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仙台のカフェ「HEY」の前に立つ和泉さん

片平で味わう心地よい異文化。
HEY 和泉洋介さんに聞く、想像と体験のかたち。

 2019年12月、仙台・片平にオープンした「HEY(ヘイ)」。5周年と同時に幕を下ろした荒町「OVAL COFFEE STAND(オーバルコーヒースタンド)」と、現在も立町で営業を続ける「Welcome(ウェルカム)」が共にお店を始めるとインフォメーションされ、オープン前からSNS上で話題となりました。取材時も立ち寄る人が絶えない「HEY」。その魅力について、和泉洋介さんに伺いました。

Jul 30, 2020   

仙台のカフェ「HEY」の和泉さんの様子

— HEYがオープンした経緯についてお聞きしてもよろしいですか?

そろそろ店舗の移転をしたいなとを考えていた時期に、こhttps://b-g-m.jp/s7u6vcn4/wp-admin/profile.phpの場所を使わないかとお声がかかったのがきっかけです。
もともと、荒町の「OVAL COFFEE STAND」と、立町の「Welcome」というそれぞれの店舗があって、お互いにお客さんとして行き来をしていました。
僕は、コーヒースタンドなのに、あまりコーヒーを推してこない、そんな「OVAL COFFEE STAND」オーナーの福地さんの人柄に惹かれていましたね。そうして通っている間に友人になりました。
互いに物件の情報交換をしていた環境があったので「一緒にやらない?」という形でスタートを切りました。

大きな会社で小さなお店の雰囲気があるお店を始めたら……

2019年にオープンしたカフェ「HEY」の店内の様子。革と木でできた長ベンチが素敵な雰囲気

― 前身となるお店はどちらも席数が少ない印象を持っていたので、「HEY」の広さには驚きました。「最初は小さいお店で」という意識はありましたか?

小さいお店で始めたかったのもあるけど、最初はあのサイズの店舗しか借りられなかったんです。

「Welcome」をオープンさせた当時はアメリカ・ポートランドのお店に憧れがあって、中心部から多少離れたところでやりたいという考えがありました。だから、西公園も近い立町のあの場所に決めました。オープン当初は「中心部から離れているからアクセスがしづらい」などというようなマイナスな部分は考えていなかったかな。

― では、もともと移転にあたって広い物件が視野に入っていたんですね。

お互いにここまで大きな店舗を想定していなかったです。
でも、移転前の店舗でそれぞれ行列ができることが多かったから「申し訳ないなあ、もう少し座れるようにしたいな」とは常々思っていましたね。

仙台のカフェ「HEY」のウィンドウに書かれた仙台のカフェ「HEY」のウィンドウに書かれたメニュー

アメリカに行ったときに、大きいお店より小さいお店の方が店主の色がすごく出ると感じていたので小さなお店が好きですね。
でも、大きい会社が大きいお店をやるのは普通だけど、小さな個人店同士が手を組んで、大きなお店を個人店ぽくやったら面白いんじゃないかなと思って「HEY」の今の形があります。チェーン店のファミレスみたいな、画一的なサービスではない展開ができたら面白いかなと。

仙台のカフェ「HEY」の入り口から見た店内の様子。奥行きがあり左手にはオープンキッチン、奥には大きなテーブル席がある

「大きな会社が小さなお店をやる」という点については、ポートランドの「Stumptown Coffee Roasters(スタンプタウンコーヒーロースターズ)」がヒントになってます。
彼らは、農場と契約したらその農場の生活水準を上げることもサポートするのだそう。そうすることで農家さんもよりいいものを作ろうと奮起してくれる。「Stumptown Coffee Roasters」は、そういうことができる大きな会社。でも、例えば一号店ではお店のスタッフがバンドをやっていたり、アーティストだったりして、店内には笑っちゃうくらい爆音でパンクミュージックがかかってる。お店には働いているバリスタの絵が飾ってあって、もちろんコーヒーも美味しい。大きな会社だけれど、1つ1つのお店の雰囲気が個人店のようで素敵だなと思っています。

洋服屋で服を選ぶような時間をご飯屋で

アイスコーヒーを飲みながらオープンスペースで話す「HEY」の和泉さん

― 2019年12月のオープンから半年が経ちましたが、今までと変わったこと、変わらないなと感じていることはありますか?

