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アートと社会の関わり方
大切なものは目に見えない(後編)

あなたは自分に正直に向き合っていますか? 宮城には、全身全霊をかけて自分に向き合い、とことんアートを追求し、社会との関わりを実践しているアーティストがいます。独自の世界観をもつ作品をつくりあげ、他を魅了し続けている在仙のイラストレーター、松下さちこさん。パリでの経験を経て、仙南から東北の日常を世界へ発信している写真家、山田なつみさん。アートと社会の関わり方について、お二人は今どんなことを考えて活動されているのでしょうか。

Sep 14, 2018     

仙台にあるシェア型複合施設『THE6』で行われたトークイベント「大切なものは目に見えない―アートと社会の関わり方―」より、二人のアーティストの言葉をお届けする。
 
「BGM」の連載 “お仕事の極み” でも以前ご紹介した仙台の老舗百貨店『藤崎』のクリスマスディスプレイを手がけ、独自の世界観をもつ作品から他を魅了し続けている在仙のイラストレーター、松下さちこさん。そして、パリでの経験を経て、宮城・福島を中心に無形文化財や日常の風景を撮影し、展示・写真集・ブログなどから世界へと発信している仙南在住の写真家、山田なつみさん。聞き手は『book cafe 火星の庭』店主のの前野久美子さん。
 
二人がどんな経緯を経てアーティストになられたかお聞きした前編はこちら。
どうやってアートの扉を開いたの?大切なものは目に見えない(前編)
 
後編のテーマは「アートと社会の関わり方」。社会においてアーティストとしてご自分が感じる使命、活動に対する意識、身近な暮らしのことから死生観のことまで、幅広くお話いただいた。
 

アートと社会の関わり方

 

山田なつみさんの場合

アートを通じて地域を柔らかく耕したい

 
私という人間がいて、娘がいて母という私がいて、妻という私がいて、それぞれの場面で社会との関わり方を変化させているという感じ。どちらかというと、アーティストというよりアクティビスト、社会活動家という意識でやっています。
 
例えば、母として違和感を感じることに、住んでいるところの近くで放射線量が上がっているという問題があります。そのことに対して、母として、アーティストとして違和感を感じたので、お母さんたちに署名活動をしましょうと呼びかけたら、翌日に某政党の方が家を訪ねて来られたんですね。
 
私はお母さんの気持ちとして動いています。お母さんの気持ちを持った社会活動家として、美しい風景に対して、違和感を感じることを解決したいのであって政治とは違う。美術家の藤浩志さんの言葉を借りるのであれば、「アートを通じて地域を耕して柔らかい状態にしたい。」と思っているんです。
 
近所のお母さんが、「〇〇ちゃんのお母さん写真やってるの? 写真はわからないけれど子どもと一緒に何かやりたいな。」「〇〇ちゃんのお母さん、フランス語と英語喋れるんだったら、なんかやってよ。」と、アーティストというよりはお母さんと、お母さんとして話をする。そういったニーズがあるということに気がついたんです。
 

 
2017年の10月、自分の子どもの誕生日に、仙南や福島の子どもたちとお母さんを対象に芸術文化にふれる機会を創造する『一般社団法人SOFA』を立ち上げました。子どもたち、お母さんたちが芸術を通して日常から交流が深まっていれば、世の中が変わっていくかもしれない、地域が柔らかい状態になっていくかもしれないと思ったんです。
 
アートはコミュニケーションツールです。私がフランスで働いていた時に感じたのは、年齢も性別も価値観も宗教もみんなそれぞれが違う中で、一度相手を受け止めることです。受け入れるではなくて、受け止めて理解を示そうとする。それが芸術の本質なんです。
 
例えば人から「Aだよね」と言われた時に、「全然違うよ」となるのではなく、「あっちの人はどう興味をもっているのかな」と、他人と違った考え方をするということを大事にしている。
 
フランス人は誰もが哲学を勉強するんですけど、“問題提起”のことを “プロブレマティック”というんですね。問題の解決策を一問一答で答えられることが良いのではなくて、違和感を感じて自分にしか見つけられない強い問題提起をすることが大切とされるんです。
 
私は、自分が違和感を感じているということを、写真の作品を通して“問題提起”しています。宮城県の角田の風景を、色や技術などで時代が映らないモノクロ写真で撮影することによって、「人間らしさってなんだろう」という普遍性のあるテーマを表現しています。
 
 

松下さちこさんの場合

必死でもがき生きる姿を見てもらうことが使命

 
私はイラストレーターと名乗っていますが、他人にわかりやすいように名乗っているだけで、自分の中では呼ばれ方はなんでも良いと思っています。
 
真のクリエイティビティというのは「自らの夢や希望に人々の想いを乗せて、それらを実現するための方法を考えるということ」と、誰かが話しているのを聞いたことがあるんですね。私も今、それを実現するために、いろいろな方法を模索しながら仕事に向き合っています。
 
絵というものは私にとって自己表現ではなくて、生きるために与えられたツールです。それを使ってどういう生き方をしているか、模索しながら必死になっている姿を、皆さんに見ていただき、反応を起こすというのが、自分の役割なんじゃないかと思っています。
 
山田さんも「お母さん」と言っていたけれど、「お母さんだからこれができない」とか「これを我慢しなきゃ」とか、その中できゅーっとなって生きなくてはいけないと思い込んでいる方も、山田さんの姿を見ることで何かそこに反応が起きると思うんです。
 

 
いろんなことがスムーズにできてこなかった私という人間でも、今こうやって小さいながらも夢を叶えるために命削って生きている姿を皆さんに見ていただけるようになって。
 
若い子たちは「自分の親くらいの人間が頑張ってるんだったら頑張ります」と言ってくれたり、「ついていきます」みたいなことを言ってくれたり。(笑)
 
