GOURMET

ネオン管が光るお店の外観

宮城看板放浪記
第二十一回 「Cafe & Bar SUPER GOOD」

古き良き宮城の街並みをかたちづくっていた証。それは看板! 古くなるほど愛しさつのる。ライターりりっくれおなるどが、看板の声に耳を傾け一句したためる。今日も看板を求めさまよう、みちのく一人旅。今回訪れたのは、青葉区錦町にある「Cafe & Bar SUPER GOOD」。

Jan 29, 2021     

第二十一回 「Cafe & Bar SUPER GOOD」

 
ドアに描かれた店名「SUPER GOOD」

 仙台駅西口からアエル前を通過し、駅前通を北に進む。仙台駅前のビル群はほんの少し遠くなり、ここからは錦町の閑静な住宅地に入る。
駅前通を約10分ほど歩くと見えてくる「Cafe& Bar SUPER GOOD」は、夕暮れから夜にかけて、住宅街の入り口にぽこっと浮かび上がる、紫色に輝くネオン看板が目印だ。

 お店に伺う前に、仙台に住む4人の音楽愛好家に「お店には何を楽しみに足を運んでいますか?」と話を聞いてみた。
「奥さんのはんなり優しい関西弁の口調、時々音楽に合わせてさりげなく上品に踊る姿に癒される」と、店に通う音楽愛好家Aは言う。
また別の音楽愛好家Bは、「置いてあるレコードが家と同じでくつろげる。でも、材料(レコード)が同じでも違う料理を作ってくれる、そんな場所だ」と教えてくれた。

「キング・オブ・ソウル」と呼ばれている伝説のミュージシャン、ジェームス・ブラウン(以下JB)といえばここ。

「Cafe& Bar SUPER GOOD」は、巷ではそんな風に言われているらしい。

そしてここのオーナーさんは、JB愛好家としても知られているようだ。

「音楽にあまり詳しくないわたしが行ってきちんと分かるかしら?」そんな風にお店の前で緊張していると、「中へどうぞ。」と優しい雰囲気の紳士が店内に招き入れてくださった。
声を掛けてくださったのはオーナーの佐藤潔さんだ。隣りでにっこり微笑むかわいらしい女性は、奥さんのほなみさん。2人の服装はレトロ。まるで60年代のビンテージのバービーとケンの人形のように見えた。

オーナーの佐藤潔さんとほなみさんリアルバービーとケン人形のようなお二人は本当に穏やかで優しい。些細な会話にも耳を傾けてくれる。お店では、JBの音楽だけではなく、ご夫婦からJBのエピソードや豆知識トリビアも聞けて楽しい

店内には、懐かしく温かみのある、アメリカ製のビンテージ家具や食器がきれいにディスプレイされている。正面奥にはDJブースと壁一面に並べられたレコード達。カウンターには音楽関連の本が無造作にずっしりと積み上げられ、少し交互になったりして、完璧ではないのがなんだが心地よかった。人に例えるなら正装しておらず着崩しているラフなスタイルなんだと思う、こちらも気負う事がなく肩の力が抜けた。

店内に積まれた本レコード、CD、本。ほんの少しだけ雑然としているのがかえってリラックスできるのかもしれない。「並べ方の基準は潔さんにしか分からない、五十音順かも」と微笑むほなみさん。JB博士な潔さんを優しく支えるほなみさんの姿はあったかく、ご夫婦を見ていると自然と和む

「ここは定禅寺通りの始まり、という方もいれば、定禅寺通りの終わり、という方もいるんです。」ほなみさんは、にこにこしながらはんなりとした関西弁で教えてくださった。

「SUPER GOOD」という店名は、JBの曲『SUPER BAD』に対して、女性歌手のヴィッキ・アンダーソンがリリースした曲に因んでいるという。「SUPER GOODは、正式には『SUPER GOOD(Answer to Super Bad)』というタイトルで、JBの『SUPER BAD』という曲のアンサー・ソングとして発売されました。」と、潔さん。