来店するお客様の雰囲気はあまり変わらないけれど、年齢層は広くなって大人世代の人も来てくれるようになりました。
欲を言えば「Welcome」の時みたいに、ご飯屋ぽくない、洋服屋で服を選んでいるような空気感の接客ができたらいいなと考えています。

「HEY」には、飲食店未経験の元アパレルスタッフもいます。飲食店経験者にはない視点の「雑談のような接客」をして欲しい。普通にご飯を食べにお店に入って「今日の服素敵ですね〜!」と声をかけられる。褒められて悪い気がする人はいないと思っていて。つけてる香水の話とか、履いている靴とか、一見すると普通の飲食店ではしないような「無駄話」みたいな会話を生み出して欲しいなと期待しています。

― 昨今の状況もあって、私は「外食」を特別な時間に感じています。その分おしゃれをして出かける日もあるので誰かに褒めてもらえるのはとても嬉しいです!

店内で販売されているTシャツが並ぶ

― 店内ではTシャツやスウェットなどのアパレル商品の展開と販売もしていますが、それは目指している接客が反映されているのでしょうか?

それはまた別の考えかな。
もともと海外のコーヒー屋はアパレル商品を作っているお店が多い印象を持っていて。一番最初にポートランドに行った時にすごく好きになったお店は、雑貨屋さんだけどカウンターにチーズやハム、ひき肉とかワインが売っていて、衣装ケースにはカルチャー雑誌、メインのところにも雑誌が置いてある。雑誌といっても日本でいう週刊誌のようなものじゃなく、色をテーマにしたアート雑誌とか。そんなものすごくちっちゃなお店の前は花屋になってるんだよね。

― 素敵ですね!

そのお店でもトートバッグとか売っていて、シーズンごとにデザインが変わるんだけど、こういうのがあったらいいなと思って。そういう経験から、「HEY」でもアパレル商品が生まれました。

もちろん最初は自分たちが着るために作ったけど、コーヒー屋さんでTシャツを売っているという環境は自分の中では自然なことだったんだよね。

僕は、アパレルに付加価値は求めていないのでほとんど名刺感覚。
過去に来店してくれたことがある人から「Tシャツが欲しいけれど、こういう状況だからお店に行けない……」という声がありWEBSHOPを立ち上げました。今は無理せずWEBSHOPで選んでくれてもいいし、今度お店に立ち寄った記念に、お土産感覚で楽しんでいただければと思っています。

仙台の人気カフェ「HEY」の外観。シックなタイル張りの壁

― 和泉さんのポートランドへの熱量が伝わってきますが、お店を始めるにあたって参考にしている部分はありますか?

国民性の違いはあるから、同じお店はできないけれどテーマにしたお店があって。めちゃくちゃ混むお店で、朝8時半から始まって、9時には行列ができるんだよね。それなのにお店の中はそんなことを感じないくらいゆっくり穏やかな時間が流れている。

最初にお店に入るとオーダーをするんだけど、オーダーし終えて待っている人は、中にいる人たちも「席を譲らなきゃ」みたいに急いでいる感じがない。レジの人もお客様と談笑したりしているし、外に並んでいる人たちも「おいおい早くしろよ」みたいな空気も全くない。お店の空気がそうさせるのか、国民性なのかそういうところが自然でいいなと。
そのためだけにポートランドに行ってもいいと思っているくらい。

僕の中で「ベリーポートランド」なお店がいくつかあって、全部ちっちゃいお店なんだけどオーナーの人柄や色が特に濃く出ている。売っているものがへんてこなお店もあるけどそれがいいなって思ってます。

