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センキュー、ポップカルチャー!
劇団「ロロ」三浦直之を育てたものたち
(後編)

劇団「ロロ」を主宰する劇作家・演出家の三浦直之さんは宮城県育ち。彼の作品は、カルチャーへの偏愛が惜しみなく注ぎ込まれており、ジャンルを超えた多くの人に支持されている。果たして三浦少年は、ここ宮城でどのような青春時代を過ごし、カルチャーを享受してきたのか。大学生のぽんちゃんが、三浦さんのご実家にて、宮城や東北を舞台にした作品や、演劇について想うことについてのお話を聞かせてもらった。

Mar 12, 2018

平成生まれ昭和育ちの大学生、ぽんちゃんこと伊藤優果の連載、「時の流れに身をまかせない!」。
流行や周りの人たちに流されて生きるのではなく、時の流れに身をまかせないで、
ただただ自分の好きなものや好きなことをとにかく追い続けて地に足付けて楽しく生きたい!
そんな思いを胸に、音楽から食まであらゆる文化を探しに出かけます。さて、今日は?

 

連載「時の流れに身をまかせない!」第3回

センキュー、ポップカルチャー!
劇団「ロロ」三浦直之を育てたものたち(後編)

 

 
演劇とはあまり縁のない人生を送っていた私は、劇団「ロロ」に出会ってから、その世界観に一気に引き込まれ、虜になって抜け出せないでいる。
東京を中心に活動するロロの主宰であり、劇作家・演出家である三浦直之さんは、なんと宮城県出身!
三浦さんの作品ではきらめく青春や、人と人とのあらゆるつながりがあたたかく、ポップに表現されている。
まぶしさのあまり、観ていて思わず目尻が下がってしまうし、元気と勇気しか沸いてこない。
そんな作品たちは、三浦さんが学生の頃から愛してやまなかった本や漫画、アニメ、ドラマなどのポップカルチャーから大きな影響を受けているという。
果たして三浦少年は、ここ宮城において、どんなカルチャーライフをを送ってきたのか……?
今回は特別に、まさかまさかの、三浦さんの記憶がぎっしりとつまったご実家でインタビューをさせていただいた。
後編では、宮城や東北を舞台にした作品や、演劇やカルチャーについて想うことについてお聞きする。
 
前編をまだ読んでいない?それならここから。
 

仕事が空くとすぐ宮城に帰ってきたい
自分の記憶を拾い集めて表現する

 
ぽんちゃん(以下、ぽんちゃん)
昨年10月に上演された『BGM』や今年の2月に上演された『透明ポーラーベア』は仙台や東北が舞台の演目でしたが、仙台で上演するということでそういう演目を選ばれたんですか?
 
三浦直之さん(以下、三浦)
今まで劇中で具体的な地名を出すことは少なくて、『BGM』くらいからなんですよ。震災後に、小学校3年生までいた女川に行ってみたら、僕が昔住んでいたアパートを境に波が引いていったなという感じがあって。アパートの前までは小学校とかもあって思い出せたんだけど、アパートから海までの道が全部なくなってしまっているから、何も思い出せなかったんですよ。ここ何あったっけとか、どういうルートで海まで行ってたっけとか全部思い出せなくて。

だから記憶って自分の内側にあるんじゃなくて、外側の場所にあって、それを拾っていっているんだなって思った。それで『BGM』では震災のことは言葉としては全然出ていないけれど、外にある記憶を拾い集めていくっていうモチーフを表現しようと思ってそういう風になっていきました。
 

『BGM』プロモーションビデオ(三重公演)
 
インプットということで、本を読むことが好きだったけれど、演劇で仙台に呼んでもらったりするし、ツアーでいろんなところに行く機会がある。これもインプットだなって思ったんですよ。
『BGM』も実際に旅をしてつくったし、でもそれはフィールドワークだ!ということではなく、のんびりと、基本使わないだろうくらいな気持ちでまわりました。今回の『透明ポーラーベア』でも、ちゃんとロロのメンバーに仙台のことを好きになってもらいたいなっていうのがあったんですよ。良い作品をつくることももちろんだし、場所っていうのを知るきかっけをつくりたいなって思ってて、舞台になっている八木山動物園(セルコホーム ズーパラダイス八木山)に行ったり。その場所に行ってみて景色を感じることも、物語を読むことと同じく、インプットだなって思うから、最近は実際に行った場所がどんどん出てくるようになった。
 

 
ぽん
なんとなく行った場所を取り入れたということですね。例えば『BGM』で、行ってみた場所で、入れる予定がなかった物を劇中に組み入れたものはありますか?
 
