宮城野通を新寺方面に進み、ちょうどヨドバシカメラを越したあたり、仙台市地下鉄東西線「宮城野通駅」の近くに、不思議な看板がある。
レモン色の下地に大きく、目玉のイラストと「カトマンドゥ」という目が釘付けになるようなインパクトのある看板。スパイシーな異国料理が好きな私は、店に入ってみた。
出迎えてくれたのは、ネパール人のオーナー、サンジブさんと、日本人のスタッフさん。サンジブさんは、スタッフさんに「親方」と呼ばれている。「カトマンドゥ」の店名の由来はネパールの首都カトマンズのネパール読み。
ネパールはインドや中国が隣接している事もあり、ヒンズー教仏教、どちらも広く浸透している。店内は、ヒンズー教の神様ガネーシャと、チベット仏教の神様が祭られ、異国情緒にあふれている。
ガネーシャは頭部が象で体が人間のヒンドゥー教の神様。商売繁盛や富を象徴する
「チベット仏教の神様は『人間と人間はつながっている、仲良くする』という教えに基づいているんだ。」とサンジブさんが教えてくれた
おすすめの看板商品を伺うと、「看板商品は俺」なんて冗談も交えながら気さくにいろいろと教えてくれた。
提供しているのはネパールの家庭料理。おすすめはネパールの餃子と、ひよこ豆のカレー煮。
常連のお客さんから
「親方、今日の餃子蒸し過ぎじゃない!」
なんて、愛のある指摘が飛ぶ。
「ごめんごめん、ちゃんと火を通したくて、いつもより蒸し過ぎたかな。」
とサンジブさん。お客さんと笑い合う。
なんだか、ネパールの台所にいるみたいだ。お父さんと家族の会話のようで緊張していた私の気持ちも解けていった。
「ネパール人は他人に寛容。良い意味で適度に放っておいてくれる、そこが良いところ。日本は住みやすいし、豊か。ネパールはまだ学校に行きたくても行けない家庭の子もいる。日本の若い人たちも、そういう文化の違いを知って、自分の環境を当たり前だと思わないで幸せなんだと思ってほしいな。」
サンジブさんはそう話してくれた。
初めてお店に入ったのに、私も常連さんと自然と話が弾む。そういった温かい空気が流れていた。
店名
ネパール料理 カトマンドゥ
業種
ネパール家庭料理店
創業年
2005年(平成13年)8月
(ちょい不良オヤジが流行、映画『電車男』がヒット。郵政民営化した年。)
看板制作年
2005年(平成13年)オープンの少し前
制作者
友人とお客さん
ブッダアイ(仏陀の眼)と蓮の花を描いている
素材
ステンレスと木枠(カットシートとペンキで作った手作り)
自慢できること
ずっと通ってくれる馴染みのお客さんがいること。本物のネパール料理を出している。他のお店は真似できない自信がある。
看板メニュー
カレーライス
もう一つの看板メニュー
「俺」
サンジブさんは、裏表のない人柄で、お客様に愛されている。実はネパール語や日本語の他に英語も話せる多彩な人物。カトマンドゥにいると、まるで、行った事のないネパールの台所を想像してしまうくらいにアットホーム。
定番のカレーライス
ネパールのカレーはサラサラしてて本当に食べやすい。
トマトの風味とヘルシーなチキンの絶妙な組み合わせに食が進む。カレーの具材によって、スパイスを変えるそう。まるで、体に優しい薬膳料理を食べているよう。
この日、風邪気味で食欲が無くて来店されてたお客さんも
「風邪気味でスタミナ回復したくて来たんです。カレーライスは重いかなって思ったけどサラサラして食欲が無くても美味しい」
と、ペロリと平らげていた。チキンと野菜の2種類があり、それぞれ使うスパイスが異なる。
スパイシーひよこ豆
カレーベースのスパイシーな味付けのひよこ豆と鶏肉がクセになる美味しさ。ネパールの家庭では料理に合わせて、ウコン、クミン、ターメリックなど、定番のスパイスを含め常時10〜20種くらいのスパイスが用意されているそう。
マサラ(ガラムマサラ)は20数種も混合したものを言うそうだ。日本の家庭で、調味料の「さしすせそ」を教えるように、ネパールでは、「この料理には、このスパイス」というのをお母さんから教わり、子ども達もスパイスについて自然に覚える。
ネパール薄焼きパン
そば粉と小麦粉を混ぜて薄焼きで焼く、インドならチャパティのような薄焼きパン。カレーやスパイシーひよこ豆などとと一緒に食べたりする。
ネパール蒸し餃子
ネパールはインドや中国に囲まれ、自国の料理に中国の文化が混ざったネパール餃子がある。タレは想像していたより辛くなく、マイルド。豚ひき肉を包んであり、とてもジューシーで食べ応えのある人気の逸品。
会話が弾むカウンター席
「お客さんより俺はわがまま!」
そんな事を言ったりするサンジブさんだけど、お客さんの悩み相談や他愛もない話に、時にはジョークを交えたり、日本のダジャレも織り交ぜて楽しい会話が弾む。このカウンターを挟んで、お客さんとサンジブさんの楽しいやり取りが繰り広げられ、見ているこちらも楽しくなる。
夜のカトマンドゥ
看板同様、夜のカトマンドゥの扉はカラフルで可愛らしい。
店内にある黒板にチョークで描かれた看板
サンジブさんに「何で日本に来たんですか?」と伺うと、冗談交じりで「飛行機に乗ってきた。」と遊び心交えたジョークが返ってきた。
真面目に伺ったところ、30数年前に、ネパールで今の奥さんとなる日本人の女性と出会ったそう。「面白そうだし、行ってみようか」そんな軽い気持ちで来日して、日本の文化や、日本人のマナーがとても好きになった。そして結婚して今に至るそう。
「俺は本音しか言わない。お客さんに媚びることもしない。だから来たい人が集まる。だけどそれが楽しい」
カトマンドゥはネパールに行ったことがない私も、ネパールの家にいるみたいで、また帰って来たくなる。そんなお店だ。
ここで一句
レモン色に描かれた
異国情緒に誘われて
カレーを一口頬張れば
口の中に静かに広がる
ヒマラヤ山脈
「ネパール料理」の文字に惹かれ
ドキドキしながら店の中に入ったけど
一口食べたら、まるで、ヒマラヤの山々が瞼の裏に浮かぶようです
明日も看板を求め、みちのく一人旅はつづく。
ネパール家庭料理 カトマンドゥ
住所 宮城県仙台市宮城野区榴岡1丁目7-8 ADビル1F 電話番号 022-256-7851 営業時間 《ランチタイム》 月~土 11:30-14:00 (フードラストオーダー13:45) 《ディナータイム》 月~土 17:30-23:30 (フードラストオーダー23:00) 定休日 日曜日