1分コラム

宮城看板放浪記 第十二回 「ごん太」

古き良き宮城の街並みをかたちづくっていた証。それは看板! 古くなるほど愛しさつのる。ライターりりっくれおなるどが、看板の声に耳を傾け一句したためる。今日も看板を求めさまよう、みちのく一人旅。
今回訪れたのは、若林区河原町にある居酒屋「ごん太」。

Jun 27, 2019     

 

地下鉄河原町駅側から見える看板

地下鉄河原町駅の階段を駆け上り外に出ると、不思議な外観の居酒屋がある。思わず目が釘付けになってしまう看板がたくさん掲げてある。某黒服を着た恰幅の良い「ドーンッ」っというあの有名なアニメのおじさんみたいな看板、ひょうきんな表情の馬の看板、「うまい、うまい」と主張してくる看板。 ここは本当に入っても大丈夫かな? でも、すごく気になる。私は思い切って中に入ることにした。

居酒屋の名前は『ごん太』。すごく賑やかな看板について聞くとごん太という名前は、昔親方が飼っていたアイヌ犬(北海道犬)の名前らしい。
「もう、家族みたいにすごい可愛がってたからね。忘れないようにお店の名前にしました。」
私は窓を覗き込む馬の名前がごん太だと思っていたのだが、愛犬の思い出が込められた名前だった。なんだかとっても優しい気持ちになりごん太という名前に愛着が湧いてきた。

カウンターには、にこにこと笑顔で会話を弾ませているお客さんたちが並んでいた。
「ここはなんでも美味いからね。」
「取材するの? じゃあ、俺が身支度しなくちゃね。」
なんて、お客さんたちがそわそわし始める。

元々、駄菓子屋さんをやっていたという親方夫婦。駄菓子屋さんは今現在も、別な場所で営業している。常連の子どもたちの笑顔が可愛くて楽しく営業しているそうだ。

ごん太のスタートは青葉区五橋だった。その2年後に河原町に店を構え、一時期は五橋と河原町、2カ所にあったそうだ。ところが五橋のごん太は、入居していたビルの事情で出ることになり、現在の河原町のみとなった。

3年前から、子育てがひと段落した奥さんもお店に立っている。私が奥さんに取材していると常連さんらしき方から電話が入った。
「今日はね、○○さんは来ていないの。うん、また来てね。」
なんて会話がされてたり、お料理やお酒を運びながらお客さんとも会話をしたりと奥さんは忙しい。そんな中、私のお話にも丁寧に対応してくださった。

お話を伺っている途中と、東京で働いている娘さんがお店に入ってきた。常連のお客さんとも顔見知りらしい。
「あれ? お帰り! どうしたのー!?」
「友達の結婚式があってさ。帰ってきたよ。」
そんな家族のような会話が繰り広げられている。

お子さんは娘さん2人と息子さんがいて、かつては、3人とも学校が終わると、時々ごん太を手伝ってくれた。だから常連さんたちもよく知っている仲とのこと。「たくさんユニークな看板が付いていますね! 良いお店ですね、好きですか?」
と娘さんに伺ってみた。
「ごん太は、父の飼っていた大好きな犬の名前らしくて、インパクトのあるあの看板たちも好きなんです。だって他にないでしょ。私たちがお店に出ると、お客さんたちみんなに可愛がってもらえた。両親もこのお店を頑張って私たちを育ててくれたから感謝しているし、実家みたいなほっとする場所なんです。」
と教えてくれた。

そんな言葉を伺ったら、ごん太はみんなに愛されていて、みんなの実家みたいな存在なんだと思った。河原町という土地柄か、転勤族が多く、数年すると東京や大阪に戻ってしまうお客さんもいる。だけど、旅行がてら仙台に寄ってお店に顔を出したり、立ち寄るお客さんも多いと言う。親方夫婦がお客さんのところに遊びに行くこともあるそうだ。

