1分コラム

Across the Universe(アクロス ザ ユニバース)のウィンドウの様子

宮城看板放浪記
第十八回 「Across the Universe」

 古き良き宮城の街並みをかたちづくっていた証。それは看板! 古くなるほど愛しさつのる。ライターりりっくれおなるどが、看板の声に耳を傾け一句したためる。今日も看板を求めさまよう、みちのく一人旅。今回訪れたのは、青葉区五橋二丁目にあるヴィンテージ専門のセレクトショップ「Across the Universe(アクロス ザ ユニバース)」。

Jul 3, 2020   

五橋にあるヴィンテージ雑貨や洋服を取り扱うセレクトショップAcross the Universe(アクロス ザ ユニバース)の店舗外観

 仙台市営地下鉄南北線「五橋駅」で降り、南1出入口を出て左に曲がり進む。国道286号線と五橋通の大きな交差点を通り過ぎ、ファミリーマートが見えて50m程先に行くと、江戸時代に「きたんまち」と呼ばれていたという北目町だ。

 十字路に突き当たると、新しいマンションや古いビルが建ち並んでいる。その中に、赤れんが色の建物がある。ヴィンテージ雑貨や洋服を取り扱うセレクトショップ「Across the Universe(アクロス ザ ユニバース)」だ。見上げると、優しい色合いのタイル貼りと鉄の枠組みが印象的なりんごマークの看板がある。

Across the Universe(アクロス ザ ユニバース)の鉄の枠組みが印象的なりんごマークの看板

 仙台の町のど真ん中にいるのに、お店が目の前に現れた途端、そのたたずまいからアメリカ映画にトリップしたような気持ちになった。お店の周りには年季の入ったビルが多い。コンクリートのビルが建ち並ぶ殺伐とした光景は、現代の荒野を彷彿とさせ、まるで砂漠の中にポツンと自分が立ち尽くしている気分になる。周囲には少しばかりの木々にサボテン。すると荒野に現れる、片田舎の雑貨店。朽ちた雰囲気を醸し出す木材の床にドア、良い意味で古びた外観。おかっぱ頭の非情な悪者がガソリンスタンドに買い物に訪れ、店主のおやじと生死を賭けてコインの裏と表で賭けをする、アメリカ映画『ノーカントリー 』の世界を思い浮かべてしまう。劇中では、電池にマッチにタバコ、スコッチ、キャンディー、コーヒー豆、ミントのお菓子、洗剤に、甘ったるいチョコレートバー。とにかくなんでも売っている、町のなんでも屋さんというのが出てくる。そんなイメージに加えて、ガラスに直書きしてある店名や、「COFFEE, GOOD CLOTHING」なんて文字がオールドな空気感をもたらしているのかもしれない。「フォントが最高!」思わずそんな独り言を呟いた。文字をゴールドや黒枠で仕上げるのは、アメリカのオーソドックスな色合いらしい。お店の外観や文字が目に入っただけで、なぜだか懐かしさのような感情が湧き上がる。私はお店に入って、オーナーご夫婦に話しかけた。落ち着いた雰囲気のお二人は、なんでも相談できそうなお兄さんとお姉さんといったようだ。

 「愛しさが募るのは、何も創業が古いという理由だけじゃないのかもしれませんね。アメリカ映画によくある古びたおやじがやっているような雑貨屋が浮かびます。佇まいからかっこいいなと思いました。」とお店の印象を伝え、看板のお話を聞かせて欲しいとお願いすると、快く答えてくださった。

 「かっこよくなくていいんですよ。」と奥さん。続けてご主人が、「うちは洋服屋とか古着屋なんて敷居の高いイメージはいらないんです。本当にさっきあなたがお話したような、アメリカの片田舎によくあるおやじが一人でやってる雑貨屋。そんなラフな感じでいいんです。少し日本の日常とはかけ離れた、本場アメリカの風景を作りたかったんですよね。」と話してくださった。

五橋にあるAcross the Universe(アクロス ザ ユニバース)のピンストライプというレタリング手法で描かれた窓の文字独特のフォントは“ピンストライプ”というレタリングの手法だ。ピンストライパー と呼ばれる専門の職人さんに手掛けてもらったそう。ガラスに直書きしてあるので、加工された文字とは違い、完璧過ぎないフォルムが自然体で力まないお店の雰囲気を醸し出しているようだ

