1分コラム

看板放浪記第十一回 DOMI

古き良き宮城の街並みをかたちづくっていた証。それは看板! 古くなるほど愛しさつのる。ライターりりっくれおなるどが、看板の声に耳を傾け一句したためる。今日も看板を求めさまよう、みちのく一人旅。今回訪れたのは、仙台市青葉区片平にある喫茶店「DOMI」。

Apr 29, 2019     

 仙台駅を背に南町通りを、仙台城址に向かって緑の気持ちが良い道のりを進む。仙台高等検察庁、仙台地方裁判所、仙台簡易裁判所が建ち並び、弁護士事務所が軒を連ねる。そこに突然ニューヨーク風な喫茶店が現れる。こんなにクールでモダンな喫茶店がここにあったなんて! 私は一気に目を奪われた。

 喫茶店の名前は『DOMI』。喫茶店が入るマンションには『DOMI KOJO』と書いてある。DOMI工場なのかと思っていたら、このマンションは、大学生向けに作られたワンルームタイプらしい。話を伺ったら、『DOMI工場』ではなく、『ドミー向城』と言い、「仙台城に向かっている」という意味が込められていた。オーナー、宍戸さんのご主人が元々は、マンションのテナントに入居する洋装店の『服装のシシド』も営業していた。創業当時、ご主人の友人が経営していたが閉めることになり、店舗ごと譲り受けた。

 オーナーは喫茶店を経営した事がなかった。料理を提供するなんて経験も資格もない。「せっかくだから続けよう」そう思ってシェフを雇い、一緒にスタートしたと言う。

 子育てと両立させながらのスタート。メニューはシェフと一緒に考え、シンプルに6種類の料理とメロンソーダなどのソフトドリンク。だんだんとシェフのレシピを受け継ぎ、手伝っていた経験とレシピを擦り合わせながら何度も味見してシェフの味に近づけた。その後、シェフを雇わず一人で営業ができるようになった。

「デミグラスソースなんて作ったことなかった。でも、人ってなんでもやろうと思えばやれるのね。この辺りは弁護士さんや裁判官の方が多いから、美味しいと言ってくれて味を気に入ってくれるのが本当に励みになりました。とにかくね、忙しい法曹界の仕事の方々だから、お昼はスピード勝負! それも38年かけて身体で覚えた。それが自慢!」

 老舗喫茶店だけあり、常連さんも多い。
「美味しいって言われたり、お昼ご飯はDOMIで。って来てくれるのが本当に嬉しい。」
とオーナーは笑顔で語る。

 創業から40年ほど経ち、店を引き継いでから38年。店名は「DOMI」をそのまま利用しているが、以前のオーナーは外観も内装も白を基調としていた。さわやかなホワイトが施されている。ランプが彩る美しい看板は、欄間(らんま)などを手掛ける建具屋さんが作ったもの。『DOMI』には日本の伝統技術も生きている。日が沈む時間に照らされていると、まるでニューヨークのレストランみたい。黒地に青の文字。この抜群のセンスに胸が躍る。このデザインは、今のオーナーのこだわりのデザイン。
「黒に青ってすっごくかっこいいでしょう!当時は白っぽい色合いの喫茶店が多くてね、こんな色合いは珍しかったの!」
と教えてくださった。


店の入り口ドアの左側にある看板①


店の入り口ドアの左側にある看板②


プラスチックで作られた四角い『DOMI』と『服装のシシド』白い『DOMI』の看板(マンション入口①)


マンション名『DOMI・KOJO』(マンション入口②)


店舗左脇の看板。灯りを消すと建具の美しさが際立つ
 


店名 
DOMI(ドミー)
 
業種 
喫茶店
 
創業年
1979(昭和54)年頃
前オーナーが創業し、今のオーナーが新たに創業した1981年には、山本譲二『みちのくひとり旅』、松田聖子『チェリーブロッサム』がヒット。ファッションはマリンスタイルが流行。
 
看板制作年
1979(昭和54)年頃
 
制作者 
不明、建具屋さん、デザインはオーナー本人。
 
黒に青という組み合わせにこだわった。創業当時の看板は前のオーナーの意向で白を基調としていた。
 
素材
プラスチックや木材
木材(店舗正面ドア左側)
 
自慢できること
ずっと同じお客様が通ってくれる。
 
看板商品
ハンバーグフライ・カツスパゲティ・ポークジンジャー・ナポリハンバーグスパゲティ(ランチタイムはサラダとドリンク付き)


 

カツスパゲティ


カツスパゲティランチ

「ランチはね、スープもサラダも全部手作りで新鮮な野菜を使ってるの。コーヒーもついてるから、男性のお客様方にはボリュームがあってちょうど良いみたいね。」とオーナー。


メロンソーダ

40年使用している、ガラス食器。ガラスの厚みが美しい。

カウンター越しには、昔のサイホン式コーヒー器具が並ぶ。


『Noritake』は40年を経てオールドノリタケに!

コーヒーのカップ&ソーサーは『Noritake』。『オールドノリタケ』としてアンティークがコレクターには流行してるが、『DOMI』の『Noritake』はずっと現役で使い続けてアンティークになった。


大きなスクリーンとランプ

 色褪せながらも光っている大きなスクリーンはなんと40年前のハワイ! 当時の店内のイメージ、爽やかな白色に合わせてディスプレイされたんだという。当初は青い海とダイヤモンドヘッドが輝いていた!石原軍団や、松田聖子がハワイに行ったりしてブームだった時代。
 ランプは一般販売されていない貴重なもの。壊れないように大切に使っている。


無造作に積み上げられたコミック類とガラスに手描きの『DOMI』看板


40年変わらないレジスター

「こんなに古くて何がいいの?! 」
ニコニコしながら話すオーナー。全て復元不可能な40年前のものばかりで大切に使われている。
「ダイヤモンドヘッドは恥ずかしいから外そうかな。」
とおっしゃっていたが、
「ぜひずっと飾っていてください。」
とお願いした。
 
ここで一句

青葉繁る道通り
仙台城に向かいけり
発見したのはブルックリン
クールでおしゃれな看板に
思わず心はニューヨーカー

 
仙台城に向かう途中に出会ったニューヨークは、本当にクール。
40年変わらない店内は、店自体がアンティークのGood old USA。
 

DOMI

  住所   仙台市青葉区片平1-3-2 ドミー向城ビル1階 電話番号 022-262-0506 営業時間 11:30〜18:00 (ランチタイム11:30~14:00) 定休日  日曜日、祝日

 

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BGM of "BGM"

佐藤那美宮城県仙台市荒浜出身の音楽家。ピアノを中心にエレクトロニカ、アンビエント、ストリングスなどのサウンドを取り入れる。CMや映像作品に多く楽曲提供。レッドブルミュージックアカデミー2018inベルリンに選出。関連記事はこちら