人の心を動かす優れた仕事をしている方にお話を聞く特集 “お仕事の極み”
起業家支援で、東北から、日本を元気に!
震災後4カ月で
MAKOTOを創業
“人が幸せに生きられる社会を作る”ことをミッションに、“志”を持って立ち上がる東北地方のベンチャー・中小企業を支援している株式会社MAKOTO。
代表取締役の竹井智宏さんがこの会社を起こしたのは、2011年7月のこと。そう、東日本大震災からわずか4カ月後のことだったのです。
東日本大震災発生後、救命から復旧の段階に入ったところで「自分ががれきの片付けをしても、できることは限られている。それならば、東北のために事業を行うベンチャーを支援すれば、今後きたるべき産業復興のときに大きな働きができるはず」と決心し、MAKOTOを設立しました。
まずは、宮城県と福島県でキーパーソン同士をつなげる交流会を開催し、地域に思いを寄せる人たちの“横のつながり”を作り出しました。「志を持っていても、事業をボランティアでやっていては続かない。収益を上げながら活動を続けていっていただくために、資金面の援助をするファンド事業を始めたんです」。
MAKOTOの取り組みに
地方自治体が熱い視線
MAKOTOでは、起業家を支援する環境づくりにも力を入れており、コワーキングスペース※や起業家同士の交流の場も提供。
「これまで東北で起業が盛んでなかったことの理由に、環境が整っていなかったということがあるんです。だから、起業家のコミュニティーや“場”が必要でした」と、竹井さんは話します。
※コワーキングスペース/異なる仕事を持つ人たちが共有して使う仕事場
コワーキングスペースcocolin(ココリン)。起業家たちの交流の場ともなっています
こうしたMAKOTOの取り組みに注目したのが地方自治体で、協力要請が次々と舞い込んできました。
「次第に案件が増えてきたことから、2018年に自治体さまとのお仕事は“株式会社MAKOTO WILL”で行うことに決め分社化しました。これで、より一層の地域活性化に貢献できることと思います」。
さらに大学との連携事業にも力を入れ始めています。「“大学発ベンチャーを100社に”という大号令がかかるほど、今大学では起業家育成に注力しています。東北大学などは起業の部活もあるほどで、どんどん盛り上がっているんですよ」。
仙台市と共に、新事業に挑戦する中小企業などの支援イベントを実施(写真提供:MAKOTOグループ)
いずれは、1000億円企業として
1万人の雇用を生みだす
竹井さんに将来の展望を聞くと「私たちは、起業支援会社としてスタートしましたが、最近、事業創造プラットフォーム会社と定義を変えたんです。支援だけでなく自分たちも事業を手掛けていこう、ということですね。東北にはポテンシャルも事業チャンスもあるんだから、それを実現化させる人が増えなくてはいけない。地域をより良くしようとチャレンジする人たちが内外で集まるプラットフォーム作りを、近い将来に完成させ、20~30年後は起業家の理想郷を東北に作りたいですね」と目を輝かせました。
株式会社MAKOTOの代表取締役である竹井さん
現在は非常勤のスタッフも含めると25名の精鋭で運営していますが「いずれは1万人を雇用し、1000億円を売り上げるような会社にしたい。そのころ、私は生きてはいないと思いますけれど(笑)。私が死んでも続いていく組織であり、地域にとって重要なインフラになるということを目指しているので、思いを持つ人たちが面白い仕事をする場にしていきたいですね」と、ずっと先の未来も見据えます。
最後に、学生・新社会人に向けてのメッセージを伺いました。
「私自身、学生時代は何者でもなくて。でも、そのときに『仙台を盛り上げたい』と、ほかの大学から仲間を募って飲み会をやっていたんです。その時の仲間は、今いい大人になって経営者として自社を上場させたり、TVに出るような人になっていたりする。熱いだけの学生が、ひとかどの人になっているんです。誰でもそのポテンシャルは持っているので、みなさんにも熱意をもってチャレンジしてほしいです」。
日本にMAKOTO WILL
があって良かった、と言われるように
株式会社MAKOTO WILLの代表である菅野永さん。
MAKOTO WILLはもともとは、一般社団法人時代に地方創生事業部としてできた一部署でしたが、地方自治体からの要請が伸びていったことで、分社化しました。
「MAKOTO WILLのミッションは、“自治体と共に地方から日本をおもしろく”。実は、私の前職は公務員でした。だからこそ、地方自治体の課題を身に染みて知っているし、それを解決するのが自分のミッションだと信じています。勘違いですかね?」と笑う菅野さん。
株式会社MAKOTO WILL代表の菅野さん。「私が一番仕事ができない(笑)。だから、みんなが仕事しやすい環境を作るのが仕事」と言います
