1分コラム

宮城看板放浪記 第十三回 「だるま」

古き良き宮城の街並みをかたちづくっていた証。それは看板! 古くなるほど愛しさつのる。ライターりりっくれおなるどが、看板の声に耳を傾け一句したためる。今日も看板を求めさまよう、みちのく一人旅。今回訪れたのは、青葉区一番町の文化横丁にある「すみやきホルモンだるま」。

Jul 23, 2019   

仙台の老舗百貨店・藤崎を背にしてサンモール一番町を歩く。タピオカの行列を通り過ぎ、歩き進むと、左手には昭和の香り漂い続け、現在も仙台市民に愛され続ける「文化横丁」が見えてくる。

どのお店も魅力的! 横丁ファンを惹きつけてやまない名店が所狭しと建ち並んでいる。ワクワクしながら歩いていると、だるまの絵なんて一つも書いていないのに「だるま」という平仮名の手書き看板が気になる店を見つけた。初めて見たのに、立て看板も愛おしく感じられる。手作り感に溢れていて、少し傾いているその立ち姿が気になる。

「のれんが出ていませんが入っても大丈夫ですか?」
と忙しく一人でパタパタと動き回っている奥さんに伺うと
「もう営業してるの! のれんは好きな時間に適当に出しているから良かったら入っていいよ。」
とフランクに答えてくださり、私は思い切って中に入ることにした。

ホルモン屋の名前は『だるま』。シンプルだが、そのすごく主張している名前の由来を伺った。
「だるま、という文字はね、平仮名の字画がすごく縁起が良いんだって! 訪れたお客さんが、どんどん新しいお客さんを連れてくるって知り合いが考えてくれてこの名前したの。」

奥さんは、時々ケラケラ笑いながらそう教えてくれた。10人座ったら肩をひしめき合って並ぶことになるであろう小さなカウンターには、私も含めて初めて訪れたお客さんばかり。だけど、不思議と初めて会った気がせず、皆で楽しくホルモンを食べながら飲んでいる。

「お母さんのれん出しとく?」
そう言って声をかけたのも初めて訪れたという若いお客さん。

「そののれん、コツがいるから大丈夫。私が出したいタイミングで出すから! ありがとね!」
その後、店内に笑い声が響く。初めてとは思えない一体感だった。

奥さんのタイミングで出すという暖簾と看板が揃うととっても渋い雰囲気

奥さんは、注文があると手早く七輪を用意する。注文した料理もテキパキと出す。

看板メニューを聞くと有無を言わさず
「全部美味しい、ホルモンが苦手な人も食べられちゃうから。」
と笑顔で答えた。

今年で創業36年目。元々、会社員だったご主人が、心機一転ホルモン屋さんを開いたそう。奥さんはその時専業主婦で子育て真っ最中。子育てが落ち着き、ご主人と2人でお店に立つようになった。

接客の経験も、調理の経験もない。だんだんとお店に慣れていき2人で切り盛りするようになり、娘さんが成長すると3人でお店に立つようになったそうだ。

「娘は嫁に行って。旦那は働かないでお客さんとおしゃべりばっかりしてるからクビにしたのよ!」
と笑いながら話している。

常連のお客さんが入ってきて
「お母さんその話好きだよね。」
と言うのでなんだかご主人に対する優しい気持ちが伝わってきた。

「最近はね、なんだか流行りの街歩きガイド本の表紙になったりしてさ、旦那より有名になって嬉しい。」
と誇らしげに語る奥さんがとても可愛らしかった。

そんな話を、今日初めて知り会ったお客さんたちがみんなで聞き、笑ったり奥さんにまた質問したりして笑いが絶えなかった。『だるま』というその名前が、次々にいいお客さんを連れてくるという話は本当なのかもしれないと思った。

