BGMのオススメ

ビギナーズ・ヴァイナル
今日からあなたもレコード貧乏

音もさることながら、ジャケットもまたレコードの楽しみの一つである。
中でも注目したいのが日本盤レコードの特殊仕様「ペラジャケ」。その名の通りペラッペラのジャケットの中には思いもよらない良音が!

Sep 24, 2020   

【第3回】ペラジャケの魅力
Blue Mitchell/Blue’s Mood

「タカヲちゃん、ペラジャケのジャズの音、いいらしいよ」
同好の友、ノハリンからある日突然LINEでメッセージが来た。ノハリンは年齢が私よりも一回り上の会社の先輩で、ここ10年ほど一緒にバンドをやっている酒好きのベーシストである。私は彼に敬意と愛着を表し「マイメン・ノハリン」と呼んでいる。

そんなマイメンが意味不明なメッセージを送ってきたので詳しく聞いてみると、どうやら通っているジャズ喫茶のオヤジに「ジャケットがペラペラの、1963~64年あたりにビクターから出ていたジャズの日本盤レコードはUSオリジナル盤に負けるとも劣らぬ音質なのに価格が安いから絶対買いだ!」と教えられたそうだ。「これを知っているのは日本では俺ぐらいのもんだ」とも言われたそうな。

ペラジャケ、とはその名の通り、レコードをしまうジャケットがペラペラに薄いモノを指す。ほんとに中身のレコードを抜いてしまうとポスターのようにくるくると丸められちゃうくらいに薄い。うちわのように扇ぐとよくしなる。書籍でいうならば通常のレコードジャケットがハードカバーだとすればペラジャケは文庫本の表紙並みである。

さてこのペラジャケレコード、私も中古屋で何度か見かけたことがある。価格は1,000~3,000円、相場でいっても高くはない。また、レアかと言われればそうでもない。ただこれは個人的な思い込みだが日本盤ということで音は期待できないだろうと、これまで特に気にかけていなかった。

後日またノハリンからLINEが来て、「買った! すげー音いいよ」と体験談と写真が届いた。マイメンがそこまで言うのであればこれはいいものに違いない。その日から私はいつものレコードハンティングの獲物リストにペラジャケを追加した。

そこから数カ月、プラプラとレコード屋をめぐるうちにいくつかのペラジャケに遭遇することができた。価格は安いと1,000円以下、高くても2,000円ちょっと、と情報通りであった。

さて、本来であればこのペラジャケをUSオリジナル盤と比較して音がよいのかどうかを検証すべきであるが、残念ながらペラジャケで入手できた作品のオリジナル盤を私は所有していないため、とりあえずは手元にあるブルー・ミッチェルの国内プロモ盤*1と最近手にいれたペラジャケを比較してみる。なお、いずれもステレオ盤である。

まずは通常の日本盤。たまたまプロモ盤であるが価格は2,000円弱。プロモゆえ、おそらくは同時期の通常市販盤よりも比較的状態がいいはずである。

音のほうはブルー・ミッチェルのトランペットが気持ちよくスピーカーから出てくる。ドラム・ベース・ピアノのバランスも程よくまとまっており及第点といっていいのではないだろうか。若干、低~高音域の幅(ダイナミックレンジ*2)が狭いようにも感じるがこれはオーディオシステムにもよるのだと思う。低音・高音のバランスも申し分ない。

続いてペラジャケ。こちらは2,500円。通常ジャケ盤よりも高いのはペラジャケだからか? とはいえ微差に近い。音のほうはこちらもバランスが良い。ほんのわずかであるがレンジが広く、音圧も高いように感じる。ドラムのハイハットやシンバルの鳴り方、およびウッドベースの響きが先ほどの国内プロモ盤に加えて厚みがあり、薄皮一枚剝けた感じはする。試聴環境は先ほどの国内盤と全く同じである。

以上、2枚を比べてみると差はわずかではあるが個人的にはペラジャケに軍配を上げたい。音の差、および雰囲気を持ったジャケットの作り、裏ジャケの解説・レイアウトなど、いい意味での日本らしさがありこれはこれで奥ゆかしい。特にジャケのつくりはUSオリジナル盤では絶対にありえないものである。

なお後日、上記の話をマイメンにしたところ、「ペラジャケっていっても、1963~64年のやつが特によくて、それ以降は大差ない」との返信があった。私の比較した2枚はジャズ喫茶のオヤジの選定のものではなかったらしい。なんでも、裏ジャケに年代の記載があるとのことなのだが、私のそれには記載が見当たらなかった。


【今日のうんちく】

*1プロモ盤

プロモーション盤の略。レコード会社が放送局やレコードショップのために無償配布した非売品。レコード会社が戦略的にレコードを売ろうとするためのツールであるため、市販されたものと比較して音の良いものが多い、といわれる。特にロックの世界ではこのプロモ盤はレア盤として中古市場で高額で取引される傾向がある。

*2ダイナミックレンジ

識別可能な最弱音から最強音までの幅。情報量を示す指標の一つ。なお、本文中のレンジはあくまで私個人の感覚値です。

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隷好堂 タカヲ
レコードとお酒、競馬を愛するアラフォーのサラリーマン。仙台生まれの仙台育ち。就職で大都会東京へ移住し15年。毎週レコードを求めて都内をさまよい、お目当てを見つけては散財の日々。座右の銘:「盤との出会いは一期一会」。

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BGM of "BGM"

antennasiasan (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。現在(2018年)まで、国内外のレーベルから、8枚のオリジナル・アルバム、3枚のリミックス・アルバムを発表。