1分コラム

本から本を思い出す 第1回

本を読んでいて、別な本のことを思い出す時がある。
同じようなことが書いてあったり、逆のことが書いてあったり、たまに、読み直してみても、なんで思い出したのかよくわからない、ということもある。
そうやって思い出しながら、自分の本棚の本をぐるぐるとリレーしていく。

Dec 28, 2017   

第1回
切りとれ、あの祈る手を ー〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話/佐々木 中(著)
→圏外編集者/都築 響一(著)

 

『そういう本を読んでいると気づくことがあります。突然出現しように見える人というのはひとつの共通点がある。それは、「誰の手下にもならなかったし、誰も手下にしなかった」ということです。』

切りとれ、あの祈る手を ー〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話/佐々木 中(著):P12より

『原稿の書き方も、取材のやり方も、写真の撮り方も習ったことがない。ぜんぶ、見よう見まね。だから自分の仕事が独創的かどうかはわからないが、独学であることだけは確かだ。

そういう人間に、何かを教えるなんてことができるわけがない。自分だって教えてもらわなかったのだし。』

圏外編集者/都築 響一(著):P5より

 

「切り取れー」を最初に読んだのは2年くらい前で、夜寝る前と朝トイレの中で少しずつ読んでいて、ある朝いつものようにトイレで続きを読んでいたら、あるページで声を出して泣き始めてしまった。本を読んで止め処なく涙が出る、ということがほとんど初めてのことで、左手で本を持ち、右手でトイレットペーペーをたぐって涙を拭いたのだが、トイレから出て本当に爽快な気持ちだったことを覚えている(色々な意味で)。それから何度かこの本を読んでいるのだけど、最後のページまで読んでも、読み終えた、という気がしない。もっと教えてくれ、という気持ちになる。だからまた読む。そういえばどこで自分は泣いたのか。二度目に読んだときドキドキしながらその時を待ったけど、それは来なかった。

僕は同じ本を何度も読んでしまう。小説でも評論みたいな本でも、好きな言葉があると付箋をつけておいて、ある時思い出して読む。一冊まるごと読み直すときもあるが、好きな言葉の前後数ページを読み直すときもある。「なんで音楽は同じ曲を何度も聞くことが当たり前なのに、小説を何度も読む、ということは当たり前ではないのか」ということを作家の保坂和志氏が書いていたのを読んだことがあるけど、好きな言葉の前後を繰り返し読むのは、好きな曲を何度も聞くのと似ている。好きな曲を何度も聞いていると、歌詞やメロディが頭から離れなく時があって、そういう時はけっこう日々の所作というか思考がその曲に引っ張られたりして、言葉遣いが変わってしまう。それは本を読むもの同じで、好きな文章を何度も読んで新しい言葉を知った気になるー言葉の新しい意味を知った気になるーと、もう後戻りはできなくなる。その言葉の新しい意味を知らなかった時には戻れなくなる。

また読む、読み続けるということは、まだ『読み得ぬ』ものがここにあると思うからで、それは、理解したいということともまた違っていて、どちらかというと、真に受けたい、ということに近い気がする。到底理解できるとは思えないけれども、少しでも近づきたい。そこに書かれている考え方で、自分も考えてみたい。なぜそう思うのか、それは「切り取れー」を読んだからそう思うようになった、としか言えないのだけど、この本はそういう、読むこと・書くこと、読み続けること・書き続けること、についてひたすら書いている本だ。

「切り取れー」を読んでいて、そう言えば、と思い出したのが冒頭の引用で、どちらも著者が自身のことに触れている部分。『「誰の手下にもならなかったし、誰も手下にしなかった」ということです。』を読んだら、日々、日本中、世界中を飛び回って取材している(だろう)都築氏のことを思い出してしまった。勝手な想像だけど、都築氏もまた、「誰の手下にもならなかったし、誰も手下にしなかった」ような気がする。そんなことを思い出しながら圏外編集者を読んでいたら、また二つの本に同じようなことが書いてあった。

 

『(略)・・・ニーチェもショーペンハウアーも夏目漱石もスタンダールもロラン・バルトもヘンリー・ミラーも、そしてマルティン・ルターも全く同じことを言っています。「本は少なく読め。多く読むものではない」とね。』

切りとれ、あの祈る手を ー〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話/佐々木 中(著):P32より

 

『(略)・・・速読とか多読なんて、早食いや大食いと一緒だと思うから。何百冊も何千冊も買って部屋に積んだって、「読んだことがある」とか言ったって、素材を味わってなかったら、なにも身につかない。血肉にならない。編集者を目指すからって、ひとよりたくさん本を読む必要なんてない。それよりもはるかに大切なのは、100回読み返せる本を、何冊か持つこと。』

圏外編集者/都築 響一(著):P34より

 

ニーチェもショーペンハウアーも夏目漱石もスタンダールもロラン・バルトもヘンリー・ミラーもマルティン・ルターも、そして佐々木中氏も都築響一氏も全く同じことを言っていた。

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antennasia san (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。soundcloud