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仙台の老舗百貨店・藤崎と
在仙イラストレーターが創る
アートな世界

まるでパリの百貨店!仙台の老舗百貨店・藤崎が在仙のイラストレーター 松下さちこさんとコラボしたクリスマスディスプレー。道行く人の視線と心を引き付けた美しい装飾はどのようにして形になったのか。ディスプレーとWEBを連動させ、企画からデザインまで担当した販売促進部販売促進担当 奥山るみさん、同・宣伝広報担当 佐々木祐子さんにお話を伺った。

Jan 31, 2018

人の心を動かす優れた仕事をしている方にお話を聞く特集 “お仕事の極み”

仙台の老舗百貨店・藤崎と在仙イラストレーターが創るアートな世界

 

 

コラボのきっかけは “一目惚れ”

 
奥山さん(以下:奥山) 
私はもともとカフェを巡るのが好きなのですが、一番町にあるカフェでたまたま松下さちこさんの絵を見かけたんです。それからずっとあの独特で個性的な世界観が心に残っていて…。それで、 “Art Christmas” をテーマにした2017年のクリスマス企画で松下さんのイラストを採用できないかと考えたんです。松下さんの描く個性的で幻想的な絵が、藤崎が取り組む新しいクリスマスのイメージに合うんじゃないかと思いながらも、実はこの時はまだ松下さんにコンタクトを取っていなかったんですよ(笑)。「ダメ」と言われていたらどうしていたんでしょうね。でも松下さんが快く引き受けてくださって、晴れてご一緒することができました。
 

入社2年目からディスプレーを担当している奥山さん。
 

松下さんが描いた原画の数々。左上にある猫のキャラクターは、藤崎のスタッフのなかで「かわいい」と好評だったという。
 

舞台を連想させるようなデザインのショーウインドー。中央に飾られた「ファザーK」のイラストなどが醸す独特の世界観に見入る人の姿が多く見られた。
 

新たな試みでかつてない藤崎のイメージを表現

 
奥山
キービジュアルは、ディスプレーのデザインや方向性を決める制作部門のスタッフたちと一緒に考えていきました。松下さんが描くイラストの持ち味も大切ですが、百貨店としては販売に結びつかせるためには商品を打ち出さないといけない。なので、松下さんには、百貨店らしい「衣・食・住」のイメージと、松下さんが考えるクリスマスのイメージを膨らませてもらうことをお願いしました。そして提案されたのが、真っ赤な唇と立派なヒゲが特徴の「ファザーK」やひだ襟を着けたトナカイ、それに花や宝石のイラストだったんです。私たちの“ArtChristmas”というテーマをうまく表現してくださったな、と思いましたね。この企画では大人の女性をイメージして、キーとなる色をピンクにしようと考えていたんですけど、どこかで松下さんには絵のテイストに合わないからと嫌がられるかな、と思っていたんです。でも松下さんからは「藤崎さんがやりたい形で進めてください」という言葉をいただいて…。“お互いに切磋琢磨しながらいいものを作っていきましょう”という姿勢がすごくうれしかったです。だからこそ社内でもいろんなチームが連携して、いまだかつてないパワーで表現することができたと思っています。

佐々木さん(以下:佐々木)
今回のターゲットは、仕事をしている40〜45歳の女性。日中お仕事をしている方は、19時に閉店する百貨店になかなか足を運べないじゃないですか。なので、お店が閉まっている夜の時間にも楽しんでいただけるように閉館後のディスプレーはライトアップをしてみました。その分、お買い物に来ていただく時には館内の世界観も楽しんでもらいたいという試みです。そんなことができたのも今回が初めてでしたね。


WEBを担当した佐々木さん。「松下さんのイラストは、見れば見るほどかわいく思えてきますね」
 

 

スタッフが一丸となり創り上げた世界観

 
佐々木
今回は“空想百貨店”として期間限定の特設サイトを作ったのですが、この企画に携わった別のスタッフから「掲載する商品を売りたいだけのサイトにするんじゃなくて、見た方に楽しんでもらえるサイトにしてほしい」と言われたんです。それを聞いた瞬間、「画面の中に雪を降らせたら楽しいかな」とか「イラストを動かしてみたら楽しいかも」というアイディアが浮かんできて、どんどん楽しくなっていきました。ただその分、手間がかかり、間に合わせるのが本当に大変でした…(笑)。