三浦
ハードオフとさざえ堂かな。『BGM』の前にも、江本祐介さん(ミュージシャン。Enjoy Music Clubのメンバー。『BGM』の音楽を担当し、出演もしている。)と、ライターのもてスリムさん(編集者、ライター。三浦さんと江本さんの東北フィールドワークでともに旅し、レポート記事を書いている。)と旅をしていて、その最中にハードオフとブックオフを巡ってた。
巡りすぎて、道路を走りながら、そろそろハードオフがありそうだなっていう予想が的中するくらいに(笑)。
それをやりながら、ハードオフを舞台に使おうって行きながら思いついたかな。
福島県の会津若松にあるさざえ堂は、もてスリムが好きでよくいくから行きたいって言って、3人で行ってみたら確かに面白い建物だなって思って。
東京から仙台へ行く旅だと会津は通らないんだけど、最後の過去と現在が全部混ざり合うシーンをつくる時に、さざえ堂の絵がバッと浮かんできたから入れた。
 
『BGM』をつくる旅──東北フィールドワークレポート

 
東北フィールドの旅の様子はここから読むことができる。
http://lolowebsite.sub.jp/vol13/BGM/2017/07/30/moteslim1/
 
ぽん
劇中でハードオフの店内のシーンでBGMが流れてきた時は、笑っちゃいました(笑)。
『BGM』は東京から仙台までの道のりのお話ということでしたが、三浦さん自身が宮城の出身ということは関係していたんでしょうか?
 
三浦
わりと自分の記憶に近いモノにしたいなっていうのもあったし、そもそも東京、仙台、三重っていうツアーが決まっていたから、出てくる地名の距離感が場所によって変わってくるといいなって思って。
東京の人からしたらあんまり知らない場所に向かっていくし、逆に宮城の人が見たら、だんだん知っている場所に近づいてくる。記憶にアクセスする道順が、場所によって変わってくるといいなと。
 
ぽん
確かに、観ていて馴染みのある場所がたくさん出ていました。ちょうど去年の夏に大学のゼミ合宿で会津若松に行って、さざえ堂にも入ったんですよ。ゼミ生40人でぞろぞろと登って(笑)。それに松島の円通院も良くいく場所だったので、なんだか感慨深かったです。
そういえば、偶然このウェブマガジンの名前も『BGM』というんですよ。三浦さんが脚本を書かれたのも『BGM』というタイトルですよね。なぜ『BGM』にしたんでしょうか?
 
三浦
記憶の話にしたいっていうのがあって、バックグラウンドで音楽が流れて、そこから背景が立ち上がって、演劇的な背景、演劇って基本的に何もないので、音から記憶が立ち上がって、記憶が背景になって、背景が景色になるようにしていきたいなっていうことでバックグラウンドミュージック、『BGM』っていう名前にしました。
 

三浦さんの実家には、これまでの演劇公演のポスターが飾られている。
 
ぽん
確かに音楽って、その頃のことを匂いみたいに思い出すような気がします。
 
三浦
そうそう、音楽ってすごく記憶に結びつくんだよね。
 

 
ぽん
生まれ育った土地が舞台の演目を上演するとなると、思うことはあったりしますか?
 
三浦
普段は東京で仕事をしているけれど、仕事が空くとすぐ実家に帰ってきたいって思う。
宮城が好きなんですよ。人の多さ的にも、街の雰囲気的にも好きだから、できることなら住みたい。東京は上京してからずっと居場所じゃないっていう感じがするんですよね。だからいろんなところにツアーをしたりするのも好きなんだろうなって思う。
宮城っていう場所が作品いっぱい出てくるのは、今までの自分の記憶がすごく残っている場所だから、それを拾っていくっていうことに興味があるのかなって思いますね。
 

 

演劇を知ると役に立つ

 
ぽん
宮城の先輩である三浦さんから、このウェブマガジンを読んでいる、学生や新社会人の皆さんにメッセージをお願いします!
 
