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「BEAGLE USED & VINTAGE」内で亀井さんを囲む

イラストレーター・亀井桃インタビュー 後編
譲れないを、大事に

 仙台を中心に活動するイラストレーター・亀井桃。2020年6月から、BGMのカバーイラストを担当している。ポップで可愛らしいタッチの中に見え隠れするオリジナリティが人気を集めている。後編は、彼女の友人でもあり、昨年ZINE『Native Grass』を発行した「BEAGLE USED & VINTAGE」のタツロウさんとアンナさんと共に、ZINEの制作秘話や、自身の10〜20代についてトークしてもらった。

Jul 10, 2020         

前編:イラストレーター・亀井桃インタビュー前編 ポップの中にあるもの

—タツロウさんとアンナさんが、桃さんと出会ったのはいつですか?

タツロウ
友達のイベントに桃ちゃんがライブペイントで出ていて、僕らも物販で呼んでもらっていて一緒になったのがきっかけ。その時は挨拶くらいで終わったんですけどね。


本当に挨拶だけだったね。お互い人見知りだから、ぎこちなくて変な感じだったもん(笑)

アンナ
桃ちゃん控えめだからね〜。


でも、改めてお店に来て喋ってみたら好きなものとかが合って。年齢も近いから音楽の話とかで盛り上がったんだよね。

 

パーソナルであったかい本

—2019年、オリジナルの ZINE『Native Grass』を発行されたタツロウさんとアンナさん(300部限定、初版は完売)。そのZINEの中で、桃さんが挿絵を描かれています。ZINEを作ろうと思ったきっかけは?

ZINE『Native Grass』を手にするタツロウさんの写真

タツロウ
2019年8月に、僕らが主催の音楽イベントを、アーティストのGAGLEを招いて開催したんです。その時にGAGLEのHUNGERさんが、「これだけ出展者を集めてコミュニティを作ってやっているんだから、このままイベントだけで終わらせるのは勿体無いよ。」って言ってくれて。確かにこのまま音楽のイベントだけをやっているんじゃなくて、これまで協力してくれた人達にインタビューして本を作ろうかなと思って。8月に思い立ってそのまま数カ月で仕上げました。

—ZINEでは、きっかけを作ってくれたというHUNGERさんをはじめ、総勢26名の方々にインタビューされています。短いスパンでよく作りましたね。

タツロウ
いやぁ、本当に(笑)
僕が「ZINE作る」って色んな人に言って、インタビューして、パーツだけ集めて「パーツ持って来たよ」ってね(笑)

アンナ
今まで本とか編集なんて大それた事したことないからね。また無茶なこと言いだしたって感じだった(笑)

「BEAGLE USED & VINTAGE」のアンナさん

タツロウ
このZINEには、知る人ぞ知る人がいっぱい載っているんですね。インディーだけど超かっこいいバンドとか、服屋さんでクオリティは高いんだけど皆がみんな行くお店じゃないようなところ、喫茶店、自転車屋まで。僕らのお店と繋がりがあるところを選んで、その人がどんなことを考えて活動しているかを聞いて載せている、パーソナルであったかい本です。そういう自生草のようにたくましく独立していて、文化的な活動をしている人たちにスポットを当てるという意味で、タイトルを 『Native Grass』と名付けました。

ZINE『Native Grass』の写真

タツロウ
実はこの本、制作費がすごくかかっていて、リリースイベントも大赤字。本当に作りたいって気持ちだけで作ったから、この先こういうのを作る人っていないんじゃないかな。奇跡の一冊です。

アンナ
あの時はバブル期だったね(笑)


でも、2人のそういう気持ちが良かったよね。だから協力したいなって思った。

ZINE『Native Grass』の挿絵を担当した亀井桃さんの写真

-どの人のページも文字がぎっしり詰まっていて内容が濃いですよね。いろんな想いを受け取りながら作ったんだなぁと。そこに桃さんの挿絵があることで、より内容がすっと入って来ますね。

タツロウ
そう言ってもらえて良かった〜。はじめは文字だけでいこうかなと思ったんだけど、小説じゃないのにこの分量はおかしいな、と(笑)。そこで桃ちゃんにイラストをお願いしたんだよね。インタビューした人それぞれに合わせていろんなイラストを描いてくれたんですけど、どんどん追加の注文が増えちゃって……。


100個以上描いたよね。でも楽しかった。なんの苦痛もなく描けたのは、やっぱり趣味が合っていたからかな。

ZINE『Native Grass』の中のモノクロ挿絵

ZINE『Native Grass』の中のカラー挿絵

—周りの反応は?

アンナ
お世話になっているお店でも置かせてもらったりしたんですけど、お店やりながら作っている様子を見て、「君たち何屋なの?」って言われたよね(笑)
インタビューした人もそうだけど、イラストを桃ちゃんに頼んだこともそうだし、印刷も友達の勤めている印刷会社にお願いしたり、せっかく作るなら顔が見える人にお願いしたかった。そういうこだわりはいっぱい詰まっているよね。

タツロウ
僕らは若い世代の人に読んでもらおうと思って作ったんですけど、文字も多いし、あんまりキャッチーじゃなかったみたいですね。意外と大人の世代に読んでもらえて反響がありました。

—タツロウさんのいう「キャッチーじゃない」とは?

タツロウ
若い子から見て、敷居が高いということかな。若い子には若い子のカルチャーがあって、今っぽさを推さないと興味持ってくれないかも。逆に言うと、このZINEは今っぽさを追い求めたわけではないから、何年経っても良いって思えるものになったかも。


うん、残ると思う。きっと、ひねくれちゃってこういうものを受け取らない子もいるよね。自分もそうだったから。

タツロウ
でも多分、その反抗期って短い。働き出したらだいぶ変わるだろうし。

 

10代、20代の違和感

「BEAGLE USED & VINTAGE」に佇む亀井さんの写真

—先程、若い世代の話が出ましたが、ご自身を振り返るとどんな10〜20代を過ごしましたか?