テーブルを文化が集う社交場に

仙台の人気カフェ「HEY」の店内奥にある気でできた長テーブル。店内奥には印象な大きなテーブルが。知らない人と挨拶をしたり、メニューを渡したり交流が生まれるこの場所が筆者のお気に入り

― 個人的に、「Welcome」の大きなテーブルを知らない人たちと囲むのが好きだったので、「HEY」にも大きなテーブルがあって嬉しかったです。

本当は「HEY」にはもっと真四角のテーブルを入れたかったんだけど場所がなくて。
一辺に4人くらい座れるような大きなテーブルを置きたかったな(笑)。

大きなテーブルは「Ace Hotel Portland(エースホテルポートランド)」のロビーをイメージしています。系列ホテルの「Ace Hotel New York」のロビーでは、夜にDJイベントが開催されることもあって、そこでいろんなことをやっている人が出会う。例えばモデルやアーティストとカメラマン。文化が集う社交場になっているので、同じように「HEY」も社交場になればいいなと。

―「HEY」ではディナータイムがあることで仕事終わりに立ち寄る機会が増え、さらに交流が生まれそうですね。1日を通して客層に変化はありますか?

オープン当初は一緒かな。夜はお酒を楽しみに来て欲しかったんだけど、昼の延長って感じ。最近はお酒を飲む人が増えてきて年齢層が高くなったように思います。お酒を楽しんでくれるのは嬉しいですね。(※2020年7月現在はディナータイムの営業を休止。)

SNS時代に提供するエンターテイメント

仙台のカフェ「HEY」で人気のドーナッツが並ぶショーケースの様子

― 可愛いドーナツや、オープンサンド、そしてオシャレな店内。Instagramを中心としたSNSでも注目されているように思いますが、マナーなどで困ったことはありませんか?

「写真とってもいいですか?」と声をかけてくれる人もいます。もちろん「どうぞどうぞ!」とお返事します。
ただ、マナーを守って撮影してくれる人が増えていく一方で、気になることももちろん増えてきているのも事実です。例えば、声かけなくスタッフを撮影するとか……。

仙台のカフェ「HEY」のオーナー和泉さんの背中

お店に立っている以上、プライバシーはないのかもしれませんが、海外では「写真撮っていい?」と聞くと「何に使うの?」と聞かれます。プライバシーに関する面で意識の違いもありますが一度、立ち止まって考える機会があるといいなと思います。

― そうなんですね。お店としてSNSを運用する際に気にしていることはありますか?

「HEY」のInstagramは2種類あって、「Welcome」側のアカウントには出来るだけ料理の写真を掲載しないようにしています。写真を上げたほうがいいのかもしれないけれど、すごく好きな京都の「ME ME ME(ミーミーミー)」を参考にしてそのような形にしました。
ME ME MEのオープン当時は店内の写真撮影もNG。SNSにもメニューに関係ある写真は上がらないし、店主のブログにはお店と全然関係のない話題ばかり。
その理由を聞いたら「僕がやっていることはエンターテイメントだから、何が出てくるかわかったらつまらないでしょう」と。最近は写真撮影OKにしているみたいですが(笑)。
「ME ME ME」の店主にポートランドも連れて行ってもらいました。その考え方に影響されたり、感化されたりしているのかもしれません。

Instagramに写真を載せて「これはこんなメニューです」とすればお客様がもっと来るかもしれないけれど「これください」とスマホの画面を見せられるのも違うのかなと。

仙台のカフェ「HEY」の和泉さんの様子

― お店のメニュー表にもイメージ写真がないですね。これも理由があるのでしょうか?