三浦
僕、高校生と一緒にクリエイションする機会が多くて、いわき総合高校(福島県いわき市)に演劇の授業があって、その授業を見ていると演劇って有効だなって思うんですよ。演劇を知っていると単純に便利なことってあるんだなっていう。人に何かを届かせるとか、人の何かを受け取る能力があると思っていて。だから、演劇って言っても別にしっかり台本があって舞台立ち上げることだけが演劇じゃないから、広い意味で演劇っていうのは知っておくと楽しいですよ、と思いますね。
 
ぽん
伝え方、ということでしょうか?
 
三浦
例えば、いわき総合高校の生徒を見ていてびっくりしたのが「質問ありますか?」とか、何かを見せて「感想ありますか?」って聞いたときに、全員答えられるんですよ。他の高校へ行くと、すぐには言葉にはならないことも多いんだけど、それをパっと言葉にできたりとか。いわき総合高校の授業では、冒頭15分にあいさつっていう時間があって、15分間で毎回短い作品をつくるんです。リーダーがいるわけでもない中で全員でディスカッションして、立ち上げるところまでしている。しかもちゃんと面白いんですよ。単純に、演劇って役に立つものなんだなって嬉しかったりしますね。
 
ぽん
そのことをみんなに知ってもらえると、興味の入り口が広がりそうですよね。三浦さんの作品をはじめとして、ポップカルチャーを知ると、楽しいな、面白いなって思います。
 
三浦
僕自身、小説とか物語に、シンプルに救われたなって思う瞬間がいっぱいあった。みんなもそうなってくれたらいいなって思うんです。だからポップカルチャーに恩返しをしたいっていう気持ちが強い。
 

 
「活躍する劇作家は、ひとり遊びが上手い。」という言葉を聞いた。幼いころから自分で遊びを考えたり、普通の人には思いつかないような奇想天外なアイデアの映像を撮ってみたりと、やりたいことや思いついたことを何でもやってしまう三浦さんは、まさにそれに当てはまると思った。そんな人が宮城にもいたのか!と思うと、なんだかすごく心強いし、うれしい。これからも私は、三浦さんの作品から、元気と勇気をもらい続けるだろう。
 

三浦直之 (みうらなおゆき)

  1987年生まれ、宮城県出身。2009年、『家族のこと、その他たくさんのこと』で王子小劇場「筆に覚えあり」に史上初入選。同年、主宰としてロロを立ち上げ、以降全作品の脚本・演出を担当。2013年、脚本・監督作品 映画「ダンスナンバー 時をかける少女」を発表し、MOOSIC LAB 2013 準グランプリ他3冠を受賞。2015年には『ハンサムな大悟」の戯曲が第60回岸田國士戯曲賞最終候補作に選出。TVドラマの脚本、MVの監督なども手掛ける。 三浦直之Twitter

 

劇団ロロ (げきだんろろ)

  三浦直之(主宰・脚本・演出)、板橋駿谷、亀島一徳、篠崎大悟、島田桃子、望月綾乃、森本華(以上俳優)、玉利樹貴(えかき)、坂本もも、奥山三代都(以上制作)の10名による集団。2009年より東京を拠点に活動中。漫画・アニメ・小説・音楽・映画などジャンルを越えたカルチャーをパッチワークのように紡ぎ合わせ、様々な「出会い」の瞬間を物語化する。小説のリーディングや音楽ライブと融合した短編演劇、映画製作など、ジャンル横断で演劇の枠を拡張しながら活動を行い、2013年三浦直之・初監督作品 映画『ダンスナンバー 時をかける少女』(製作:ロロ)は『MOOSIC LAB 2013』準グランプリ他3冠を受賞。2015年には11作目の本公演『ハンサムな大悟』の戯曲が『第60回岸田國士戯曲賞』最終候補作に選ばれる。代表作は『いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校』『LOVE02』『あなたがいなかった頃の物語と、いなくなってからの物語』など。 http://lolowebsite.sub.jp/

 
企画・編集 高野明子  撮影 嵯峨倫寛

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ぽんちゃん
仙台生まれの大学生。ゼミで、まちづくりについて学んでいる。両親が使っていたフィルムカメラを譲り受け、撮影の練習中。まちを歩きながら、レトロな看板や面白い看板を見つけるとつい撮ってしまう。荒町の喫茶店「ぴーぷる」のナポリタンが大好き!仙台の文化の点を線でつなぐカルチャーウェブマガジン「SEN.」のライターでもある。

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BGM of "BGM"

antennasia san (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。soundcloud