FEATURE

40年の時を越えて 受け継がれる思い
コーヒー+αの価値を 空間・接客・演出で

大切なお客さまをお連れしたり、ここぞという時の商談に使ったり、自分へのご褒美に訪れたり。「ホシヤマ珈琲店」は、少し高級で贅沢なお店。そんなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
今回は「ホシヤマ珈琲店」を運営する「ホシヤマインターナショナル株式会社」を訪問。40年来守り続けてきた信念と、これからのチャレンジを伺いました。

Jul 31, 2018     

人の心を動かす優れた仕事をしている方にお話を聞く特集 “お仕事の極み”

40年の時を越えて
コーヒー+αの価値を 空間・接客・演出で

 

「帝国ホテルのラウンジのような店を、仙台駅の近くにつくりたい」というコンセプトのもと演出されている
生花を飾るのは、「ニューエレガンス」時代から引き継ぐ「ホシヤマ珈琲店」の決まり

 

出発地点は壱弐参横丁の「ニューエレガンス」

 
創業40年以上と伺いました。喫茶店を取り巻く環境が大きく変化する時代を歩んできたのではないかと思います。喫茶店としての原点はどういうものでしょうか?
 
菊地信治 専務取締役(以下菊地)
1974年に創業しました。最初の店舗は壱弐参横丁にあった「ニューエレガンス」です。
創業者の名誉会長がオーダーメードの洋裁店を経営していて、その商談スペースとして開店しました。
当時仙台は、個人営業の喫茶店が多い街でしたので、その中でどうやって生き抜いていくか、と考え、京都の老舗喫茶店「イノダコーヒ」に視察に行きました。イノダコーヒは昔も今も、地域に根付いたお店作りを行い、地元の方々に愛され続けている店です。仙台にとってのイノダコーヒのような店にしたい、というのが、ニューエレガンスの、そしてホシヤマグループの始まりでした。
 

ホシヤマインターナショナル株式会社専務取締役菊地信治さん

 

ホシヤマ珈琲店アエル店。出店したばかりのころは売り上げがあがらない時期もあったが、今は基幹のひとつになっている

 
 

店員がTシャツの時代にスーツで丁寧に接客

 
ニューエレガンスは、静かで落ち着けて、お店の人が優しく、コーヒーもおいしくて。特別な雰囲気を味わえるお店でしたね。
 
菊地
そうですね。サービスをきちっとするというのは、昔も今も変わらない私たちの信条です。喫茶店と言ったらジーパンにTシャツを着た若者がエプロンをしめて接客する、というのが定番だった時代に、スーツにネクタイを締めて「いらっしゃいませ」と頭を下げる接客スタイルを選びました。
 
コーヒーも200円くらいが相場のところを、600円という値段設定にして。最初は笑われました。喫茶店なのに何やってるって。でも名誉会長は「お客さまに幸せになってもらえる店にしたい」と譲らなかったんですね。
 

自家焙煎も、仙台では先駆けだったそう。おいしさをしっかり引き出し、お客さまに笑顔になってもらえるような一杯を目指す

 
名誉会長自ら市場に花を買いに行って、お客さまが一人しかいなくても100本のバラを飾ったり。今もそうなのですが、私たちの店はこれでもか、というくらい掃除をきっちりやるんです。
 
私も入社当時は、何度もやり直しをさせられました。でも、だんだんそれが当たり前になるんです。細かいことでも、きちんとやるというのが身につくと、自然とお客さまに対する態度も変わるんですよね。「店、人、物を大切にする」という接客の基本は、口に出すと簡単ですが、ここに徹底的にこだわるというのはなかなかできない。ニューエレガンスはそれをとにかく徹底し、売り上げを伸ばしていきました。
 
ニューエレガンスは2015年に閉店しましたよね。大好きなお店だっただけに、とても残念でした
 
菊地
ありがとうございます。閉店までの数日は朝から夜まで行列ができていました。お客さまも昔働いていたスタッフもみんな来て、涙を流して惜しんでくださいました。学生の時にお世話になったとか、最後に来たくて新幹線で来た、とか。たくさんの飲食店ができては閉店する時代に、こんなに愛される店に携われたのは本当に幸せなことだと思いましたね。「お客さまに幸せになってもらえる店を」という名誉会長の思いが達成できていたんだ、と感じた瞬間でした。
 

 

お客さまの幸せのために自分の最善を尽くす

 
ホシヤマ珈琲店もその思いを受け継いでいますね。店内空間とサービスへのこだわりを感じます
 
菊地
スタッフには「お客さまのために、今自分ができる最善を尽くす」という言葉を徹底しています。「自分ができる最善」というのがポイントです。新人とベテランの「最善」は違いますよね。ベテランが新人と同じことをしていたら、それは「最善」ではない。一日の仕事が終わったときに「今日は自分のベストの仕事をしたな」と胸をはれる接客をしてほしい。こういう付加価値がお客様に伝わって「また来たいね」という気持ちになるのだと思っています。私たちの店は、コーヒー1杯1000円以上の値段設定です。そのお金を払ってでも再訪したいと思っていただけるということは、「コーヒー+α」の価値を認められていることだと自信を持っています。
 