北海道での公務員生活では、組織の中で課題解決をしようともがいたこともあったそう。
「公務員のみなさんがいきいきワクワク働ける環境を整えられたら、すごくいい社会になると思うんです。なので、自分の経験から研修事業をやったりしています」。
学生時代は、「仕事が面白いとは想像すらできなかった」という菅野さん。
「バイクレーサーになろうと思っていたけど、けがばかりで。それに、バイクで死にかけたこともあって、今すでに“残りの人生”という感覚があるんですよ。だから、世の中の役に立つことを少しでも残したいと思っているんです」と。
そんな菅野さんの仕事のやりがいを聞くと、「ここで仕事をさせてもらううちに、仲間と協力して取り組むことの楽しさを感じています。入社当時は、関連会社の代表になるなんて夢にも思わなかったけど、これから地元で面白いことをしたい人がチャレンジする受け皿を仲間と一緒に作りたい。日本にMAKOTO WILLがあって良かったと言われたいですね」。
自治体職員向けオンラインコミュニティ「ホンジチ」内イベントの様子(写真提供:MAKOTOグループ)
一人ひとりの「WILL(やりたいこと)」の実現を後押しする研修事業を実施(写真提供:MAKOTOグループ)
僕の仕事は、「やりがい」しかない
東北のロールモデルとなる企業の創出とエコシステムの構築を目的に、事業を急成長させていくスタートアップ、新規事業に挑戦する中小企業の成長を支援する事業を担当している堀江洋生さん。
青森で生まれ育ち、仙台の大学に通った堀江さん。「22年育ててくれた東北に恩返しがしたい」のだと言います
堀江さんに仕事のやりがいを聞くと「やりがいしかないですね。というより、ストレスがないんですよ。自分で企画を作ってプレゼンして、それを実行しているので」と、まさに理想の働き方。
入社は3年前で、その前までは5年間、東京の大手エネルギー系商社に勤めていたといいますが、「もともと5年で辞めようと思っていたんです。会社には貢献しつつ、次のキャリアを考えようと思っていて。でも、辞めるとなったときに起業することは考えず、小さいながら家業があるので、まずは経営する側に近づこうと思ったんですよね」と、当時を振り返ります。
そんな堀江さんの今後の目標を聞くと、「東北を拠点にすることは決めているんです。MAKOTOはこれからどんどん事業を広げていくし、副業もOK。だから、やりたい仕事は社内でつくったり、つくれなければ外の人と組めばいい。東北で面白いこと、広げていきたいですよね」と笑顔で答えてくれました。
仙台市と共に、新事業に挑戦する中小企業などの支援イベントを実施(写真提供:MAKOTOグループ)
インターン中の学生さんに
お話を伺いました!
佐藤桃子さん(東北大学経済学部4年)
MAKOTO WILLでインターン中の佐藤さん。大学入学当初は公務員になりたかったといいますが、大学で学ぶうちに民間で働くことに興味を持ったそう。「何かに挑戦するきっかけがほしいと思い、MAKOTOでチャレンジさせていただきました。自分の武器を見つけて発揮しないと」と意欲的に取り組みます。主に川崎町のプログラムの作成と運営サポートを担当し、自治体の課題を解決するための新規事業の開発に関わっています。そのほか、広報としてコーポレートサイトのブログなども執筆するなど、八面六臂の活躍をみせます。「就職後もここでの経験が全部生かせたらいいですね」と、将来への期待を膨らませました。
椎木陸斗さん(東北大学理学部3年)
MAKOTOでウェブデザインやイベントのチラシなどの制作を担当する椎木さん。「MAKOTOは東北大の起業家を支援していることもあって、自分も東北大生としての視点を活かしてイベントを企画しています」。
地球科学を学んでいますが、「学校で勉強していることとは全然違うことやってみたかったんです。人と関わるのが好きだし、デザインとかにも興味あって。学生だけの間でやっていても『すごいね』で終わってしまって力試しにならないので、インターンに応募したんです」と、とても意欲的です。
まだ3年生ですが「社会に出たときにどういうふるまいをすればいいかを学ばせてもらっています」と、卒業後の展望も明るそうです。
※こちらの記事は、2019年5月31日河北新報朝刊に掲載されました。
MAKOTOグループ
2011年設立。仙台市に拠点を置く事業創造企業。「人が幸せに生きられる社会をつくる」をミッションに、起業環境整備、地方自治体と連携した地域の課題解決、大学発ベンチャーの支援・育成、スタートアップの育成・投資、失敗経験のある起業家への再チャレンジ支援等を行なっている。http://www.mkto.org
撮影 Harty(川島 啓司)