湯のみ茶碗からブルドーザーまでいわば「お悩み解決業」。
究極の「お客さま第一主義」とは
人の心を動かす優れた仕事をしている方にお話を聞く特集 “お仕事の極み”

ご要望に合わせて増える
多種多様なリース機械
―― 建設工事の現場やイベントなどで使われる車や機械のリース・レンタルが主な業務と伺いました。リース品のパンフレットを拝見したのですが、ダンプやブルドーザーなどの大型重機だけではなく、折り畳み机やポールなど、本当にいろいろな種類があるんですね! 全部で何種類くらいあるのでしょうか?
小野明子社長(以下小野社長) 何種類あるんでしょう?お客さまに「欲しい」と言われたものをどんどん入れているから……分からないわね(笑)
小野寺秀明専務(以下小野寺専務) 茶碗とか、カーテンとかも貸し出すことがあるんですよ。大きな工事現場には仮設の事務所をつくるので、そういうところで使う事務用品とか掃除機とかもね。
小野社長 「小野リース」は、もともと建設機械の販売をしていました。大手ゼネコンさんを中心に商売していたのですが、ある時、創業者が「本当はこういう機械が欲しいんだけど、購入するとなると稟議が大変なんだよね……」と相談を受けたそうです。「じゃあ、購入よりもスムーズなリースにすればいいですよね」と。それでリース・レンタル業を始めました。
小野寺専務 重機など、大きな機械を購入するとなると、お客さまの方で置き場をどうするか、という問題も出てきます。リースにはそういうメリットもあるんです。
―― なるほど。リース業をスタートしたきっかけも「お客さま第一主義」なんですね。リースする品種は、どのように増えていくんですか?
小野寺専務 だんだん親しくなっていくと、お客さまから「ちょっと来てみてよ」と呼ばれるんですよ。現場に行って話をしていると「ここはこんな機械があったら楽なのに」とか「これ使いにくいんだよね」とか、いろいろ悩みが出てくるんですね。それに対して「じゃあこんなのを持って行きましょうか」と提案して増えていくという感じ。例えば「板の間に敷いたマットをはがすのが大変なんだよ」というオーダーに対して、マットはがし専用の機械のリースを始めたりね。使いにくい機器を改造して使いやすくしたり、オリジナルで作ったりすることもあります。
小野社長
仙台七夕花火祭の花火の打ち上げ現場では、うちがオリジナル開発した「放水機」が活躍しているんですよ。「火花で木が焦げそう! 気軽に広範囲に水をかけられるようにしたい!」というご要望で開発したんです。消防のホースを使うほど大ごとじゃなくても、ここの木には水をかけておきたい、というときがあるでしょう。そういうニッチな要望を解決するのが、うちならではだと思います。
小野寺専務 つくってから、もう10年くらいになりますかね。広瀬川の水をくんで、放水しているんですよ。
―― 仙台の一大イベントを陰で支えているのも、小野リースさんなんですね!


「これでいいのか」
いつも相手のためを思って
―― なかには変わったオーダーもあったと思うのですが、特に印象に残っているお客さまはいますか?
小野寺専務 全員です(笑)。一つ一つオーダーが違うので、いつも困っているお客さまに寄り添い困りごとを解決しよう、という気持ちでいます。
―― 小野寺専務は、30年以上勤務していると伺いました。「小野リース」で働いていて、仕事がおもしろいと思うのはどんなときですか?
小野寺専務 お客さまとしゃべっているときかな。じゃあこんなの探してみようか、となるときが一番おもしろい。小野リースの社風は「なんでもいいから、まずやってみなさい」なんです。お客さまのためになることは、とにかくやってみよう、という。
―― 事務所や工場などに飾ってある「これでいいのか」という色紙が気になっていました