訪れた人の雰囲気に合わせてカップをセレクトするのも「サービス」のひとつ

 
サービスの質を維持するには、スタッフ教育が大事になってくるのではと思いますが、工夫している点はどんなところですか
 
菊地
自分で考えて行動する、というのが基本です。先ほどの「最善を尽くす」という行動指針もそうですが、マニュアルだけを基準にすると、それ以上のサービスが出来なくなってしまいますので。従業員が少ないうちは社長や会長と直接話をする機会が多かったのですが、今は大所帯になってきましたので、思いを共有するシステムの構築を意識しています。新人研修会は年に1回、スタッフ面接は年4回。クレド*を導入したり、社員総会や表彰制度を設けたりもしています。店舗を運営しながらやらなくてはいけないので、なかなか大変ではありますが、「お客さまに幸せを感じていただくために最善を尽くす」という理念を浸透させていくために、繰り返し実施しています。
 
*クレド/企業の「信条」であり、従業員に求める行動指針
 

 

コーヒーへのこだわりと専門店化の流れ

 
「ホシヤマ珈琲店」以外にもさまざまな飲食店を運営していますが、それぞれ雰囲気が違うお店ですよね。それぞれ、どんなコンセプトなのでしょうか
 
菊地
一番町のホシヤマ珈琲店本店は「珈琲への憧憬」というのがコンセプトです。オープンした当時、コーヒーは一般の人たちにとって特別な飲み物だったので、そういう「憧れ」をかたちにした店をつくりたいなと。天井には太い梁、黒光りする民芸家具を配し、贅沢な時間を楽しめる空間にしています。アエルのホシヤマ珈琲店は仙台の玄関口で、ホテルのラウンジのような空間をつくりたいと開店しました。天井が高く高級感があり、商談などにも活用いただいています。
 
電力ビルにある「NewAiry」はパンケーキを食べによく行っています!
 
菊地
「NewAiry」の前身は「ラウンジカフェホシヤマ」という店だったのですが、コンセプトがあいまいで、うまくいかなかった。そこで思い切って何かに特化しようと「パンケーキの店」に舵を切ったところ、軌道にのりました。これからの時代は「専門店化」が必要なのだと実感しましたね。日本料理店「華の縁」もそういう意識でやっています。焼き鳥店「華泉」は、上海からスタートした店。会社名にもあるように、これからは世界を念頭にビジネスを展開していきたいと考え、さまざまな場所で展開できるモデルを模索しています。仙台PARCO2にオープンした「THE MOSTCOFFEE」は、アメリカへ視察に行き、アメリカンスタイルを導入した店です。MOSTという言葉には「最上級」という意味もありますが、「星山」を英語読みしたマウントスターの頭文字を取った言葉でもあります。世界にホシヤマが進出する足掛かりになったらと思っています。
 

 

「感謝」を忘れず新たなチャレンジ

 
お客さまを幸せに、という思いを基本に、どんどん挑戦してらっしゃるんですね。勢いを感じます!今後チャレンジしてみたいことはありますか?
 
菊地
自分たちが考えていること、向かいたい方向性が見えてきましたので、今後も専門店化の方向は大事にしていきたいです。今は「食パン」を研究しています。8月に新店舗をオープン予定なのですが、そこでは、コーヒーとベーカリー、ソフトクリームがキーワードになります。
 

 

「専門店化」への新たなチャレンジ。8月に三井アウトレットパーク仙台港にオープン予定

 

 
この店舗がさらなるステップアップにつながればと思っています。創業者である名誉会長は、よく「感謝」という話をしていました。これも口にすると簡単な言葉ですが、何に感謝しているのか、どうして感謝するのか、ということを細かく、細かく考えていくと、心からそう考えられるようになる。この「感謝の心」は、今も脈々と続いています。「ニューエレガンス」から続くこういう信念を、これからも大切にし、さまざまなことにチャレンジしていきたいです。
 
 
※こちらの記事は、2018年6月30日河北新報朝刊に掲載されました。
 

 

ホシヤマインターナショナル株式会社

  1974年創業。壱弐参横丁の「ニューエレガンス」を皮切りに、さまざまな業種・業態の飲食店を経営。現在は「ホシヤマ珈琲店」「NewAiry」「THEMOSTCOFFEE」「華泉」「華の縁」の6店舗を展開。創業当時から受け継がれる接客・空間・演出で多くの人に愛され続けている。 http://www.hoshiyama.co.jp/
Posted in FEATURE, 特集 お仕事の極みTagged , ,
沼田 佐和子
株式会社月刊カフェラテ コピーライター&ディレクター。宮城の復興情報誌、旅行情報誌などの企画制作、コピーライティングをやっています。ムスメと本とおいしい食事とお酒が好き。迷ったら面白いほう。

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antennasia san (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。soundcloud