子育てで悩んでいるお母さん方に、私の母親がしてくれたことをお話したりすると、「じゃあ、もうちょっとここを超えれば私もわかってもらえる日が来るんだろうか」なんて。私はお母さんたちと同じ世代ですが、子どもがいないので、今でも気持ちが子どもの頃のままで、子どもの気持ちがわかるんですね。「お母さんにこういうことしてもらって、こういうことが嬉しかったよ」「子どもに今は伝わらなくても、言い続けるのがお母さんの仕事だよ。そうすると23歳くらいになったらわかるよ。」というのを伝えられるんです。先日はそれを聞いたお母さんが泣きながら握手してくれました。
 
皆さんが頑張れって背中を押してくれているので、精一杯やってその辺でのたれ死んでも良いくらい。でもその時に後悔はしたくない。どういう死に方をするかは選べないので、その瞬間に無念と思わないようにだけ。「もうちょっとやりたかったな」くらいで死ねるように、必死でもがき生きる姿を見ていただくのが仕事だなと。
 
私は生まれ変わりは絶対にしたくないし、耳垢一つも残したくない。生き尽くしたい。魂を燃やし続けたい。
 
それってすごく大変なことだとはわかっています。
 
とにかく今はいただいた絵というツールを最大限に活かしながらゆくゆくは表現の枠を絵だけにとらわれず、どれだけの人と繋がれるか? 何処まで行けるか? 何ができるか? そんなことを考えています。でも、頭で考えると怖くて逃げたくなるので心に従って目の前の事、人を大切にしながら、ただただ必死で生きていきたいと思っています。
 
 

 
 

山田なつみ (やまだ・なつみ)
 
大学在学中に雑誌「Composite」の編集に携わる。2003年渡仏。バイト先で、世界的な写真家集団「マグナム」のGueorgui Pinkhassovなど現地の写真家と出会い、独学で写真を始める。Katja Rahlwesのアシスタントを経てパリ大学にて視覚芸術を学ぶ。今秋、仙台写真月間2018に参加。
http://www.uraparis.com/blog/

 
 

松下さちこ (まつした・さちこ)
 
第187回 ザ・チョイス 入選(ミナ・ペルホネンデザイナー 皆川 明審査)。NYを拠点と『PAN AND THE DREAM 』主催。“CENSORSHIP PROJECT ” に世界的ファッションフォトグラファーNick Knightと世界中から集められたアーティストと共に参加。同プロジェクトよりアートマガジン出版。NY、ロンドン、パリ、デンマーク、東京などで販売中。
http://r.goope.jp/m-sachiko-m

 
 
山田なつみ 活動情報
一般社団法人SOFA
http://sofa-japan.org/
 
屋外1dayイベント INTO THE BOOK
2018年9月17日(月・敬老の日) 10:00~16:00
会場 福島県立図書館の庭 
 
フランス絵本のおはなし会
2018年10月7日(日)
会場 りょうぜんこどもの村
 
仙台写真月間2018 「TOKϴYO」 山田なつみ
丸森町、大蔵山スタジオで予約制の写真展とワークショップを開催します。
2018年10月20日(土) / 10月27日(土) / 11月3日(土) 各日
 
自然の中の対話型鑑賞会
10:00~12:00 参加費 1000円(お弁当代込み)
 
演出写真ワークショップ@大蔵山 「年賀状にする、家族写真」〜植田正治に憧れて〜 
14:00~15:30 参加費 2000円 
持ち物 デジタルカメラ or スマホ / あればよりよい作品に→デジカメ用の三脚 or スマホスタンド
 
会場 大蔵山スタジオ
(丸森町大張大蔵字小倉10-1)

 
お申し込み 以下のQRコードからお願いいたします。

 
 
松下さちこ 活動情報
IZUMI marchél (イズミマルシェ)
2018年9月22日(土) 10:00~17:00
会場 泉中央駅前ペデストリアンデッキCat&dog&me チャリティーブース
 
月一HYGGE
2018年9月23日(日) 11:00~18:00
会場 HYGGE(ヒュッゲ)
(仙台市青葉区支倉町2-5第二支倉SOCO)
TEL 022-215-6380
 
霧とリボン企画展 〜架空の香水博覧会 vol.1 〜夜へのオード〜 前期・美術と音楽展
2018年9月23日(日)ー29日(土)
会場 霧とリボン
(東京都武蔵野市吉祥寺東町2-33-16ホロン内1F奥)
TEL 080-3483-9305(霧とリボン) 0422-27-2209(運営事務所ホロン)
 
むつめくTOHOKU
2018年9月26日(水)ー30日(日)
会場 三越仙台7階催事場
 
松下さちこ個展 〜poetic justice〜
2018年10月19日(金)ー22日(月)
会場 oomachi gallery
(福島県福島市大町9-21ニューヤブウチビル3F)
 
企画展 メメント・モリ
2018年10月30日(火)ー11月4日(日)
会場 galerie le monde ギャラリー・ルモンド
(東京都渋谷区神宮前6-32-5 ドルミ原宿201)
TEL 03-6433-5699
 
写真 はま田あつ美
 

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高野明子
随時工事中の人間型複合文化施設。企画とデザインを手がける「Waltz by Lucy」、河原に流れ着いたものでつくる装飾品「10Ma editing of the earth」主宰。仙台のシビックプライドについて考え、ローカルなカルチャーを伝えるプロジェクト「SEN.」を立ち上げ、友人たちと取り組んでいる。愛称はルーシー。

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BGM of "BGM"

antennasia san (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。soundcloud