1分コラム

宮城看板放浪記 第三回 「べるん」

古き良き宮城の街並みをかたちづくっていた証。それは看板! 古くなるほど愛しさつのる。ライターりりっくれおなるどが、看板の声に耳を傾け一句したためる。今日も看板を求めさまよう、みちのく一人旅。今回訪れたのは、仙台市青葉区支倉町のべるん。

Jun 29, 2018     


 
東北大学病院の向かい側、バスや車通りも多い作並街道沿いを、大崎八幡宮方面に進む。病院の美しい塩焼き煉瓦の門柱の前を通り過ぎる。現在は復刻版らしい。
 
「昔は八百屋さんなどの商店も並んでいたけど、今は高齢化が進んで、みんなお店を畳んでマンションに引っ込んでしまったんだよ。」地元の方が懐かしそうに、そして少しだけ寂しそうに教えてくれた。
 
今どきらしい看板が目立つ中、ちょっと変わった看板のパン屋さんがある。看板だと思わない人もいるかもしれない。
ビルを建て替えた際に、看板ではなく、お店のマスコットである『パン屋の職人さん』と店名の『べるん』をまあるい文字で直接壁面に取り付けたんだそう。
 
 

 
 
お店のマスコットを見た時に私は、可愛い色使いに、「ユニコーンかな?」と思っていた。お店の方に伺ってみたらどうやら『ブーランジェ』(パン職人)だと言う。よく見たら、ユニコーンの顔だと思ったのは、髭を蓄えたパン職人さんだった。そうだ、そう見えてきた。見れば見るほど、なんだか他にはないマスコットのオリジナリティに心がときめく。
 
『べるん』という店名も懐かしい感じがして胸がキュンとなる。近所の方々からは、店名ではなく「角のパン屋さん」と呼ばれ、愛されているのだそう。
お昼時にはランチも食べられる。『レモンパスタ』なる、カルボナーラのレモン風味なんて一風変わったパスタや、『カツ丼』が人気とのこと。コーヒーだけ飲みに来て、のんびりする人もいるのだそうだ。
 
お店は元々、亡きご主人とそのお姉さんが1974年に創業した。現在は奥さんが切り盛りをし、ご主人の想いを引き継いだ息子さんがパンやお菓子を作る。
 
「流行りのパン屋さんがあると、お客さん少なくなっちゃう。でも、楽しみにして来てくれる人がいるから頑張って続けていきたいな。」と話す、奥さんのその顔には優しい人柄がにじみ出ている。
 
コーヒーを飲みに来た常連さんが、
「あのね、パンも美味しいけど、やっぱり、奥さんと話したくて来ちゃうのよ。このパン今日は出て無いの? って聞くとすぐ対応してくれるしね」と話す。
 
そんなパン屋、べるんは居心地がいい。
 
 


店名 
べるん
 
業種  
パン、洋菓子店
 
創業年
1974年12月(アルプスの少女ハイジが放送開始、フィンガーファイブの学園天国が大ヒット。サンドイッチマンの伊達みきおさん、富澤たけしさんが生まれた年。)
 
看板制作年
1974年
 
制作者
知り合いの看板屋さん
 
マスコットのパンの職人は髭を蓄えたブーランジェをイメージして、こんな感じと下書きしたものを修正してデザインしてもらった。お店のロゴもマスコットのイメージとパン屋に合うような字体にしてもらった。
 
素材
マスコットはステンドグラスのようのような特殊なプラスチックかアクリル、文字の方は鉄と思われる。
 
自慢できること
流行りに乗らない。昔からのパンをずっと売ってる。近所の人が毎日来てくれて支えてくれること。
 
看板メニュー
カツサンド、カスクルート、タルト、レモンケーキ、アルザス
パンもお菓子も手作り。20種類以上のメニューがあるが、日によって店頭に並ばないメニューもある。


 
 
