仙台 冬の風物詩
「せり」の味を他人に伝えたい(前編)
連載「若気のイタリー」第2回
イタリーさとうの修行道へようこそ。時にライターとして宮城の気になることを駆け回り、またある時は芸人の舞台に上がり、さらには司法試験よりも合格率が低いと言われる宮城マスター検定に挑み落ち続ける。そんなイタリーが宮城を代表する何者かになるため、まだ知らない世界や文化へ、若気の至りが許される限り踏み込んでいく。
こんにちは。
イタリーさとうです。
仙台の冬物の食材として有名な「せり」。
近年はせり鍋が流行し、宮城ならではの地元グルメとして盛り上がりをみせています。
僕もせりが大好きで、簡単にできてオススメの食べ方は、ごま油と白だしで和えて食べるのが酒のつまみにもなって最高です。
そんな宮城では馴染みのある「せり」ですが、他県の人にとってはあまり馴染みのない食材。
春の七草として食べる機会はありますが、せり単体、根っこも含めて食べるのは他地域ではあまりみられません。
ある日、東京に住むせりを知らない友人に、この美味しいせりの味や特徴を伝えようとしたときでした。
「せり」の味をどう人に説明すればいい!?
その時の私は言葉に詰まり
「えーと、あのー草なんだけど、独特の感じがあってーえーなんていうか…」
とちょっと何を言っているんだというような状態でした。
その後考えても「せり」の説明はやはり難しい。
そこで、私と同じ20代を対象にイタリーさとう調べで「せり」の味をどう説明するか聞いてみました。
聞き方はシンプルに「せり」の味を教えて!と。
いろんな答えが返ってきたのですが、「苦くて、健康に良いものです」「根っこが美味しいらしい」「鶏肉と食べるとおいしいやつ!」など、せり食べたことない?という人もいました。
聞いてみると、親が宮城の出身ではないから家庭では出てこなかった、そもそもあの独特な感じがそんなに好きではないということがわかりました。確かに、癖のある食材ですからね
そんな中食べたことがある人で多かったのが、他の食材を例えに引用する回答。
一部を例に挙げると、
「主張が激しい三つ葉」
「シャキシャキして、三つ葉よりも草感がある」
「春菊になりかけた水菜と同じ味」
「水菜のようなシャキシャキとした歯ごたえで、味はさわやか。」
「葉と茎には三つ葉に似たツーンとするような少し癖のある独特の香り、根の部分は土の香り」
「土の香りの、甘い極細もやし」
と言った具合で「三つ葉」「水菜」「春菊」などが比較される食材としてあがってきました。シャキシャキという食感もキーワードとして回答の多くに出てきました。
1人だけ「パクチー」で例えた人がいましたが、絶対違うと思います。
さらに気づいたのは、「せり」と聞いて、葉と茎の部分が主役だと思う人と、根っこが主役だと思う人がそれぞれいること。回答では圧倒的に葉と茎派が多かったですが、確かに根っこを食べるのが肝だから根っこ部分が「せり」の主役と思う人もいるようです。あなたは最初に「せり」と聞いてどっちを連想しましたか?
さて、ここまでみんな真面目に回答してくれたのですが、自称芸人もどきのイタリーさとう調べの悪影響が以下の回答です。
「その辺に落ちている葉っぱ食べていたら大当たり引いたみたいな味」
「冬に無性に食べたくなる野菜界の『メルティーキッス』」
「アイドルの芹那が好んで食した」
「せり」の味を教えて! といきなり聞かれ、あ、これはイタリーさとうから大喜利を振られてるなと思い、ボケで返してくる人が現れたのです。
あとで聞くとみんな「せり」は好きだと答えるから憎めない仲間たちです。
さて、一つ前の例えに出てきた食材「三つ葉」「春菊」「水菜」は本当に「せり」に似ているのか!?
そう考え、これらの食材と1人だけ答えた「パクチー」を用意し、実際に生で食べてそれぞれ味の特徴を捉えることに試みました。
その前にちゃんと本物の県内産の「せり」を食べて味を確認。
そうそうこの味!
なるほど、みんなが表現したせりに納得できる部分もあるぞ。
シャキシャキ、いやジャキジャキするくらいの食感。
鼻に抜けるツーンとした爽やかなあの香り、根の部分は土っぽさ?いや意外と甘みもある気がする。
さて、用意した食材も同様に一つ一つ実食。
三つ葉:青臭さとえぐみがあり、せりのような風味は全く感じない。茎の部分の食感はせりとよく似ている。
春菊:香りが強い、独特のクセがせりに通ずるものがある。
水菜:シャキシャキとした食感は似てるがより水っぽい。無味無臭。
パクチー:やっぱり違うし!!
んーどれも「せり」には決定的に違うところがあるなー。
そうだ!
これらの食材を調合すれば「せり」を再現できるかも!
その配分こそが最も的確な説明になるはずだ!
というわけで後編では、これらの食材を使って「せり」を再現する配分を探すことに!
そして、「せり」の味を回答してくれた人と実際にせり鍋を食べて、自分の回答を確かめる!
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仙台 冬の風物詩「せり」の味を他人に伝えたい(後編)