小野寺専務 創業者の口癖が「これでいいのか」だったんですよ。いろんな意味が含まれているんだと思いますが、お客さまにとって本当にこれでいいのか、いつも考えなさい、という意味で使われることが多かったです。やってみて、これが最善かいつも考えて、どこまでもお客さまと一緒に考える。
小野社長 お客さまと地域に、いつも寄り添った仕事をしていきたいと思いっています。そういう思いを新たにしたのは、東日本大震災の時でしたね。
小野寺専務 そうですね。土木工事の機械は、復旧作業に最初に必要なもの。がれきをよけるのには重機が必要ですし、病院や避難所には発電機が必要です。うちは、機器の配送も行っているのですが、震災で大変な被害があった地域に何時間もかけて届けてくれた運転手さんもいました。
小野社長 私たちがそろえられるものは何でもそろえて、地域のためにやっていきたいと思っています。うちのお客さまがいるところは、全部「地域」だと思っています。教習センターの事業も、そういう思いで始めました。

教習、車検、巡回……
寄り添うために増える事業
―― 高所作業車やクレーンなどの運転、技能講習の教習センターもやっているんですよね
小野社長 うちが貸し出した車や機械で、事故だけは起こしてもらいたくないと思っています。お客さまが悲しむ事態にはしたくないですから。これだけさまざまな講習を受けられるのは、県内でも珍しいですね。
小野寺専務 うちの教習センターに全社員を送り出してくれる会社もあるんです。資格を取れば手当もつきますし、前よりもレベルの高い仕事に携わることができます。資格を取るっていうのは、みんなにとっていいことなんですよね。

―― 車検の工場もお客さまのためにスタートしたのでしょうか
小野社長 そうですね。「小野リース」で所有している車の車検だけでなく、お客さまの社用車なども、まとめて車検できるようにしたら喜ばれるんじゃないかなと。車検の工場は、若い社員がとても頑張ってくれています。「ダイバーシティ経営」と最近言われるようになりましたが、うちは社員の技能に合わせて事業が増えていくことが多いんです。車検部門は、技術部門に車検ができる社員が入ったことで本格始動しました。
小野寺専務 「巡回サービス」も現場の発案で始まった新事業です。技術部の部長で小野寺というベテランがいるのですが、リースでお世話になっているお客さまのところへ道具を積んだワゴン車で「何か困りごとはないですか?」と巡回するんです。
(ここで技術部の小野寺部長が登場)
―― 小野寺部長、実際に行ってみることで、お客さまからどんな反応がありましたか?
小野寺部長
うちがお貸ししている機器はもちろんですが、お客さまが所有している建設機械の点検・整備も行っています。もともとは、営業活動の補助として始めたのですが、現場に行って実際に手を動かすことで、まるっきり違う頼まれごとも増えました。点検整備は、少しでも早めに手を打つのが大事です。信頼関係ができると、事前に依頼することもできます。手ごたえのある修理を終わらせて「ありがとう」と言われると達成感がありますね。気軽に相談してもらえる間柄をつくりたいと思っています。

小野寺専務 それは私も同じです。困りごとを相談できる間柄として、信頼してもらえる関係になりたい。地域から頼りにされる会社になりたいと思っています。
小野社長 リースでも教習センターでも車検でも、お客さまのご要望があるところなら、関係性をつくる入り口がどこからでもいいんです。それぞれの場所でオーダーに応えていくことが、強い信頼関係につながると思っています。これからも変わらず、お客さまに寄り添える会社でいたいですね。
―― あの、わたし実は、フォークリフトに乗ってみたいんですが……。ちょっとだけ教習を体験させていただくことはできますか……?
小野寺専務 良いですよ! ぜひ体験してみてください!

>> 番外編! フォークリフトの教習体験の記事はこちら
「万が一にも事故があってはいけない」お客さま目線の信念が生んだ“はたらく車”の教習所
※こちらの記事は、2018年8月31日河北新報朝刊に掲載されました。
小野リース株式会社
1965年建築機械の修理を担う「小野商事」として創業し、1970年「小野リース」に社名変更。現在は建築機械器具のレンタル&リース、販売・修理、仙台教習センターでの技能教習と特別教育など、お客さまのニーズに応じたさまざまな事業を展開している。 http://onol.jp/
撮影 三塚比呂