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登米の森舞台で行われる野外フェス「森波」とは

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人から人、過去から未来へ 
登米の森舞台で行われる野外フェス「森波」とは

宮城県登米市を舞台に、10年目を迎える野外フェスがあるのをご存知だろうか? その名も『森波 (しんぱ) ~wood vibration~』だ。今年も建築家の隈研吾が設計した伝統芸能伝承館「森舞台」と呼ばれる能舞台を会場に7月15日(日)に開催予定。なんと今年は音楽を楽しめるだけでなく、フリーフードだという。イベントを主催する『CAFE GATI』のオーナー、柴田道文さんにイベントを開催する理由を伺った。

Jun 26, 2018       


 

登米に住む人が集うだけではなく、
登米に訪れた人と交われる場所を作りたい

 
柴田さんが登米で『CAFE GATI』を始めたのは2006年でしたね。どんな経緯があったんですか?
 
柴田道文さん(以下、柴田)
20年前に地元の登米に帰ってきて、家業を継ぎました。そんな中で地元の良さを感じつつも、限界を意識するようになり、自分の町の資産と次の世代のために何かをしなければならないという思いが強くなっていきました。
そこで登米に住む人が集うだけではなく、登米ではない場所から訪れた人と交われる場所を作りたいと思いました。そこで自分が比較的得意な領域だった音楽とコーヒーを軸に、地元の料理人を店長に迎え、2006年の暮れにカフェをオープンさせました。
 

『CAFE GATI』オーナー、柴田道文さん。昨年の『森波』にて

 
今では『CAFE GATI』に行くために登米にお客さんが訪れるような場所になっていますね。イベントも開催されていますよね。
 
柴田
不定期ながら自主イベントを開催しています。最初は何の繋がりもなかったのにも関わらず、自分が好きなミュージシャンやDJに直接声を掛けることから始め、東京へも何度も通いました。そうしたイベントを通じてつながった演者のみならず、東北各地のお店やお客さんの輪が少しずつ広がり、その延長に『森波』が存在しています。
 

 

人口4千人程度の超高齢化したオラが村でも、
やろうと思えば楽しいことできるんだぞ!

 
『森波』は今年で10周年ですね。どういったことがきっかけで始まったんですか?
 
柴田
これまで『CAFE GATI』のイベントに招致してきたミュージシャンやDJを中心にブッキングして野外でパーティーをやろう! と仲間と始めたのが『森波』です。何も考えてなかったかもしれません。30歳を過ぎてから中二的なノリと行動で始めてしまいました。
とはいえ、当時はお店も含め地元で外に向けたことをやらなければ、という頼まれもしない使命感と危機感だけはありました。そんなことも10年続けると、本当に外から人が集まるようになったり、地元でも新しい繋がりがゆっくりと拡散していきました。
 

 
なぜ登米でやろうと思ったんですか?
 
柴田
人口4千人程度の超高齢化したオラが村でも、やろうと思えば楽しいことができるんだぞ! っていうことを証明したかったんです。
でもなかなかそんなに世の中は甘くはないわけで、証明とは程遠く、良くも悪くも一つのサンプルにはなっているのではないかと思ってます(笑)。
まじめに答えると、登米の歴史と文化と自然は、外部に誇れる素晴らしい資産だと当時から考えていました。
その豊かな地元の資産を背景に、自分たちが好きなことを通じて外部に発信できればと思っていました。多様な出会いや繋がりができて、次の何かの可能性を広げていく、そんなイメージを持っていました。ささやかな形ですが実現されている部分もあると思います。
 
いいえ、大いに実現されていると思います。『森波』というイベント名の由来は?
 
柴田
1回目の会場は登米のキャンプ場だったのですが、森林に囲まれた素晴らしいロケーションだったんです。音と森と共振するという意味を込めて “wood vibration”となりました。それに当てた漢字が『森波(しんぱ)』となります。“sympa-thy” (シンパシー)という意味も掛けています。
 

 

関わる人々のライフステージに合わせ
オールナイトのキャンプ場から
子連れOKの日中フェスに

 
以前はキャンプ場が会場だったということですが、現在は森舞台が会場ですよね。場所を移した理由を教えてください。
 

キャンプ場で開催していた時の『森波』の様子

 
柴田
一つは運営上の理由です。始めた当初に比べて関係者の多くが、仕事、結婚、出産、育児、介護などにより身動きが取れなくなっていたことから、キャンプ場でオールナイトのイベントを運営するにはもう限界が来ていると感じました。
イベントの継続を最優先で考え会場から運営形態に至るまで全て見直し、イベントの核を保持したままスリムにしようと思ったのです。
 

