FEATURE

株式会社ピコラ
世界を熱狂させろ! 仙台をゲーム発信地に

仙台のゲーム制作会社、株式会社ピコラ。大手メーカーからの受託開発を主な業務としながら、自社タイトルの開発も行います。100万ダウンロードを突破する「ねこのけ」などヒットゲームも生み出し、創業5年にして急成長の注目株。創業者である金子篤さんは自社の成長だけでなく、業界内のネットワーク作りや若手クリエーターの育成など、さまざまな挑戦を続けています。「仙台を、世界が注目するゲーム発信地に」。その夢への思いと展望を聞きました。 

Sep 29, 2019

人の心を動かす優れた仕事をしている方にお話を聞く特集 “お仕事の極み”

急成長で躍進中!

世界を熱狂させろ!
仙台をゲーム発信地に

ゲーム業界を志す若者に
働く場を

 金子さんは、ゲーム業界一筋に歩んだクリエーター。東京のゲーム会社が仙台に置いた開発部門に、長年勤務していました。独立したのは「仙台にゲームの仕事を生み出したい」という強い思いからだったと話します。


「世界に誇るゲームを作れば、仙台に人が集まり地方が元気になる」と話す金子さん

 任天堂やバンダイナムコなどに代表されるゲームメーカーは首都圏に集中しており、地方にいる限り仕事は東京から持ってくるしかないのが実情。仙台にもデザインやプログラムを専門的に作る会社はあるものの、企画から制作まで総合的に手掛ける会社はありませんでした。本気でゲーム業界を志す若者は、地元の専門学校などで学んでも、就職時は上京するのが常道だったのです。

 この状況をなんとか変えられないかと考えていた矢先、東日本大震災が発生。直後、ある就活中の学生との出会いをきっかけに、金子さんは覚悟を決めます。その学生は「被災した地元を離れるのはつらく、両親のことも心配。でも夢であるゲームの仕事が仙台にはない」と悩んでいました。「若者が好きな仕事をできるフィールドを、自分が作らねば」と一念発起、2015年に信頼する仲間4人で旗揚げしました。現在はプランナー、プログラマー、デザイナーなど、18人のクリエーターを抱えます。


スタッフの中には「東京ではなく、地元のある東北で働きたい」と入社した人も少なくない


ゲーム制作はパソコンを使用するが、プログラムのイメージ出しは紙とペンで行う


育成ゲーム、アクションゲーム、パズルゲームなど自社タイトルの種類もさまざま

自社で仕事を生み出す
「メーカー」になりたい

 ピコラは現在、受託開発が業務の大部分を占めます。大手メーカーが販売するゲームを、実際に作る仕事です。「でも、このままでいるつもりはありません」と金子さん。「自社で販売するゲームの制作数を増やし、地元に仕事を出して業界を盛り上げるのが目標です」。

 受託に依存していては、発注元の業績に左右され、競争激化の時代に生き残れない。自社がメーカーとして成長しなければならない、と金子さんは考えます。

 ただし、メーカーにはリスクが付き物。受託と異なり、自社タイトルを販売する場合は、売れなければ損失に直結するからです。そんな中でネコのお世話を楽しむ育成アプリ「ねこのけ」の成功は大きな自信になりました。ヒットの要因は何だったのでしょうか。

 「一つは人気モチーフのネコを採用したこと」と金子さん。でも人気ゆえに商品が乱立するため、簡単には勝てないのでは。「そうですね、もう一つは圧倒的にかわいいネコの動きと、美しく滑らかなアニメーションにこだわったことです」。コストをかけずに差別化するにはこれしかない、と考えたとか。「スタッフの高い技術力のたまものです」と胸を張ります。タップして毛玉を集めるというシンプルな操作性も広く受け入れられました。


ヒット作の「ねこのけ」。かわいいネコの動きと、シンプルな操作性がヒットの要因

産官学が連携し
魅力あふれる街に

 金子さんは若手クリエーターの育成にも熱心。仙台のゲーム・ICT分野の産業振興を目指す産官学連携事業「グローバルラボ仙台(GLS)」で、ゲーム部門に携わります。プロが学生にリアルなゲーム作りを指南する「スマホゲーム開発塾」の講師を担当し、半年間のプログラムで学生をサポート。専門学校などでは教えないビジネス的視点を伝授する講義が好評です。

 また、学生のアプリコンテスト「DA-TE APPs!」のゲーム部門代表の審査も務めます。東北6県と、仙台市が産業振興協定を結ぶフィンランド・オウルの学生だけがエントリーできるユニークなシステム。トップメーカーの役員らが直接審査する貴重な機会とあって、毎年多くの参加があるそう。


ピコラが企業メンターと審査を務める「DA-TE APPs!」の様子(写真提供:株式会社ピコラ)

 「これらの取り組みが、仙台でゲームを学ぶ付加価値になる。ゲームを究めたい学生にとって魅力的な地域にしようと、行政や教育機関、企業が一体となって取り組んでいます」と金子さん。刺激的な学びがあり、出たいコンテストが開かれ、面白いゲームを作る企業がある、そんな街には人材が集まる。地元の教育機関と産業界の連携は、自社の将来にとっても大きなカギを握るのです。

