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JAM CAFE 山路裕希さんに聞いた、
26歳でお店を始めてからの10年間とこれからの挑戦

山路裕希さんは、26歳で仙台市一番町に「JAM CAFE」を構え、現在に至るまで10年間経営を続けてきた。山路さんが若くしてJAM CAFEを開業し、実践してきたことや経営を続ける上で大事にしてきた考えについてお話を聞いた。

Apr 16, 2019     


JAM CAFEは、大人が1人で読書をしたり、音楽を聴いたり、ゆったりと自由な時間を過ごすための空間とメニューが作られている。店内は24席で全席禁煙。5名以上の団体は入れず、未就学児の子どももお断りしている。お店のコンセプトに沿ったお客様が心地よく、お店での時間を快適に過ごしてもらうことを優先しているためだ。


まず始めてみよう
自分の就職先は自分で作る

ー26歳でJAM CAFEを始められたそうですが、20代の山路さんはどんなことを考えて過ごしていたのでしょうか? また、お店を始めるきっかけはなんだったのでしょうか?

 学生時代は東京の大学にいたんですけど、卒業後どうするかは全然決めていなくて、サラリーマンになって、決まった時間に働いて決まった時間に帰って、そんな生き方が待ってるんだろうな~と思いながらぼんやりと生きていましたね。(笑)今でこそいろんな選択肢が目に入ってくるけど、当時は全然情報を知り得なかったので、それしかイメージできなかったですね。
 でも、大学3年生のときにみんな就職活動を始めて、自分も進めていたんですけど、圧迫感というかどこか嫌な気持ちになって、そこで発想のスイッチが切り替わったんです。自分のお店、自分の会社を持つこともいいのかなーと。だったら、自分でできることは何だろうなと思い、当時からカフェに行くことが好きだったのでカフェがいいかなと。大学3年生のときには「自分のお店を持つこと」を決心しました。その上でやるなら地元の仙台かなと思い、卒業後は仙台にある個人店のカフェで働いて知識や経験を積みました。

ーでは、そこで経験を積んだのちにJAM CAFEを開業されたのですね。

 そうですね。あらかじめ自分の将来設計図を作って、自分のお尻を叩くためにお店を持つまでの期限を決めていました。僕だったら「30歳までにお店を持つ」なんですけど、設計図に従って、やることを逆算し準備していたら、結果的に前倒しになって26歳のときにはお店を持つことができました。

ー計画よりも4年も早くスタートしたのはすごいですね。オープン当初のJAM CAFEは今と違いはありますか?

 当時は今ほど考えてはいなくて、「仙台にないお店を作りたい」と思っていて、当時の仙台にはヨーロピアンなカフェが多く、学生時代に好きで行っていた東京のカフェはニューヨークっぽいお店が多かった。ちょっと無機質な感じの。そっちが好きだったのでそういうお店がいいなと思って。仙台になくて、自分が行きたいようなお店を作りました。
技術や見せ方など今に比べるとまだまだな部分はあったけど「まず始めてみよう」という想いで立ち上げた。だからコンセプトとかは詰まってなかったんじゃないかなと思います。人に使われることやルーティンの生活から抜け出したい一心でした(笑)。
 とりあえずやってしまう! このスタートラインに立つこと。やってから考える方がいいと思います。

ーお店をまず始めてみて、オープンから現在までは順調でしたか?

 いや、全然そんなことないですよ(笑)。それこそオープン当初は、知り合いを中心にたくさんの人が来てくれたけど、そこから下降していくというか、暗雲立ち込めた感じ。徐々に不安になってきました。オープンバブルっていうんですけど、それってお店の地力とは関係ないんです。

ーその時期はどう乗り越えたましたか?

