1分コラム

愛車と路面の競演
メロディーロード

角田哲哉の「音と暮らしと雑文と」第4回。今回は、思いがけない音楽との出会い、愛車と路面の競演を楽しむドライブの話。さぁ、ハンドルを握って出発。

Apr 27, 2019   

福島県の会津若松市街地を抜け、鉄道ファンにはお馴染みの只見線に並び、松田龍平主演の映画「ジヌよさらば~かむろば村へ~」のロケ地にもなった柳津町へと入る。
敬愛する版画家、斎藤清の美術館と土産物屋、そして道の駅が隣接する駐車場に車を止め、雄大ながらも牧歌的(ぼっかてき)な只見川を見や遣ると、そこにかかる赤い橋の向こうには、「七日堂裸詣りまいり」で有名な柳津虚空蔵尊こと古刹、圓蔵寺の霊験も感じられるよう。

再びハンドルを握り先へ進めば、妖精伝説の残る沼沢湖へ至る道や天然炭酸水の湧き出る金山町、時に日本の原風景のような街道筋の集落を車窓に認め、一般水力発電として日本第2位の出力を誇る発電用ダム、田子倉湖を周回するようにして、カナダかと見紛うほどの(カナダへは行った事は無いのだが)ダイナミックな山岳を超え、昼なお暗い隧道(すいどう)を抜け六十里越、新潟へと越県するのである……。

新潟県柏崎市を起点とし、福島は会津若松市を終点とする、国道252号線――。
かねてより、FUJI ROCK FEST.への往復など新潟へ向かう際に利用している、個人的“ベストロード”の一つである。
その252号線、金山町水沼の路上に「奥会津シンフォニーロード」と呼ばれる一帯がある。
先に書いた柳津町から田子倉湖方面へと向かい、宮下ダム、早戸温泉を抜けた先のあたりの約278m。その区間を20秒ほどで走り抜けると、タイヤの振動が絶妙な音程で「カントリーロード」を奏でるという仕組みになっているのだ。

無論、何も知らずに該地を通行すれば、まずは唐突に聞こえてくる怪しげなサウンドに何事か!? と肝を抜かれるに違いない。ややあって「おや……? なんだかこの音は曲を奏でているようだぞ……」と思った頃にシンフォニーゾーンは終わり「あれ?? さっきの曲なんだったけな~!?」たまらず取って返し、再度、路上のシンフォニーに耳を傾けることになる……

このように、タイヤとの摩擦で音を発生させるよう路面に溝を切り込み、道路を一定の速度で走行すると音楽が流れるよう細工が成された道路は、総じて「メロディーロード」などと呼ばれ、北海道から沖縄までの16道県あまり、約30カ所以上の道路で様々な音楽を聞くことが出来る。

奥会津金山町の「カントリーロード」や北海道北斗市の「いいもんだな故郷は」のように郷愁を誘い「田舎っていいなあ~」と想わせるものもあれば、知床の「知床旅情」、尾瀬の「夏の思い出」のような“ご当地もの”や、「うさぎとかめ」「どんぐりころころ」といった童謡、ひいては「ゲゲゲの鬼太郎」や「となりのトトロ」「残酷な天使のテーゼ」……と多種のジャンルを超越し、究極は「カーブです、スピードを落としてください……」という、アナウンスものまであるというから驚きである。

本州では何故か群馬県に10カ所あり、全国的に見てもダントツで多いのだが、残念ながら東北では先に紹介した奥会津の1カ所のみらしい。

世は正に大行楽シーズン。
思いがけない音楽との出会い、愛車と路面の競演を楽しむために「メロディーロード」を訪ねて旅するのも一興かもしれない。

(写真はスイスを思わせる(無論、行った事はないが)只見河畔の風景)

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BGM of "BGM"

佐藤那美宮城県仙台市荒浜出身の音楽家。ピアノを中心にエレクトロニカ、アンビエント、ストリングスなどのサウンドを取り入れる。CMや映像作品に多く楽曲提供。レッドブルミュージックアカデミー2018inベルリンに選出。関連記事はこちら