 古き良きものが大好きだという1977年生まれのお二人は、映画や音楽、バイクやフォルクスワーゲンビートルのクラッシックカーが大好きなんだという。お店の創業は2016(平成28)年、今年で4年目だ。店名は、The Beatlesの曲名に由来している。『Across the Universe (アクロス・ザ・ユニバース)』は、The Beatlesの曲の中で一番好きな歌なのだそうだ。“Across the Universe”は、「世の中をくまなく巡る」という意味だと教えていただく。ついさっき私が見た、店舗正面左上に取り付けられているタイル造りの看板のりんごマークも、曲にちなんでいる。アイアンアーティストが手がけた鉄製のりんごマークは、アンティークの枠組みとタイル造りの組み合わせで、古い物と新しい物の融合を意味しているそうだ。長い時間を重ねて来た物たちを大切に受け継ぐことは、オーナーご夫婦が創業以来大事に心掛けていることでもある。遠い彼方の誰かが大切に使ってきたものが、時を越え海を越え、また新たな持ち主の元へと受け継がれるのだ。

 古着やアンティーク、ヴィンテージの雑貨が好きなお二人が始めたこの店には、直接アメリカに足を運び買い付けた商品が並ぶ。雑貨は50s~70s、洋服は60s~70sあたりがメインだが、年代にとらわれず幅広くラインナップされている。国内のセレクトブランドや、職人さんが作り上げたレザーアイテムやシルバーアクセサリーなどが並んでいる。昔の食器や雑貨、小物、洋服が、時間を越えて海を渡り、日本の東北の街の、宮城県豆腐商工組合の本部があるという不思議な建物「豆腐会館」隣りのビル一階に並んでいるなんて、かつての持ち主は考えてもいないだろう。

 ほとんどが一点物だというが、「一点物は、貴重とか稀少なんて風に捉えられがちだけど、買い付けの時の現地の方とのやり取りや、たどる行程、旅の全てがこの商品一つ一つに詰まってるんです。物語があるっていう感じですね。本当の意味でも一点物かもね。」お二人は話しながら微笑んだ。

 昔、私も古着屋でヴィンテージのデニムを買った時、履いてしばらくしてから右ポケットに1セントコインが入っていた事に気がついた話をした。するとご主人が、「それはラッキー! それも古着にまつわる物語でしょ? だから古い物って面白いよね。」と仰った。そして、拾った1セントコインをお守りにするという「ラッキーペニー(いわゆるアメリカ流幸運のお守り)」について教えてくださった。「Across the Universe」で取り扱っているコインは、自分用だったり、家族や大切な人へのプレゼントとして購入する人が多いという。年代が様々で面白かった。

「Across the Universe」の頭文字を取った壁の「A・T・U」。アルファベットの看板はヴィンテージの文字盤を一文字ずつ組み合わせたもの。店内を見守る鹿の剥製と目が合ったら是非話しかけてみてほしい

 オーナーのご夫婦に、商品をセレクトするときの心構えを伺った。
「クラシックな物からキャラクター物まで、流行り廃りとは無関係な商品構成で、ずっと大切にしたいものと出会える場所になるようにセレクトしています。」と話してくださった。お店は商品を単に並べて勧めるだけの場所ではないのだ。人とものとを繋ぐ場所だと感じた。運命の逸品に会う場所だ。

 お店がある場所の周りには、教育施設やマンションが建ち並び、学生や散歩を楽しむ方が入ってくるそうだ。初めてのお客さんは入るのに勇気が要ったと話すことが多いらしいが、そんな時は肩の力が抜ける話をするという。

 そう話していると、プードル犬を連れたご婦人が入ってきた。「お店の表に出ているTシャツ素敵ね。散歩がてら初めて入ってみたの。」そして、この雑貨もかわいいわ、あれはいつ頃のものかしらとオーナー夫婦に質問し、商品にまつわるお話が展開される。笑顔のご婦人が立ち話をしている床は、むき出しのコンクリートが落ち着く色合いで、プードル犬が気持ち良さそうに居眠りし出す。