「直訳した通り、すごく良い、というようなポジティブな理由もありますが、10年以上前に仙台のクラブで、SUPER GOODという名前でイベントをしており、そういう思い入れもあったのでお店の名前にしました。」
看板の文字は、JBが活躍した1960〜70年代のアメリカンカルチャーやレコードのフォントを参考にしたそうだ。
「JBの事なら誰にも負けない! それくらいの愛情を持っています。」と潔さんは語り、今ではJB愛好家として、その豊富な知識を生かし、音楽誌で執筆の依頼があったりするという。

「SUPER GOOD」の店内
 
本が積まれた店内

潔さんとJBの出会いは高校時代だという。当時、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』のようなロックが流行っていたが、潔さんが聴いていたのはロックではなくブラックミュージックだった。友人の勧めで何気なくJBの曲を聴いたところ、その魂の叫びのような圧倒的なシャウトや歌声に魅了されたのだという。
JB歴40年、その時からJBと共に過ごしている潔さん。初めて買ったJBのレコードは『The Best Of James Brown』。社会人になり、本格的にレコードを収集した。お店のJBのレコードは「かける用」と「保存用」で重複するものもあるが、500枚を超える。そのうち、さらにJB好きが高じて、様々なイベントでソウルミュージックのDJをするようになった。

ほなみさんと出会ったのも、20年程前にほなみさんの地元・大阪で開催されたソウルミュージックのイベントがきっかけだそうだ。はるばる仙台までお嫁に来たほなみさんは、潔さんがサラリーマンを辞めて、JBの音楽やブラックミュージックが流れる「ソウルバー」を開くと言っても反対はしなかったそうだ。

「安定した仕事を辞める事は怖くなかったですか?」そう伺うと潔さんは、にこにこしてこう答えた。
「もちろん不安がなかった訳ではありません。だけど、エルヴィス・プレスリーやビートルズは記念館があるのに、JBは『キング・オブ・ソウル』なんて呼ばれて後々各方面に影響を与えたのに記念館がない。それなら自分のお店がJB記念館のつもりでやろう、そう強く思いました。」

お店から見る駅前通カウンターに腰かけて、窓から外を眺める。心地よいBGMに包まれて、外を眺めてぼーっとしたり、他のお客さんの会話を横で聞きながらリラックスするのは至福の時間だ

そして、念願叶って2018年、錦町に店をオープンさせた。歓楽街ではなく、閑静な住宅地の一角にオープンさせたのは、潔さんが昔通っていたソウルバーの立地が似ていて、フランクで入りやすいお店の空気が大好きだったから。「誰でも入りやすいオープンな雰囲気のお店にしたかったんです。」

当初は「音楽に詳しくないから敷居が高いなあ」と様子を伺っていたお客さんもいらっしゃったそうだ。しかし、勇気を出してお店に入り常連さんになった方も多いという。
話していると窓の向こう側から通りがかった人がご夫婦に手を振る。手を振った方も、そうやって思い切ってお店に入り常連さんになった1人だといい、また次に手を振った方もそうだと手を振り返しながら教えてくださった。

「学生さんも年長の方も関係なく、音楽を通じてお店全体が一つになれる場所です」とご夫婦はおっしゃった。仕事帰り、散歩の途中、ふらりと気軽にお店に入る。店内では、音楽通の方もあまり詳しくない方も、ご夫婦を囲んで会話が弾む。「最後はみんな仲良くなっちゃうんだ」店に通う音楽愛好家のCは言った。

オープンから2年経つが、地域に馴染むフランクなソウルバー、そんな印象を持った。音楽愛好家Dは「潔さんが針を落とす瞬間が最高!」と言った。その言葉通り、潔さんが「昔の文化、芸術、音楽を感じてほしいです。」と話しながらレコードに針を落とすと、「カサカサカサ」と音を立ててレコードが回り出し、その中に詰め込まれた音楽が店内に響き渡った。