 まず自分の知識量・技術が不足している気がしたので、見るものを増やしたり、行くお店や場所を増やしたり、付き合う人を変えてみたりしました。その当時の自分には圧倒的に「体験」が不足していた。結局人やお店は自分が体験したものしか外に出すことができないと思う。飲食業だと、自分が体験したサービスや商品が全て自分のお店のベースにもなってくるので、そこで体験してきたことが多い方がいいものになる。
 お店としては、最初に作った形から作り変えなきゃと思って色々変えました。特に何かに振り切ろうと思い、大人が一人で静かに過ごせる空間に作り変えました。そのために禁煙にしたり、子どもは入れないとか、5名様以上は断るとか、今につながるお店のルールを作り、お店の照明など内装もコンセプトに合ったものに改装しました。
 ‪うまくいくかわからなかったけど、その時点で結果が出てないってことは、それまでの手法が上手にハマってないってことなので、方向性を変える必要を感じていました。変えたあとでダメだったらまた変えればいいし、まずは何かアクションが必要だと考えました。

ー自分自身とお店、両方に変化を求めて体験を増やしたり、コンセプトを振り切ったのは興味深いお話しですね。

 とにかく多いのはうまくいかないからすぐに辞めてしまう人。僕は多分、往生際が悪くて(笑)。続けていればいつか絶対うまくいくという自信があったので、停滞ではなく常に変化しながら続けていくことをしました。
 お店に来てくれる目の前のたった一人のお客さんを大事にしたことで、あのお店に行けば静かで安心に自分の時間を過ごせるという信用を10年間がかりで築いてきたのかなと思います。お店に来てくれるお客さんの多数が一人の方ですね。

ーその信用こそJAM CAFEの魅力ですね。


2015年には2店舗となる「gramme」をオープン。JAM CAFEとは違ったコンセプトで、こちらは若い女性を中心にコーヒーと焼き菓子を提供するお店として親しまれました。2019年3月から不定期営業中で、年内には閉店予定

ーBGMは若者や新社会人に向けたウェブマガジンですが、若い世代の人たちにはどんな印象がありますか?

そうですね〜。お店の子と話してるときも、「好きな土地とかある?」とか聞くと「○○いいですよね~」と返ってくるんだけど「いついったの?」と聞くと「ネットで見て~」と返されることがあります。僕はその人の話しを聞きたいんですけど、仕入れた情報で話される。自分の体験から自分のことを話してほしいなと思います。

ー確かにたくさん情報に溢れてることでどこか分かったつもりになってしまいますね。

 ワクワクとか気持ちが高ぶったりすることは、見たり聞いたり食べたり、体験にしか宿ってない。「人生はすべてコンテンツだ」って言葉を聞いてそれわかるな〜って(笑)。自分で意識して、自分が今体験していることは他の人が体験しえないことだと思って、日々の体験を意識してみること。自分が体験したこと以上の情報はインターネット上には載っていないし、自分の五感で体験することが大事かな。
 自分にとって当たり前の行動でも、普遍化して発信していくと価値があるかもしれない。僕だったらお菓子を作ったりすること、コーヒーを淹れることが当たり前の行動だけど、他人から見たらその情報は価値がある。最終的には人に価値があって、その人が体験したこと全部に価値があるはずだから、人に話せる体験をいっぱい持ってて欲しいなと思いますね。

これから何か始める人、
始めている人へ

 何かをやりたい人は多いけど、やらない人の方が多いです。やることを迷ってる人がいたら、まずやってみること。やりたいことがあって、それをやっている人はそれだけでも価値があるキャラクターだと思うので、ぜひ自信もって頑張ってほしいですね。
 「まずやること」はスタートラインにすぎないので、次は「知ってもらうこと」。やはり、たくさんの人に知ってもらわないとお店も事業も夢も続けていくことは難しくなります。お金っていう壁があるので。
 お店もそうだけど、みんなが興味をもってくれるわけではないから、知ってもらいたかったら発信しないといけない。「知らない=存在していない」と同じことなので、知られなければ価値がないと思う。今の時代は個人が発信するチャンスがたくさんあるので、すぐできますよね。発信しないわりに「認知されないこと」、飲食店でいえば「お客さんが来ないことを嘆く」のは違いますからね。(笑)

ーまずやってみる、そして知ってもらう努力をすること。私自身も胸に刺さる言葉です!