来た仕事を逃さない
ネットワーク構築

 GLSへの協力は、明るい副産物をもたらしました。参加した企業を中心に交流が生まれ、ゲーム関連企業10社のネットワーク「仙台ゲームコート」が発足したのです。


「仙台ゲームコート」のロゴ。ネットワークを生かしたこれからの活躍に目が離せない(画像提供:株式会社ピコラ)

 「仙台のゲーム関連会社は、これまで横のつながりがありませんでした。でも、将来仙台をゲームの発信地にするために連携は不可欠」と金子さん。ネットワークができたことで、自社だけでは受けられない案件を共有できるなどのメリットが生まれました。毎月定例会を開き、業界の動向や各社の状況を情報交換し、緊密な連携を取っているそう。

 「首都圏から来た仕事を逃さず、地元に落としたい。ウチより他社が得意な仕事なら紹介もします」。思わず「ライバル同士なのに?」と聞き返すと、「まだどの社も、一人勝ちする段階ではないんですよ」と穏やかに笑う金子さん。まずは切磋琢磨し、協力して仙台のゲームシーンを盛り上げること。「将来的にこの中から大きく成長する会社が出てくるといいし、仙台ゲームコートでヒット作を生み出すのもいい」と、夢は広がります。


人気漫画キャラクターを使った育成ゲームを制作。「東京ゲームショウ2019」に、ピコラもこのTシャツで参加
©スティーヴン★スピルハンバーグ ©ぴあ株式会社 ©株式会社アイモバイル

「正解」は自分が作る
失敗を糧にしよう

 ゲーム業界の未来はどうなるのでしょう。金子さんは「大量にゲームが放出される時代は終わる」とみています。YouTube、TikTok、Instagramなど、ゲーム以外の手軽な楽しみが急速に普及したことが背景にあります。「ゲームのライバルはもはやゲームではない。未来に残るのは、数少ないとびきり面白いゲームだけ」。

 だからピコラは、本当に面白い商品を生み出す会社にならなければ。「世界中が熱狂するゲームを作りたいですね」。

 40代後半で起業し、挑戦を続ける金子さんから、若者へメッセージをいただきました。「若いうちの失敗は、失敗と呼ばない。すべてが経験で、自分の糧になります。恐れずチャレンジしてほしい」。とはいえ、失敗は少し怖いです…と恐る恐る伝えてみると、こう答えてくれました。「学校生活には『正解』があるけれど、社会に出てからの『正解』は自分で作るしかない。正解だと信じてやればいいんです。やってみれば、知らなかった自分の力を発見できるものですよ」。

ピコラのスタッフさんに話を聞きました

プログラマー
秋元隆宏さん

 学生時代にGLSに参加して、実践的なゲーム作りの面白さを知ったことと、金子社長のおおらかな人柄に魅力を感じて、入社したいと思いました。ピコラは本気で面白いゲームを作りたい人の集団。みんな信念があるのでぶつかることもありますが、だからこそいいものができるのだと思います。
 プログラマーは、プランナーの頭の中にあるイメージをディスプレイ上に再現するのが仕事。いかにイメージ通り動かせるかは、技術力と知識、アイデア次第です。よりよくするために、プログラマーの視点からプラスαの提案をすることもありますね。
 憧れる先輩の仕事はいつも完ぺき。早く追いつけるように頑張ります。いつかプランナーさんを「やるねぇ!」と言わせてみたいです。

デジタルアーティスト
豊川綾香さん

 CGの専門学校を卒業し、昔から好きだったゲームの仕事を選びました。いくつか会社訪問をして、一番温かな雰囲気を感じたピコラに決めました。
 学生時代は自分で納得する作品を作ればよかったのですが、仕事で制作するのは商品。クライアントのニーズに応えることが重要で、自己満足ではダメだということを実感しています。今まで意識しなかったような細かいことも、求められます。大変ですが、つらいと思ったことはないですね。もっと技術を磨いていいものを作れるようになりたい。自分が生み出したものが世に出ていくととてもうれしいです。
 就職活動中の人は、不安や心配事は思い切って相手に話してみるといいですよ。私はそうやって、本当に行きたい会社に入ることができました。


雰囲気が温かく、コミュニケーションが取りやすいという職場。「優秀なスタッフが揃っています」と金子さん

※こちらの記事は、2019年9月29日河北新報朝刊に掲載されました。

 

●株式会社ピコラ

 2015年設立、仙台に本社を置くゲーム制作会社。ゲームの受託開発、キャラクターデザインの受託をメインに、100万ダウンロードを突破した「ねこのけ」など自社タイトルの開発も行っている。若手クリエーターの育成にも力を入れており、東北から世界に誇るゲームを制作することを目指している。https://www.picola.co.jp

撮影 Harty(澤田 千春)

Posted in FEATURE, 特集 お仕事の極みTagged
鶴岡彩
京都生まれ京都育ち。信州・松本で北アルプスを眺めながら数年子育てに専念、2005年から仙台でフリーライター。食、ものづくり、子ども、スポーツ、旅の周辺にいる人へのインタビューが好き。

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BGM of "BGM"

antennasiasan (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。現在(2018年)まで、国内外のレーベルから、8枚のオリジナル・アルバム、3枚のリミックス・アルバムを発表。