お目当てのメニューがない時は「これ今日ありますか?」と伺うと、出来る限りすぐに対応してくれる。パンやお菓子に貼ってあるシールも手作り。流行りのパン屋さんもいいけど、昔と変わらない方法で作られているパン屋さんのパンやお菓子は温もりを感じる。
 

外が見渡せて落ち着く店内

 
 

ショーケースの上には、店内を見守るイルカちゃんのクッキージャー

 
 
店内の飾り棚には「柱の傷は おととしの♪」と思わず口ずさみたくなるような息子さんとお孫さんの背の高さを刻み込んだ横線と日付。ご家族の温かみを感じる。
 
 

 
猫たちの写真も貼ってある。よく見ると店内には猫時計や猫図鑑などの、猫グッズが並ぶ。
「猫、お好きなんですか?」と伺うと、奥さんが嬉しそうに引き出しをゴソゴソ開けて、我が子のように可愛がっている猫のミケママ、いくちゃん、はっちゃんの写真を見せてくれた。
 
 

カツサンド

 
カツサンドは、中のカツもサクサクで食べ応えがある。ソース、ケチャップ、マヨネーズを合わせた特製ソース は後を引く美味しさ。全国的に超有名なあのカツサンドも美味しいけど、べるんのカツサンドはソースが絶妙で、本当に美味しい。長年のファンも多いそう。
 
 

バケットに ハムと玉ねぎを挟んだ、シンプルなカスクルート

 
バケットの香ばしさとハード感。そこに挟まれてるハムと玉ねぎの優しい主張。材料はシンプルだけど、しっかりとした味でお店の定番として愛されている。
 
 

創業時から変わらない味のタルト

 
タルトはチーズ、柑橘、マシュマロ、ブルーベリー、苺、シュガーの6種類が並ぶ。
創業当時からのベストセラーで、ずっと同じレシピを守っている。特にチーズタルトは奥さんのおすすめ。
見た目もかわいらしく、程よい焼き加減の香ばしさと懐かしくなるような甘さ。また食べたくなる味だ。マシュマロのタルトは見た目に意表を突かれたが、さっくり生地の中のもちもちマシュマロが新しい感覚。ホワイトデーなどのプレゼントにも喜ばれそう!
 
 

レモンケーキ

 
レモン風味のケーキをレモンのチョコレートでコーティング。
梅雨のジメジメした時期にはこんな爽やかなお菓子があったら心も爽快になる!
 
 

アルザス

 
いちじく、レーズン、カシューナッツ、くるみ、カレンズ、ドレンチェリー、オレンジピール、シナモンを少しの小麦粉で混ぜて焼いている。
 
奥さんが「子育てしながらお店に立つ時はアルザスが役立ったよ」と話していた。
お子さんがまだ幼児だった頃、アルザスを手に握らせていたそう。ドライフルーツがたっぷり入ったアルザスは幼児がしゃぶるのにちょうどよく、長い時間おしゃぶりの代わりにできる上に栄養価が高い。現在でも売っている店は珍しいと言う。
 
 
ここで一句。
 

雨降りてしとしと曇る心模様
レモン色に夏の太陽待ちわびて
心浮かれし
べるんのレモンケーキ

 
梅雨に入り、外はしとしと雨が降り、心も曇りがちですが、べるんのレモンケーキを食べるとレモン味の爽やかさに、 レモン色の夏空を思い浮かべてしまう。
 
明日も看板を求め、みちのく一人旅はつづく。
 
 

べるん

  住所   仙台市青葉区支倉町4-27支倉ビル1F 電話番号 ‭022-223-3985‬ 営業時間 8:30〜19:30 定休日  不定休(用事がある時はお休み)

 

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りりっくれおなるど
栗原市産まれの仙台市民。写真やファッション、音楽、映画が大好き。靴コレクションは100足突破。栄養士として、学んだ知識と鍛えられた舌で仙台の美味しい物を探している。営業で培った人脈で、食べ物や音楽、アート、洋服などで、仙台を盛り上げる事が目標。いまは立ち飲み屋で吉田類と飲む事が夢です。

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antennasia san (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。soundcloud