1分コラム

木皿に載ったミツロウの写真

悩みながらも進む、
丸森町で生まれた
ミツロウラップのはなし。

 東北6県の地産品を紹介するお店「東北スタンダードマーケット」がお届けする連載『もののすがた』。株式会社金入プロデューサーの岩井巽が、数々のつくり手を訪ねる中で共感した、ものづくりの姿勢・背景を語ります。今回は、丸森町のミツロウラップのはなし。

Aug 29, 2020       

「世の中、シロともクロともつかないことばっかりだ。」

最近ふとした瞬間に、こう感じることが多くなった。

子どもの頃は、大人が言うことを信じてついていけば間違いないと感じていたはずなのに、いざ自分が大人になると、なんてグレーなことが多い世の中なのだろうと思う。

ウイルスの問題、環境の問題、経済の問題……。
政治家も起業家も、右往左往する世界に突入してしまった。

しかしそんな世の中でも、わからないなりにも行動し続ける人がいる。

今回は、環境にやさしい「ミツロウラップ 」を宮城県丸森町でつくる活動をご紹介したい。

  

ミツロウラップとは?

ミツロウラップで覆ったボール

ミツロウラップを洗っている様子

僕が「ミツロウラップ」に初めて出会ったのは、およそ半年前のことだった。
新しい東北土産をお披露目する展示イベントで、まだ工房を立ち上げたばかりの「マメムギモリノナカ」の山下久美さんと出会った。

「マメムギモリノナカ」は、2019年10月に丸森町の地域起こし協力隊に就任した、山下さんが立ち上げた。仙台市内でセラピストをしていた山下さんは、アウトドアアクティビティが趣味で、休日になると丸森町によく出かけていたという。
好きが高じて丸森町に移住した山下さんは、同じアクティビティ仲間の女性とユニットを組み、「マメムギモリノナカ」と名乗ることにした。

移住後に、丸森町の地域資源を活かしたものづくりができないかと調べを進める中で、養蜂園でつくられる蜂蜜の副産物として残る「ミツロウ」と出会った。

ミツロウを溶かして布に染み込ませた「ミツロウラップ」は、洗って繰り返し使えるエコラップとしてオーストラリアで発祥したアイテム。

その存在を全く知らなかった僕は、初見で「これ、何に使うんですか?」と素で聞いてしまった。

その特長を要約すると、

・野菜や果物を包むと鮮度が長持ち
・器の蓋としても使える
・使い古したら土に還る

という優れもの。

他にもピクニックにおにぎりやサンドイッチを持っていく時に使えたり、ちょっとした器代わりにもできるということで、その多様な使い道に驚いた。

しかし、当時まだ「ミツロウラップ」を作り始めて3カ月ほどで、パッケージやホームページも、全て手探りで自前で作られていた。

僕は仕事柄、普段からたくさんの商品に触れているので、そのパッケージを見た時に「もう少し伝わりやすくできるかも」と感じた。

その時には、「ミツロウラップ」を畳んだ状態で封筒に入れ、商品名として表に「包」と記してあったのだが、まだまだミツロウラップの一般普及が低い日本では、一眼で「ラップ」とわかるパッケージが必要だと思った。

気づけば「これ、クルクルっと丸めたパッケージにしたらどうでしょうか?」と、お節介にも話しかけていた。

  

デザインのリニューアルへ

ミツロウラップのパッケージ

マメムギモリノナカのロゴデザイン

そんなご縁から、実は「マメムギモリノナカ」のロゴマーク、パッケージのデザイン、WEBサイトのリニューアルなどを全面的に任せていただいた。

ロゴマークは「丸森」のイメージが伝わりやすい樹のかたちと、蜂蜜がしたたるかたちを掛け合わせた。

パッケージは最初のイメージ通りにロール状にし、梱包のゴミも最小限にするために、簡易的な帯で留めるだけにした。この帯は三つ折りにするとパンフレット代わりにもなり、通販利用の発送の場合は、ラップも畳んで封筒でお届けしている。

そしてWEBサイトをリニューアルするにあたって、メインとなる文章も一緒に考えさせていただいた。

文章を考える過程で意識したのは、「メリットもデメリットも、素直に伝えること」だ。

例えば、こんな文章を掲載している。

[ 人と自然にやさしく。 ] ― 森にやさしいラップ
ミツロウラップは万能ではありません。使いはじめは少しベタつく手触りがあり、熱湯で洗うと油分が落ちてしまう、付き合い方に少々コツがいるラップです。プラスチックラップほどの便利さはありませんが、その代わりに土に還ります。人と自然、両方にやさしいラップです。

[ ミツロウも農作物。 ] ― ムラもそのままに
マメムギモリノナカが使用しているミツロウは、丸森町の石塚養蜂園で生産されています。石塚養蜂園では、農薬がかかりにくい場所でハチを育てているため、そこから採れるミツロウも安心できる素材です。ミツロウの濃さは季節によって変わりますが、農作物と同じようにお楽しみください。

「ミツロウラップ」は環境に優しい一方で、人にとって易しいわけではない。
電子レンジや冷凍庫に使えないように、プラスチックラップの使い易さにはかなわない部分も数多くある。

ことも正直に掲載し、家庭のラップを100%ミツロウラップにしましょうという押しつけではなく、気軽に取り入れてみてほしいという気持ちを優先している。

 

悩みながら進む

気が生い茂った中を登山スタイルの女性が歩いている様子。木々の隙間からは青空か見える

青地のミツロウラップに包まれたサンドイッチ

デザインのリニューアルにあたって、「マメムギモリノナカ」のお二人と話し合いを重ねる中で、実はお互いに「うーん……」と議論が煮詰まる部分も多くあった。

脱プラスチックの流れが加速する中で、プラスチックを否定していく説明の仕方や、地球温暖化を引き合いに出してミツロウラップの重要性を高めていくブランディングの仕方もあるからだ。

しかし、お二人は「あくまで、生活に取り入れて気分があがるものとして広めたい」という。

もともとトレッキングやピクニックが好きで、一念発起して仙台市から丸森町に移住したこともあり、トレッキングの合間、お気に入りの柄のミツロウラップでお昼ごはんを食べることを楽しみにしているそう。

環境問題に目を向ければ、人間の行ってきたことが「正解だ」とか「不正解だ」という、シロかクロかの話になりがちだが、実は「悩みながらも楽しい方へ進む」ことが大事なのではないだろうか。

実際に、先月から東北スタンダードマーケットでも試販売をしてみたところ、予想を大きく上回って、1ヶ月で250枚近くがお客さんの手に渡って行った。

誰もがうっすらと感じている「プラスチック」への抵抗感を、あおるのではなく、楽しみながら乗り換えていくための「みんなの悩み」として共感を呼ぶ。

丸森町から生まれたこのブランドの行く先を、ぜひ見守ってほしい。

マメムギモリノナカ

https://www.mamemugi-m.com

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岩井 巽
1992年仙台市生まれ。幼少期を青森で過ごし、東北芸術工科大学進学と共に山形へ。今は株式会社金入で企画やデザインを手がけるプロデューサーとして、仙台市で働いている。趣味は喫茶店や骨董市に行くこと。特技は革を縫えること。一方で、ゲームやガジェット、電子音楽も好き。仙台駅付近に用事がある時は、いつもそばの神田を食べている。

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BGM of "BGM"

antennasiasan (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。現在(2018年)まで、国内外のレーベルから、8枚のオリジナル・アルバム、3枚のリミックス・アルバムを発表。