「そういう交流があるのが楽しいよね。」
と話す気さくなご夫婦のお店には年齢層の広い様々なお客さんが集まる。

「お客さんが忘れずに帰ってきてくれる場所なのが嬉しいよね。」
親方がそう言って、奥さんと目を合わせにっこりと笑った。

創業から29年ほど経ち、『笑ゥせぇるすまん』に似ている、と口コミに書いてあった看板は今でも変わらない。大きな口、大きな目玉で道行く人を昼も夜も眺めている。このキャラクターは、『カールおじさん』を参考に、ごん太オリジナルで看板屋さんと考えたものだったそう。
「インパクトあるでしょう? 私も横断歩道から見ていておじさんと目が合うもの。」
奥さんはそう語る。

店の正面にある看板

 

 

「うまい、うまい」と主張する看板

店舗正面の看板(夜)
店舗側面、河原町駅側から見える看板(夜)

暗い夜道の中でも、なんだかごん太という字にほっとする看板。イカやひらめが並んでいる。


店名
ごん太

業種
居酒屋

創業年
1990(平成2)年頃創業。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』や『ダイ・ハード2』、『プリティ・ウーマン』など、映画好きにはたまらない名作が数々公開された年。

看板制作年
1990(平成2)年頃

制作者
看板屋さんとご主人

素材
プラスチックや木材
木材(店舗正面ドア左側)

自慢できること
長いつき合いの常連さんが多い。転勤などで転居しても遊びに来てくれる。

看板メニュー
ごん太のおまかせセット・みそホルモン・ポテトサラダ・うにタコ和え


ごん太のおまかせセット

5種類のお惣菜とお刺身のセット。この日はワラビやフキなどの山菜が中心だったが、お肉やお魚のおかずの日もあるそう。お刺身も日替わり。鯨のお刺身はくせがなくて本当に美味しかった。

みそホルモン

「塩ホルモンにね卵を混ぜて食べるのがこれまた合うのよ。」と奥さん。実際、脂っこくなく、目玉焼きが半熟だったりホルモンとまろやかに混ざり合い女性でも食べやすい味!

ポテトサラダ

ごん太のポテトサラダはおいもがごろっとしていて、ポテサラ好きの王道、魚肉ソーセージが入っている。最後にソースをかけてある。お客さんに合わせて、醤油にするときもあるそう。

うにタコ和え

東北と言えば魚介! うにタコ和えはそんな東北らしい珍味。

カウンター越しに弾む会話。
「あれ? 俺たちもデビューしちゃうの? かっこよく背中撮ってね。」
と初めての私にも優しい常連さんたち。


親方と常連さん

親方は、ハスキーボイスで渋くてかっこいい! 初めてお会いした時は怖いのかな?と思ったけどジョークもたくさん交えてくださり楽しい方。

貴重な街区表示板

何丁目を表す、見かけるあの看板は取り外しがあり廃棄するからと言われた時に譲り受けたそう。

ごん太オリジナルトートバッグ

ネイビー、ブラック、赤の3種類。看板と同じ、あのおじさんの顔入りトートバッグが買える! しっかりした作りで普段使いにもオススメ!

ここで一句

地下鉄の駅を登れば待てり
大きな口のひげおやじ
美味い料理に会話が弾む
ここはみんなの帰る場所

地下鉄の駅を駆け上がれば、大きな口の看板が待っていて、まるでトンネルを抜けたらそこはごん太だった、とでも言いたくなる。誘われるように入れば美味しい料理に会話も弾む。いつでもみんなの帰る場所。

明日も看板を求め、みちのく一人旅はつづく。














ごん太

住所   仙台市若林区河原町1-1-2 電話番号 022-266-4865

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BGM of "BGM"

antennasiasan (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。現在(2018年)まで、国内外のレーベルから、8枚のオリジナル・アルバム、3枚のリミックス・アルバムを発表。