そうですね。「HEY」のメニューには材料の単語しか載っていません。
文章で説明しても「パンの上に目玉焼きが乗ってます」みたいになってしまうんだけど(笑)。

材料だけ見て「何だろう」と思って頼んで「どうやって食べるんだろう」と届くまで考えて待ってほしいですね。最近はSNSに写真を投稿してくれる人がいるので簡単にイメージがついちゃいますが……(笑)。

― 私は日中ではなく夜に利用することが多かったので、いつもスタッフさんにオススメを聞いて注文していました。

そうやって「オススメなんですか」と聞いてくれるとそこで会話が生まれる。もちろんどれを頼んでも美味しいですよ。攻めたSNSでの発信も、メニュー表も、結局は料理ありき。
基本的に料理がブレてなくてどれを頼んでも美味しいからできることだと思っています。

仙台のカフェ「HEY」の和泉さん

アメリカに行った時も、材料だけ書かれた完全にわからないメニュー表から注文して、頼んだものがきた時に「こういうのか〜!」って。そして食べたら美味しい。そういう経験をしてきたから取り入れたかった。逆に海外に行った時に「HEYっぽい」と思ってくれたらいいな。

自分が影響された海外の空気感をお店に入れ込んでいるから、このお店を通して「ポートランド行ってみたいな」「海外のお店ってどんな感じかな、行ってみたいな」と思う人が出てきたら嬉しいですね。

多くは語らない。
ディグる楽しさを残した店内。

仙台のカフェ「HEY」に飾られてあるポートランドの作家Jess Ackermanさんの絵客席にはポートランドの作家Jess Ackermanさんの絵が飾られている

― 店内ではアーティストの作品がディスプレイされ、販売もされていますね。

2人のアーティストに協力してもらっています。実際にポートランドで会ってお話をしたことがある人たちです。
全然知らない人にメールでオファーしているのではなくて、顔を知っていて誰が作っているかわかるものを扱っています。もちろん誰でもいいわけではなくて「お、いいな!」と思った作品です。

仙台のカフェ「HEY」の一角に販売されている服食器や花器も店内で購入可能

今は、情報が向こうからやってきて取捨選択する時代。僕は情報を自分で取りに行く時代に育ったから、自分で興味を持ったら全く情報がないところからどんどん掘り下げていく。
そんな風にSNSのタグからでもいいからその人に興味を持ってフォローしてくれたり、調べてくれたりしたら嬉しいと思っています。
なのでこちらからは必要以上のことはお話ししません(笑)。
それがかっこいいと思っているところもあります。

テーブルに置かれたアイスコーヒー。赤いストローが映える

コーヒーに関しても特別何かを語って提供しているわけではありません。
出てきたコーヒーが美味しいのがいいなと思っています。飲んだ人が「美味しい」と思って「この豆って何ですか?」と声をかけられたら、もちろんお話しできますよ。
ちなみに現在「HEY」で提供しているコーヒーは、ご飯の味を引き立てるコーヒーです。

― 今後チャレンジしたいことなどはありますか?

結構色々やりたいことがあります。もちろん、他のメンバーもやれることは増えてきてるので。まずはキッチンが大きくなったから、もっといろんな展開ができるのではないかとも思っています。
ゆくゆくは新しいお店とかも考えていくこともあるのかもしれないですね。もちろん、美味しいご飯ありきで、内装を徹底的にこだわって作り上げてみたいなという思いもあります。

個人的には、相反するものが好きだから、引き算を楽しみながら余白を作り上げていきたいなと思っています。

― 次はどんな美味しいものが食べられるのか聞いているだけでもお腹がすいてきます! 今後のお店の皆さんの動きにも注目ですね。本日はお時間をいただきありがとうございました!

HEY

住所   仙台市青葉区片平1-1-11 カタヒラビル1F 営業時間 9:30〜18:00(短縮営業中) 定休日  木曜日

Photo by はま田あつ美
協力:HEY

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スズキアン
1993年岩手県生まれ。仙台・春日町のシェアオフィス「THE 6」のスタッフを経てフリーランスに。岩手との二拠点生活を計画しつつ、装飾・SNS運用を軸に活動中。最近、南部鉄器を持ち始め、一緒に出社しています。

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antennasiasan (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。現在(2018年)まで、国内外のレーベルから、8枚のオリジナル・アルバム、3枚のリミックス・アルバムを発表。