1分コラム

大切なことは、全部おならが教えてくれた

おならにほえど きゑぬるも・・・
様々な物語を紡いでは消える、儚いおならのあれこれ。

Feb 23, 2018

ある屁のことでございます。 第3回

 
「大切なことは、全部おならが教えてくれた」
 
 漢の武帝はその治世の終わり頃、多くの悪しき為政者と同じく家臣を信じず、民に圧政を強いた。中でも禁屁令(屁の禁止令)は、民衆はもちろん、忠臣と言われるような者たちにも冷ややかに受け止められた。
 
 曰く「私(武帝)は天に手が届く存在であるのに、下々の者は下から下へ(尻から地面へ)、私の名『武(ブ)』を呼び捨てにし、皇帝の存在など消えて無くなる風のような物だと揶揄している。今後一切、国中の街路、公の場での屁を禁じ、これを犯したものは極刑に処する」。
 
 家臣の一人、義勇は、帝直々に当時の要職である酷吏に任命された。あと数日で都を離れ任務に着こうという段であったが、禁屁令の発布をシリ、これは捨て置けぬと命知らずにも武帝に進言をした。民から屁の自由を奪えば、必ず多くの反乱が起き、流民が増える、と。武帝は特に怒るでもなく義勇に言った。「民に必要なのは自由ではない。忠義である。それはお前とて同じことである。おまえは今『民から屁の自由を奪えば』と言ったが、屁の自由はお前からも奪われている」
 
 義勇もまたそれを平然と聴き終えると「ならば」と一つ、バンッと火薬が破裂したかのような放屁をした。「ブ」ではなく「バンッ」だったからなのか、実はその時、武帝にそれほどの怒りはなかったという。ところがそれを聞いた家臣たちは驚いた。武帝の宮殿で、武帝の御前で、これは考えるまでも無い。命じられる前に義勇は屈強な男たちに捕らえられてしまった。ふむ、と義勇を見降ろす武帝の顔は、見る者が見れば冷酷に映ったに違いない。騒ぎ(放屁音)を聞きつけ、太史令の司馬遷が駆けつけた。捕らわれているのは義勇では無いか。まさか義勇が。数年後に都に戻れば、必ずこの国を良く導く男になるであろう義勇が、今まさに亡き者にされようとしている。既に武帝は、義勇をどのように晒し者にするかまで考えているようでもある。遷は考えた。なるほど自分が今関わっている歴史は、百年、二百年の後には役に立つこともあろう。しかし義勇は、今役に立つ男なのだ。義勇が死ぬくらいなら替わりに私が死のう。曰く、義を見てせざるは勇無きなり。
 
 司馬遷は放屁した。それは正に、武帝が忌み嫌う放屁だった。義勇とともに司馬遷も捕らえられた。遷の行動は屁の役にも立たず、義勇は斬首、その家族は流刑となった。司馬遷は、極刑は免れたが腐刑が決まり、その後紆余曲折を経て史記百三十巻を物するところとなる。史記の最後にこうある。私は友を助けようとし、その願いも叶わぬまま腐刑となったが、あの出来事がなかったら史記は生まれなかった。大切なことは、全部おならが教えてくれた。
 

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おならのことだけを考えてカルタを作りました。 絵札は、漫画家・長尾謙一郎氏によるオール描き下ろしです。 おならのことが好きな人もそうでない人も、 すかしている人も握っている人も、 みんな集まっておならカルタで遊んでください。 おならカルタ 2017 ©️絵:長尾 謙一郎/企画・読み札:松村 洋

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antennasia san (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。soundcloud