仙台から塩竈を結ぶ仙塩街道沿いを、花京院から小田原方面に進む。数年前までは古き良き雰囲気の商店が建ち並んでいたが、今や近代的なマンションやビルが並び、年々開発が進んでいる。子どもに大人気のアンパンマンミュージアムもこの近くにできた。
車通りが多い街道沿いに、突然タイムスリップしたかのようなトタン屋根のたたずまいの小さなお餅屋さんが現れる。
大胆にトタンに直書きされてある店名に目を奪われる。「今野餅屋」と、黒一色でシンプルに店名が書かれている。
聞いてみると、看板は創業当時はなかったそうだ。2代目のご主人になってから、1975年に今の看板を設置以来、一度も修理をしたことはないらしい。
小さなショーケースには、素朴で懐かしい味のお餅やお団子、季節の和菓子が並んでいる。
ご主人は「看板の文字が消えたら店を閉める。」と控えめに話す。そんなまっすぐな想いで作り続けている老舗の餅は格別だ。
店名
今野餅店
業種
だんご、餅、和菓子の店
創業年
1949年
(漫画「サザエさん」が新聞で連載開始、「OH!バンデス」でおなじみ、さとう宗幸さんが生まれた年)
制作者
仙台市宮城野区鉄砲町にある知人の看板屋さん
昔は鉄砲町は職人さんの町で看板屋さんが何件かあった。
包装紙は、昔懐かしい和菓子屋をイメージして、デザインしてもらったオリジナル。
包装紙にデザインしたお店のロゴがとても気に入り、お願いして、看板職人さんにトタンにペンキでロゴを見本にペンキで直書きしてもらった。脚立に登って、トタンに直接書いた。それ以来、文字が廃れても一度も直しておらず、自然と風合いが出てきた。
素材
トタン
自慢できること
お店を休んだ事がない。かつて定休日を設けた事もあったが、せっかく来たお客さんが、がっかりしないように用事がある時以外は毎日営業している。
看板メニュー
すあま、団子、どらやき、季節の和菓子(よもぎ餅、桜餅、柏餅、水まんじゅう)
創業当時、初代は餅屋から創業した。2代目の現ご主人になってから、団子をはじめとする和菓子や季節の和菓子も作り始めた。
今野餅屋の包装紙
柏餅は、緑色の葉と茶色の葉の2種類がある
5月と言えば、鯉のぼりと柏餅。緑の葉は加工していないそのままの状態。茶色の葉は乾燥させているそう。昔は茶色の葉がお決まりだったが、今は、真空技術が発達して、綺麗な緑の葉に包む事ができるとのこと。
ほんのり甘いピンク色のシンプルなお餅、すあま
今野餅屋のすあまは、優しい甘さがちょうどいい。創業当時からの定番商品とのこと。
機械で餅をつくのが主流の中、きねと臼で、お餅にお砂糖を混ぜ、しっかりとつくのが美味しさの秘訣。
左から、あんこ、ずんだ、ごまの団子
団子は、シンプルだけど、実は熟練の技が必要な和菓子。もちろん餅も餡も手作り。
醤油はファンが多いが、職人のご主人の気分次第で不定期で出している。
人気の餡は、あんこと仙台名物のずんだ。
どの餡も味がしっかりして、ご主人の和菓子にかける心意気を感じる。
どら焼
どら焼も人気の定番商品。蜂蜜のしっとりした皮と、ボリュームのあるあんこの甘さがちょうどいい。
その他、草餅やさくら餅、水まんじゅうも四季折々の美しさと旬の美味しさを味わえる逸品。
特に筆者の大好物は水まんじゅう。ぷるぷる食感の透明な生地に包まれたあんこは最高!
期間限定商品で6月からお店に並ぶ。ついに今年もこの季節がやってきた!
ぜひこの美味しさを味わっていただきたい。
ここで一句。
新緑に映えるかわいい白緑
思い浮かべて皐月空
目には青葉と鯉のぼり
進む先には今野餅屋
5月の深緑は美しく、仙台の1番好きな季節である。青空の下。目に入る緑や鯉のぼりを楽しんでいると、緑の柏に包まれた艶々の白い餅が思い浮かび、柏餅を目指して今野餅屋に足が向いてしまう。
明日も看板を求め、みちのく一人旅はつづく。
今野餅屋
住所 仙台市宮城野区小田原2丁目1−33 電話番号 022-256-4271 営業時間 8:00〜18:00 定休日 なし(用事がある時はお休み)