ジェームス・ブラウンのポスター店内にディスプレイされる様々な時代のJB。ここに来ると、JBの色んな顔を見ることができる

店名が描かれたコラージュ入ってすぐの真正面の壁にはもうひとつの看板は、ご友人からの開店祝い。JBをオマージュしたペイントと写真のコラージュで、ポップ過ぎず大人っぽい雰囲気だ
 
ジェームス・ブラウンのサイン入りレコード宝物はなんとJB本人のサイン入りレコード。1997年に盛岡市で行われた日本ツアーに行った際、盛岡駅のホームで公演前のJBに遭遇し、思い切ってサインをもらった。オーラがすごかったそう。直筆サインや、本人に会えたその瞬間も昔からの夢が叶った超SUPERでGOODなエピソード

カクテル「SUPER GOOD」「SUPER GOOD」という名前のカクテル。海外の赤ワインが貴重だった時代の甘酸っぱい国産赤ワイン「akadamaポートワイン」にレモン果汁を合わせている。二層のグラデーションがきれいで、味わいも爽やかで飲みやすい

1970年代製のジュークボックス1970年代製のジュークボックス「Wurlitzer Lyric(米・Wurlitzer社製)」はお店の看板商品。曲が流れる前に、チャカチャカした可愛い音が鳴る。昔は藤崎デパートの屋上等に置いてあったそうで、次の人がリクエストするまで、誰かが選んだ歌謡曲がエンドレスで流れていたのが潔さんの思い出なんだそうだ

ジュークボックスのレコード先日、音楽通の常連さん達がセレクトしたレコードをジュークボックスでかけるというイベントが開催された。幅広いジャンル、年代の曲をジュークボックスで聴けたのは貴重。まるで店全体がジュークボックスのようだった

カフェバー「SUPER GOOD」の外観看板は全部で3つ。店舗正面のプラスチックの看板、店舗入り口の看板、ガラスドアにカッティングシートを貼って作られた看板。ガラス張りから優しい灯りがあふれる店舗に、キリリとクールさが加わるようだ
 
店頭に置かれた手書き看板ドアの横には「初めての方もどうぞお気軽にお入りください」の手書きの黒板(看板)、そんな言葉がわたしのような“初めてさん”の心に染みるのかもしれない


店名
Cafe & Bar SUPER GOOD

業種
MUSIC BAR

創業年
2018(平成30)年7月
災害級の猛暑だった平成最後の夏。安室奈美恵が引退、映画は『ボヘミアン・ラプソディ』がヒット。

看板制作年
創業に同じ
60〜70年代の7インチレコードの文字フォントを参考にした

制作者
看板屋さん

素材
店舗正面(上) プラスチック
店舗ドア カッティングシート

自慢できること
お客さん!
店に訪れる事を楽しみにしてくれたり、支えてくれる。HAPPYな時間を共有してくれる。

看板メニュー
ジュークボックス
オリジナルカクテル「super good」


ここで一句

Superでgood でgodでSo good
なにこれすごくfunkyじゃん
熱い叫びに心が弾む
ヘイブラザー踊ろうここで
Wow!Wow!(うわぉ、うわぉ!)

解説
SUPERでGOOD、そんな気持ちにさせてくれる
かっこいい音楽に自然と体が動き出す。
音に合わせて踊ってみれば、「Wow、Wow!」
とHAPPY気分が心地よい。

明日も看板を求め、みちのく一人旅はつづく。

Cafe & Bar SUPER GOOD

住所 宮城県仙台市青葉区錦町1丁目1−1錦町スクエア1F 電話番号 ‭070-6615-8196 営業時間 18:00〜24:00 定休日 日曜日 http://cafebar-supergood.com/ Instagram @cafebar_supergood Twitter @supergoodsendai

※この記事の取材・撮影は感染防止対策を徹底し行いました。

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りりっくれおなるど
栗原市産まれの仙台市民。写真やファッション、音楽、映画が大好き。靴コレクションは100足突破。栄養士として、学んだ知識と鍛えられた舌で仙台の美味しい物を探している。営業で培った人脈で、食べ物や音楽、アート、洋服などで、仙台を盛り上げる事が目標。いまは立ち飲み屋で吉田類と飲む事が夢です。

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