奥山
通常私はウインドーディスプレーの仕事を男性ディレクターと担当しているんです。今回、新しいチャレンジに少し臆病になってしまっていた私がいて、そのディレクターが「せっかく松下さんのイラストを採用したんだから、見る人にもそのインパクトが伝わらないと意味がないだろ」と言ってくれたんです。正直はっとしました。そこからサイトやディスプレーがどんどん形になるなかで、すべてが楽しい方向に向かっていったのかなと思いますね。ところで“空想百貨店”のサイトに掲載されていた、「むかしむかし、サンタクロースだったおとこは、日本のクリスマスに魅せられて、アートなものを生み出し、空想百貨店をつくりました」というストーリーは藤崎のスタッフが考えたものなんです。今までの藤崎にはなかった世界観を急に打ち出すと、お客さまは「どうして?」と疑問に思うはず。それなら、まずはストーリーを伝えることが必要だなと思ったんです。

佐々木
ちなみにこのストーリーを考えたのは男性スタッフなんですよ!松下さんが考える世界観のイメージから膨らませて完成しました。
 

 
奥山 
それと、サイトに流れていた音楽は松下さんから教えていただいたアーティストの曲なんです。「松下さんの絵に合うBGMって、何かありますかね?」と尋ねてみたところ、松下さんが以前CDジャケットを手がけたという、mama!milk(ママミルク)という音楽ユニットを紹介してもらいました。アコーディオンとコントラバスの音色が、松下さんの世界観とよく合っていますよね。

佐々木
mama!milkのCDを全部聴いて、最終的にサイトに使う曲を2曲まで絞ったんです。どちらか1曲に決めたかったんですけど、どうしても選べなくて…。それなら、と11月に1曲、12月でもう1曲と分けて使うことにしたんです。

 

お客さんもスタッフもみんなが喜ぶディスプレー

 
奥山
約1カ月間のクリスマスディスプレーにはたくさんの反響をいただきました。館内で装飾に使っていたフラッグやポスター、オーナメントが欲しいという声も多かったです。会社の資産なもので、差し上げることはできないのですが…。松下さんのファンの方からのリアクションも大きかったです。

佐々木 
売り場の担当者からは、ウインドーの写真を撮影しているお客さまがたくさんいたという情報も多く聞きました。“空想百貨店”のサイトにアップした商品を販売しているスタッフも、特設サイトに掲載されたことをすごく喜んでくれたみたいです。お客さまだけでなく、社員みんなが楽しんで販売しているというのを聞くと、やっぱり「やってよかった!」と思いますね。
 

 

ディスプレーだけでなく、館内の至るところにも装飾を施した。キーカラーとなるピンク色が館内の雰囲気を華やかに盛り上げた。
 

社内での話し合いを重ね新たな試みが形に

 
奥山 
正直に言うと、社内にはこの企画に戸惑った人も少なからずいたんです。でも、「女性の視点に立つこと」を優先に、「今までと視点を変えよう。違う視点でアプローチしないと」と伝えていきました。今回はそういう話し合いも含めて、すべてがうまくいったんだと思います。こう言ってはなんですが、藤崎はいつもキャンペーンのたびに誰にでも受け入れられる企画に行き着くことが多いんですよ。だから今回は本当に大きな判断だったと思います。
 
佐々木 
たしかに振り返ってみるとチャレンジでしたね(笑)。これからもこの企画みたいに、SNSと絡めて楽しいことや新しいことをやってみたいなという気持ちはあります。でも、お客さまはいつも私たちを見てくださっていますから、あまり奇抜なことをしすぎるよりはきちんとしたことを守りつつ、新しい時代に合ったものを取り入れていきたいなと思います。お客さまに驚いてもらうことって、難しいし、大変なんですがやりがいも感じます。そこをクリアしていきつつ、藤崎らしいアプローチができたらいいですね。
 

 

 
※こちらのトーク内容は、2018年1月31日河北新報朝刊に掲載されました。
 

 

藤崎

  文政2年(1819年)創業の老舗企業。仙台に本店を置き東北各地に事業所を展開。地域に根ざした百貨店として親しまれている。グルメから日用品、ブランド品まで選りすぐりのアイテムを揃えており、連日多くの人が足を運ぶ。   http://www.fujisaki.co.jp/
クリスマスディスプレーのイラストを描いた
在仙イラストレーター・松下さちこさんのインタビュー
 
私ひとりの力ではなくて、 私の世界観を深く掘り下げてくれた 藤崎の皆さんのおかげです。
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及川 恵子
1982年宮城県生まれ。大学で建築を学んだのち、2011年より建築家による復興支援団体「ArchiAid」にてプレスを担当。その際に書籍制作に関わったことで編集者の道へ進みことに。2013年より出版社「プレスアート」にてタウン情報誌「せんだいタウン情報S-style」や「Kappo」などの編集制作に携わる。2017年よりフリーライターに。知ること、書くこと、そして人と出会うことが好き。旅、音楽も好き。

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antennasia san (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。soundcloud