舗の窓清掃、残さの回収と肥料作り、農業が主な仕事。毎朝集まると車に分乗し、店舗や農場を回ります。

 リーダーの伊藤勉さんは、入社10年目。各店舗の状況や田畑の様子、天気予報を確認し、仕事の計画と勤務シフト表を作成するそう。「お客様に喜んでもらうのが、私たちの仕事」と話し、「笑顔でしっかり挨拶するようにしています」。遅れやミスが起きないよう他のメンバーの仕事にも目を配りますが、「厳しく接するのは苦手」と苦笑いも。

窓清掃を行うウジエクリーンサービスのスタッフ。拭き残しなく丁寧な仕事は信頼度が高い

 特例子会社は業務を清掃など一つの職種に絞るケースが多い中、同社はさまざまな仕事を行います。「どの人も得意と苦手がある。個性を生かし、モチベーション高く活躍してもらうには仕事の種類は多いほうがいい」とクリーンサービスのディレクター、社会福祉法人りんごの樹・理事菅原さん。「各々目標を持ち、日々成長する彼らの仕事ぶりはウジエの自慢」と胸を張ります。

「想像以上の成長が見られ日々驚かされる」と菅原さん
 

就労の実現を叶える
本気の就労支援とは

 クリーンサービスの設立によって障害者雇用率を大きく伸ばしたものの、宮城県は就労支援事業所数の順調な増加に対し、雇用者数の伸びが明らかに鈍く民間企業の障害者雇用率は長年、全国で底辺レベル。

 この矛盾の理由を「就労支援が支援だけにとどまっているのでは」と考え「本気で就労を実現する支援をしよう」と、クリーンサービスを母体に社会福祉法人「りんごの樹」を設立、18年に就労訓練などを行う、指定障害福祉サービス「虹の橋」を立ち上げました。場所は、障害者雇用に積極的なウジエの物流拠点、精肉センターなどが入るウジエロジスティクスセンター内。

障害のある人も、就労の実現と定着をかなえるウジエグループの体制図

 最大の特長は、ここでは障害のある人がウジエグループの実際の仕事に携われること。「それぞれのペースに合わせ、就労に結びつくような訓練を重ねています。できることを少しずつ増やし、皆さんに自信をもって活躍してもらいたい」とりんごの樹マネジャーの大橋さん。さらに、センター内に就職先があることで、就労に伴う環境の変化を最小限に抑えられる、就労後も支援スタッフが近くにいてケアできるといった大きなメリットもあります。全国初という、特例子会社を運営母体とする形態も、就労の実現と定着を後押しするためです。

「スキルと自信を身に着けてもらい、送り出したい」と大橋さん

 虹の橋は画期的な支援事業所として注目を集め、多くの支援学校やPTAの視察があるそう。取材時に居合わせた仙台市内の支援学校の先生は「これまでにない取り組み。生徒を安心して送り出せる」と話してくれました。
 

地方の会社の大きな挑戦
自社の夢を「ファン」とともに

 ロジスティクスセンターには保育所も併設されています。子育て中の女性が安心して働ける環境整備の一環ですが、𠮷田さんには描く夢があります。「虹の橋で支援を受けた人がここで就労し、結婚・出産をして、子どもを預けて仕事を続ける。いいでしょう?」。目指すのは、障害のある人が自立して生活する社会の実現です。

2018年に稼働開始したウジエロジスティクスセンター(太白区)

 「われわれは地方の企業だが、大きな影響力を持っている。何をするか、を見られています」と力を込める𠮷田さん。利用客に加えて生産者、メーカー、流通・運搬業者、そして従業員……毎日循環する巨大なシステムにメッセージを届けることができる。それは食という生活の基本を生業とし、地域に根ざす地元のスーパーだからこそ。「時代はWin-WinよりHappy&Happy。社会の中でハッピーの輪を作り、広げることが使命」と言い切ります。

 店舗の出口でクリーンサービスのスタッフが清掃をしていると、一旦出たお客さんが戻ってきて差し入れをしてくれたことがあったそう。「社会はまんざらでもない」としみじみ。思いを発信しファンになってもらうことで、自社の夢を社会全体で目指せるのではないかと考えます。「世界が注目するSDGsは、みんなのハッピーを実現すること。そのために何をすべきか、これからもグループ一丸となり考えていきますよ」。

リーダーの伊藤さん(左から2人目)と、ウジエクリーンサービスの皆さん

※こちらの記事は、2019年10月31日河北新報朝刊に掲載されました。

 

●株式会社ウジエスーパー

 1947年創業の食品スーパーマーケット。宮城県登米市本社。「食を通した社会貢献」をコンセプトに地域密着型スーパーとして宮城県内に34店舗を展開。関連会社に株式会社ウジエクリーンサービスなどがあり、グループ一丸となって社会貢献に取り組んでいる。 http://www.ujiesuper.com

撮影 Harty(川島 啓司)

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