店舗正面のテント屋根の看板
隠れた名店が立ち並び、戦後の日本の面影を少し残した東一市場を抜け、三越を背に歩くと、「1979」の文字が目に入った。「あれ?ここは、最近流行りのカフェじゃなかったかな」と、思って聞いてみると、今のご主人で2代目、今年で開店して40年目になるという。
初代の店主にあたる、石巻市出身のご両親は、店をはじめる前はヨーロッパにいた。帰国した後の1979年に、当時は一番町三丁目に喫茶店として「MILLS」を開業した。後に「MILLS」の2代目となるご主人は、開店の翌年に生まれた。
「両親は行動力の塊だったからあの時代にヨーロッパに行き、帰ってきて仙台に開業した。当時ウチの両親は23歳。だから周りの人もすごく面白がってくれたんだと思う、今でも一番町の商店街の先輩達に昔の話を聞くことが多いですからね。」
創業当時はまだまだ、日本の経済が成長していた時期。ご主人は一番町や、隣接する国分町の変わりゆく姿を常に見ながら成長した。昼は喫茶店、夜はバーのようなスタイルでミュージシャンのライブやイベントが開かれ、出版やテレビなどのメディア関係者、若手クリエイター達の集いの場だったと言う。
「街中の活気とか、景気が良いとか、常に肌で感じて育ってきましたね。バブルの時代もまさに目の当たりにしたしね。楽しそうな大人達の姿とか、親父達が経営に苦戦したり、奮闘する姿が目の前にあったからね。良いところも悪いところも記憶に残ってる。だからこそ、今、お客さんがどんなものを求めてるか考えて経営してる。今は居心地良い場所を提供したいから敢えて何も起こさない。お客さんが肩の力を抜けるように自然体でやっていきたいね。」
店舗は1989年から1990年頃、今の一番町四丁目に移転した。現在の看板は移転後に設置されたものだ。
看板は、店の入り口ドア右側と正面のテント屋根に2箇所あり、店名が黒一色でシンプルに書かれている。
店の入り口ドアの右側にある看板
店名
MILLS(ミルズ)
業種
カフェ、喫茶店
創業年
1979(昭和54)年
ソニーがヘッドホンステレオ「ウォークマン」を発売、やおきんが「うまい棒」を発売、Queenが来日公演。
看板制作年
1991(平成3)年
制作者
ご主人のお父様(初代MILLS創業者)
「MILLS」の店名が隠れそうなほど、冬でも青々と茂った、もじゃもじゃのツタに囲まれている看板。
居心地を重視した温かみのある落ち着いた外観と雰囲気に合わせ、木材を黒色に塗ったという。
素材
木材(左側看板)
テント素材(正面看板)
自慢できること
2代目として引き継いでいること。昔の常連さんが懐かしくて寄ってくれること。
看板商品
スパイシーチャイ・マシュマロトースト・ピザトースト
店内は高校生や大学生くらいの女性のお客様で賑わっている。
「若い方が何度も足を運んでくれたりするのは嬉しい。だけど親父達がお店に立っていた時に通っていた常連さんが懐かしくて立ち寄ってくれるのも嬉しい。スタッフの若い子達は当時を知るわけもないし、何の接点もないんだけど、昔のお客さん寄ってくれましたよってニコニコして当たり前の事のように僕に伝えてくれる。なんか不思議な感じだけど世代を超えてるみたいで本当に嬉しくなるよね。」
と語るご主人。
スパイシーチャイ
ミルクティーに程よくキリッと効いたスパイスがたまらない。シナモンやほかのスパイスを調合している。ホッとするチャイの風味は、なんだか大人の味。
マシュマロトースト
マシュマロとチョコレートをたっぷりかけた厚切りトースト。正直、全部食べれるかな?と不安になったけど、全然しつこくなくて、むしろおかわりしたくなるくらいの優しい甘さのトースト。
手作りプリン
ジャムの瓶みたいな赤い蓋のかわいらしい容器に入ったプリン。ちょっとほろ苦いカラメルソースをかけていただく。素朴なビジュアル味わいでリピーターが多い。
夜のMILLS
夜のMILLSの灯りはあったかい。スタッフさんもとてもあったかくて優しい。そんな事をスタッフさんに伝えたら、こう答えてくれた。
「オーナーのゆるさがあったかいんです。」
MILLSに灯りが灯ると、周りのビルのネオンが消えたような気がして街中にいる事を忘れてしまう。
ここで一句
モジャモジャのツタに隠れた一軒家
ドアを開ければ、温かな漂う空気に心が和む
ゆるりふわりとトロトロのマシュマロトースト味わえば
糖分チャージに満たされチャイな
MILLSはあったかい場所で、そんな気持ちで食べるマシュマロトーストに心もゆるりふわりと優しくなるのです。
明日も看板を求め、みちのく一人旅はつづく。
MILLS
住所 仙台市青葉区一番町4丁目7-7 電話番号 022-223-1998 営業時間 11:30〜20:00 ※金曜日、土曜日は22:00まで 定休日 無休