現在の『森波』の会場であるゆったりとした雰囲気の森舞台

 
当然ですが、開催当初からご来場いただいていたお客さんもさまざまな環境の変化で、なかなか森波に参加できなくなっている方も多いのではないかと推測していました。
そういったことから、お子さんを連れて来ても楽しめるように日中のイベントにし、授乳、オムツ交換のスペースを設けたり、様々な形でアクセスしやすい環境を再設計しました。
 

 
会場の『伝統芸能伝承館 森舞台』は、日本を代表する建築家、隈研吾さんの作品ということですが、ここでイベントを行うことについてどう思われていますか?
 
柴田
この上なく幸運だと思ってます。普通に考えたらありえないです。国内で隈研吾さんの作品を舞台にこんなことができるのは私たちだけじゃないでしょうか?
まして神聖な能舞台ですからね。恵まれた環境であることは自覚しています。
さらにいえば舞台の背景の松竹は、日本画家の千住博さんによるもの。資料室はグラフィックデザイナーの原研哉さんが携わってつくられたものです。現代の建築、美術、デザインの代表格が集結した奇跡の会場だと思っています。
 

 

飲食の出店者も演者と同じ
尊敬してやまない大切な存在
今年は最高の音とともに楽しむフリーフードを実現

 
今年はフリーフードだと聞いています。フェスとして珍しい形式ですね。なぜ始めようと思ったんですか?
 
柴田
今年になってからあるミュージシャンの助言に着想を得て、これはやってみるしかない! ってことになったんです。入場料も据え置きで大丈夫なの? と、やたら皆さんから心配されてます(笑)。
 

 
東北各地からいらっしゃる飲食の出店者の方々は、音楽で繋がっているだけでなく、尊敬してやまない素晴らしい仕事と味をお持ちです。
開催当初から一貫して、飲食の出店者は演者と同じく大切な存在なので、“ブッキング”という形で各店に出店してもらってます。それらをお客さんに最高の音とともに楽しんでいただきたいですね。ただ品切れ続出が予想されますので、早めのご来場をお勧めします。
 
それは楽しみです。ところで、どんな基準でミュージシャンに声を掛けているんですか?
 
柴田
基本的には当店に馴染みの深いミュージシャン、DJに声を掛けさせてもらってます。自分たちの独断と偏見に満ちた音楽性だと思いますが、自己満足ではなく、知らない人が聴いても必ず心に響く何かを感じられる演者を、ジャンルにとらわれない妥協のない形でブッキングし続けてきました。
 
柴田さんが目指すイベントの狙いはなんですか?
 
柴田
この土地の歴史と文化にこの時代に生きている私たちのやっていることを何かしらの形で繋げたいと思ってます。つまり過去との繋がりです。同時に次の世代に向けたイベントだとも考えています。
なんて言うとちょっと固いですが、けっこうマジでそのつもりで継続させてきました。どうであれ先人を意識しながら世代を超えたイベントを目指しています。非常に難しい目標設定ですが、それだけは貫きたいと思ってます。
来年どうなるかわからないのが、このイベントの緊張感でもありますね。
 

 
どんなお客さんに来ていただきたいですか?
 
柴田
音楽に興味がない方、登米を知らない方、登米に来たことがない方、このイベントを未体験の方、子育てや仕事で音楽のイベントから遠ざかっている方、クラブやライブハウスに行ったことがない方など、新たな出会いがあれば最高ですね。言うまでもなく、音楽好きの方、森波常連さんはマストですから!
皆さん当日、乾杯しましょう! お待ちしております。
 
柴田さん、素敵なお話をありがとうございました。今年は7月15日(日)ですね。ぜひ皆さんに体験していただきたいです!
 

 
 

森波

  公式ウェブサイト  http://www.wood-vibration.com/ イベントに関するお問い合わせ  森波実行委員会 (CAFE GATI内)  電話 0220-52-2152

 
 

CAFE GATI

  宮城県登米市登米町日野渡内の目320-1 電話 0220-52-2152 営業時間 11:00~16:00(ラストオーダー15:30) ランチタイム 11:00〜14:30(無くなり次第終了) 定休日 火曜日 https://cafe-gati.com/

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