 さらに大事なのはやっている人の熱量です。極端にいえば、自分のやっていることや商品などをドヤ顔で出せるかどうか。働いているみんなは自分たちの店が好きです。自分のことに対してどれだけ熱狂しているかどうかは、お店の誠実さにもつながってきます。自分が本気でやっているからこそ、そこに共感してくれる人が現れるし、そこから信用にもつながってきますからね。信用っていうのはやってることに矛盾がないこと。

東京への挑戦

ー「gramme」を閉めて次は東京に店舗を構えるそうですが、どういう流れで決めたのですか?

 妻と「いつか東京行きたいね~」と話していましたが、昨年秋に「じゃあもう行くって決めましょう」となって動いています。単純に東京が好きで、東京に進出すること自体は特別なことではないけど、お店としてはかなりの挑戦ですね。
 まだ決まってないことも多いですが、お店のアイデアはたくさんある。どれを軸にして決めて作っていくか悩んでいます。例えば、BGMが全くない店にしたいのであれば、音楽がないのに明るい店は違和感があるので、窓がない店舗で暗くしておかないとカラーに統一感がない。逆にBGM、音響やスピーカーを売りにする店だったら、音楽を楽しみながら過ごす明るいカラーにした店舗づくりをしないといけない。
 どこを起点にして、どこに帰結していくか、矛盾がなければいいお店だと思う。だから実はいいお店悪いお店は存在しなくて矛盾があるかないか、っていうことですね。今はその起点をどれにするか悩んでいます。

ー起点が決まると必然的に帰結が見えてくるのは、まさに山路さんがたくさん体験してきたことがあるからのように思います。

 そうですね。26歳の頃には全然見えてなかったですね(笑)。何がいいか悪いかではない。どこを起点にしてどこを帰結にしてブレがないかが重要。恥ずかしながら、たくさん失敗してきたんで。トライ&エラーの繰り返しと、たくさんの体験があるから今があります。東京のお店ができたら、仙台と2拠点生活のような感じになると思います。

ー山路さんの新しい挑戦も楽しみですね! たくさんお話ししてくださりありがとうございました!


 今回、山路さんのお話から、JAM CAFEが今に至るまでのストーリーを通して、何か始めたいけどモヤモヤしている人や、始めたけど悩んでいる人へのヒントになる言葉がたくさん伺えました。「まず始めてみる」「知ってもらう」「続けること」。この流れを経て、続けることで人からの信用を得ることがうまくいくコツなのは、どんな活動でもどんな仕事でも大事だと思います。
 春、新年度が始まったばかりですが、みなさんの新たなモチベーションにつながれば幸いです。今回の記事でJAM CAFEに興味を持った方はぜひ行ってみてください。


JAM CAFE

  住所 宮城県仙台市青葉区一番町4-5-20 松葉屋ビル2F 営業時間 11:30〜22:00 定休日 不定休

撮影 はま田あつ美(Rim-Rim)

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イタリーさとう
1993年宮城県仙台市生まれ。通称よっくん。地元仙台を拠点に活動するローカルフリーライター/宮城マスター検定見習い。地元の魅力あるものにスポットライトを当てて記事や映像で輝かせることが得意。仙台のカルチャーウェブマガジン「SEN.」などに寄稿。現在は利府町のシェア型複合施設「tsumiki」スタッフとして企画・運営に関わる。また、お笑い芸人としてもたまに活動中。特徴の太いまゆげは先祖代々の遺伝子情報に記載。

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BGM of "BGM"

antennasiasan (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。現在(2018年)まで、国内外のレーベルから、8枚のオリジナル・アルバム、3枚のリミックス・アルバムを発表。