 モールなどの大型商業施設が台頭している今、路面店に入るのはなかなかハードルが高いお客さんもいるそうだ。「若い頃、古着屋に行って音楽や映画、雑貨とか洋服とか、お店の人との会話から色んなこと学んだのが楽しかったよね」とお二人。ふらっと立ち寄れてまた来たくなるお店にしたいと語っていた。私もプードル犬と一緒にくつろいだ。

Across the UniverseはペットOK。常連のダックス犬のひなたくんと赤ちゃんの様子ペットOKの店内には犬のお客さんが来ることもしばしば。ダックス犬のひなたくんはオープン以来の常連さん! 子連れの方や犬を連れた方を通して会話が広がり、店内は笑いに包まれる

 何気ない光景を取り囲むこだわりの一点物たち。冬はオイルストーブの上でやかんがふつふつと忙しそうに音を立て湯気を上げる。夏は外から涼しい風が入ってくる。敷居なんて言葉は存在せず、ただそこにあるだけのお店。おもい想いに並べられた商品は、見ているだけで楽しい。

小上がりのスペースがありご主人がコーヒーを淹れるアメリカ映画の古い自動車整備工場の作業場を思い起こしてしまう小上がりのスペース。コーヒーを注文すると、奥の部屋でご主人が心を込めてコーヒーを淹れてくれる。そんな姿を眺めながら店内を見るのは気持ちが良い

The Beatlesのポスターが飾られている店内の様子小上がりのある店の奥から覗く店内。向かって右上には、店名の由来にもなっているThe Beatlesのポスター。所々にあるThe Beatles関連のディスプレイを探しながらオーナーご夫婦とお話すると楽しい

試着室の扉はステンドグラスが美しい擦りガラス試着室を出てすぐのところにあるドア。ステンドグラスの色合いが美しい擦りガラスは、ヨーロッパのアンティーク。何気ない場所一つひとつにも古いものを大切にするオーナーご夫婦の想いが詰まっている

店内から見る外の様子この窓から通り過ぎる人や車を眺めていると時間があっという間。通り過ぎたと思うと、ふらりと入ってくる散歩がてらのお客さんも多く、そんな光景を目にしながらのんびり買い物ができる。ピンストライプの文字の裏側もじっくり見て楽しめる


店名
Across the Universe(アクロス ザ ユニバース)

業種
セレクトショップ

創業年
2016(平成28)年
40年にわたり、週刊ジャンプに連載されていた『こち亀』が連載終了。
映画『君の名は』が大ヒット。

看板制作年
創業に同じ(約4年前)

制作者
それぞれ専門の職人さんたちが手がけた

素材
店舗正面向かって左上
(タイルと鉄)
店舗正面ウィンドウの直書き
(ピンストライパーによる筆書き)
店内レジ上のアルファベット看板
(プラスチック)

自慢できること
商品は現地に出向き、自分達で一つひとつ選んでいること

看板メニュー
アメリカで直接買い付けている一点物の古着と雑貨


ここで一句

るんるんるんウキウキ歩く散歩道
砂漠に突然現れた宇宙の彼方の雑貨店
いいものたくさん置いてます
人もわんこも寄っといで

五橋通りを散歩しているとビルが砂漠に変わって見えた。
目の前に現れた雑貨店はおやじが営む何でも屋。
店主自慢の一品は時空を超えた宇宙の彼方。
人もわんこも集う店。

明日も看板を求め、みちのく一人旅はつづく。

Across the Universe

住所    仙台市青葉区五橋2-4-15 電話番号 022-208-2669 営業時間 12:00〜19:00(当面の間は12:00〜18:00) 定休日  月曜 https://acrosstheuniverse1977.com/

※この記事の取材・撮影は感染防止対策を徹底し行いました。

Posted in 1分コラムTagged ,
りりっくれおなるど
栗原市産まれの仙台市民。写真やファッション、音楽、映画が大好き。靴コレクションは100足突破。栄養士として、学んだ知識と鍛えられた舌で仙台の美味しい物を探している。営業で培った人脈で、食べ物や音楽、アート、洋服などで、仙台を盛り上げる事が目標。いまは立ち飲み屋で吉田類と飲む事が夢です。

pagetop

BGM of "BGM"

antennasiasan (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。現在(2018年)まで、国内外のレーベルから、8枚のオリジナル・アルバム、3枚のリミックス・アルバムを発表。