就活を一切しなかったですね。何でする必要があるのかが解らなくて。周りは大学3年の終わりくらいから就活をはじめて、合同説明会に行ったりしていたけど、私は行かなかった。でも就職ってするものなのかなぁと思って、4年の最後にハローワークに行ったんですけどね。流れに乗ってやらなくちゃいけないことに「違和感」ばっかり感じてましたね。「自分はどうなりたいんだろう?」って。

タツロウ
一つ一つ納得したい性格だからだよね。


そうそう。就活してる奴がえらい、みたいな風が吹き始めるんですよね。就活マウントみたいな。インターン何社行ったかとか。そういうことに耳塞いで、好きなことばっかりやっていた気がしますね。

タツロウ
わかるなぁ。僕も周りが就活している時に、同じようにスーツをきて就活するっていうのがあまりしっくりこなくて。周りのペースではなくて、将来自分がしたいなって思っていることに向かってゆっくり進めばいいかなって思ってた。今就活している大学生にも、学校で薦められる進路先だけじゃなくて、もう少し選択肢を広げてもいいかなって思う。


選択をちゃんと出来る人になってほしいよね。

古着屋「Beagle」の店内に座るタツロウさん

タツロウ
僕は商売をやっていて、売り買いを日常的にやっている。就活も、自分を売るってこと。相手がこういう人が欲しいとかそういうことよりも、自分のここは売りたくないっていう枠を自分で決めて大事にしてほしい。自分を愛しましょう。

— 自分はこんなことができますよっていう自己PRじゃなくて、これは譲れないんだってことを決めておくってことですね。

タツロウ
そう。いつまでも可愛がってもらえないし、自分を取り繕って売っても大変なだけ。アイドルじゃないんだから(笑)


だから疲れちゃうんだよね。会社に入ってから「思ってたのと違う」ってなっちゃう。

タツロウ
自分は、普段の生活の中でも、ここは渡さない、そこには行かないとか、こういう人付き合いはしないとか、そういう目線で考えているかな。

アンナ
うちらの店もそうだよね。もっと流行ってるアイテムとか、売れるかどうかでセレクトするやり方もあるのかもしれないけど、それはちょっと違うと思う。自分たちの店だから、お気に入りで自信をもっておすすめできるものしか置きたくないよね。

「Beagle」に並ぶ靴

「BEAGLE USED & VINTAGE」の店内の様子


ちなみに、就活は「違和感」だらけでしたけど、就職はして良かったなって今になって思います。社会人は新しい経験ばかりでしたね。会社の人に恵まれて救われた感じがあります。特に、所長に可愛がってもらったなぁ。飲み会に連れて行ってもらって。飲み会しか頑張ってなかったけど(笑)
あの時に学んだファイル名の付け方とかメールの出し方とか今も意外と役立っているから、無駄なものはひとつも無いなって。

 

大人は、自分で選べる

古着屋「Beagle」の店内に座る亀井さん

—30歳を過ぎて、楽になったことはありますか?


自由になりましたよね。25歳まではきつかった。自分は人と比べたくないのに比べたがる人が多かったというか。30歳を過ぎると周りが勝手に落ち着き始めるので、ありのままでいていいんだなって思うようになった。
私は昔から自分を自由人だと思っているんです。就活はしなかったし、団体行動も苦手だった。そういうことに対して周りは白い目で見るんだけど、目立とうとしているわけではなくて、自分の中で納得できないことをやれなかっただけ。

20代前半から30代の間のたった数年間で何を作ってきたかが大きな差になって出てくる。学生の時はそんなに差がないですよね。でも大人になると生き方が変わる。会社員になる人、自営業になる人、フリーターになる人……自分は自分って確立されてきた感じがあるかな。それに対して自信を持てるようになった。仲間も選べるし、感謝している人たちもいるし、人に恵まれているなって。

タツロウ
学生の頃は選べないもんね。


うん。今は自分で選択している自覚がある。間違ったりもして、右往左往しながら選んだ道で覚悟してやっていく。ってカッコよく言うとそうなんだけど、他にできることがないって諦めがついたんだよね。

タツロウ
それ、ZINEのインタビューでも言っている人いた。器用に出来る人もいるけど、出来ない人も同じくらいいるんだから、早くそのことを認めた方がいいって。


もっと頑張れるって思うと疲れちゃうからね。若い頃は「他の人と違う道でも大丈夫だよ」って大人に言って欲しかった気がする。「だめ」じゃなくて。
自分がそういうところで辛かったから、今若い子で何かやろうとしている人のこと、可愛いなって思うな。私自身、若い子とテンションが合うというか、若い子に懐かれるんですよね。「こういうのやりたいんですよね」と言われると、「いいよ、じゃあ一緒にやろうよ」って。応援してあげたいなって思っています。

タツロウ
いい話だね。

「BEAGLE USED & VINTAGE」内で亀井さんを中心にアンナさん、タツロウさん

テーブルに置いたZINE『Native Grass』

Photo by はま田あつ美
協力:BEAGLE USED & VINTAGE

※この記事の取材・撮影は感染防止対策を徹底し行いました。

亀井桃

宮城県出身。絵を描いています。 ゲーム、漫画、好きです。 フリーのイラストレーターとして、イラスト/ロゴデザイン等幅広くお仕事しています。 https://momo-kamei-1.jimdosite.com/

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BGM of "BGM"

antennasiasan (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。現在(2018年)まで、国内外のレーベルから、8枚のオリジナル・アルバム、3枚のリミックス・アルバムを発表。