店内はスペースが限られているので、私が写真を撮ろうとすると、お客さんたちが「こっちから撮ろうか。」などと声をかけてくれて、居心地がいい空間だった。

この日、実は私も元気にされているかな、と気になっていた方にばったり会えた。
「あら、元気だったー?」
と聞かれ挨拶を交わし笑い合う。

本当に「人と人を繋ぐ」そんな言葉を連想してしまった。お客さん同士のやり取りを目の前にして奥さんは忙しそうにパタパタと動きながら、時々嬉しそうに会話に混ざる。

かわいらしい笑顔を見せながら、聖徳太子みたいに突然話に入るのでまた笑いが起こる。だるまは料理が美味しいだけでなく、みんながひとつになれるそんなお店だった。


聖徳太子のように話をいつの間にか聞いている奥さん


初めてとは思えないお客さんの一体感

年を重ねるうちに、身体に負担がないように営業時間を短くしたそうだ。
「身体を壊したら長く続けられないしね、ホルモンを楽しみに来てくれる人がいるからできるなら毎日お店を開けておきたいじゃない。」
そんな事を話していたら、またお客さんが入ってきた。そして他のお客さんたちと話始めた。


年月を感じる味わいのある立て看板。実は写真を撮っている間、看板が見えやすいようにお客さんが看板を後ろで支えていてくれた


窓ガラスに直書きの看板とテント素材の看板は、高校の美術の先生が文字を書いてくださったそう

店舗正面のドア横に置かれている看板。「だるま」という優しげな文字を明るく照らす


奥さんのタイミングで出す暖簾。取引先の酒造さんが創業当時作ってくれたもの


店名
だるま

業種
ホルモン屋

創業年
1983(昭和58)年9月創業
ラッツ&スターの「め組のひと」やYMOの「君に胸キュン」がヒット。任天堂が『ファミリーコンピュータ』を発売した年。

看板制作年
1983(昭和58)年9月
表のネオン看板以外は創業当時のまま。

制作者
高校の美術の先生や友人
一部は看板屋さん

素材
アルミ板、テント素材
プラスチック(店舗正面ドア左側)

自慢できること
新しいお客さんが常連になってくれること。創業以来36年通ってくれるお客さんがいること。

看板メニュー
ホルモン・ハツ・レバー



ホルモン

「ホルモンは新鮮さが命。」と長年ホルモンを扱う奥さんは言う。信頼できる精肉店から取り寄せるホルモンはずっと食べても飽きない味。


ハツ

ハツも、クセがなくて美味しい! それも奥さんの丁寧な下処理のあるおかげだ。


レバー

ホルモン焼きの定番、レバー。苦手な人も多いらしいが、だるまのレバーは臭みを丁寧にとるらしく全く臭くない! レバーが嫌いな食べ物No.1の私でも美味しく食べられた。


ホヤを七輪で焼く

宮城県民のソウルフード、ホヤを七輪で焼く。ほど程よい潮の味わいを噛みし締めるとクセになる味。

ホヤやき


魔法の粉

どの料理も奥さんが美味しく下処理して下味は付いているが、これをかければ大概のものはもっと美味くなると奥さんオススメのオリジナル調味料「魔法の粉」。塩味のスパイスでお料理をピリリと引き締めてくれる。


店内に並ぶだるま

店内には商売繁盛の松川だるまが並ぶ。だるまが連れてきたであろう、たくさんのお客さんたちの笑顔の写真も並ぶ。

ここで一句

横丁をぶらり歩けばだるまの文字
店ではだるまが笑ってる
だるまが人呼び七輪囲む
笑いが絶えないホルモン屋

横丁を歩くと現れるだるまという文字の看板。店に入ると松川だるまがずらりと並び笑っている。だるまがお客さんの縁を繋ぎ、笑いが絶えないホルモン屋だ。

明日も看板を求め、みちのく一人旅はつづく。

だるま


住所    仙台市青葉区一番町2-4-11 文化横丁 TEL 022-262-5998 営業時間 17:30〜22:00 (時間変更の場合あり。要確認) 定休日   日曜祝祭日・お盆休み・年末年始 Twitter @darumanohorumon Instagram @sumiyakihorumondaruma







pagetop

BGM of "BGM"

antennasiasan (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。現在(2018年)まで、国内外のレーベルから、8枚のオリジナル・アルバム、3枚のリミックス・アルバムを発表。