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将棋好きが集う仙台の老舗居酒屋で、
人生の先輩たちに一局挑む(後編)

仙台市役所の近くにある居酒屋「珠や」。イタリーさとうが、赤ちょうちんに誘われふらっと立ち寄ったところ、そこは将棋好きが集うお店だった。将棋が好きな友人を引き連れ、店主の阿部さんやお客さんと一局交えながらお話を聞く、後編。

Apr 14, 2018   

イタリーさとうの修行道へようこそ。時にライターとして宮城の気になることを駆け回り、またある時は芸人の舞台に上がり、さらには司法試験よりも合格率が低いと言われる宮城マスター検定に挑み落ち続ける。そんなイタリーが宮城を代表する何者かになるため、まだ知らない世界や文化へ、若気の至りが許される限り踏み込んでいく。

 

連載「若気のイタリー」第3回

将棋好きが集う仙台の老舗居酒屋で、人生の先輩たちに一局挑む(後編)

 
前編では、将棋好きが集う居酒屋「珠や」店主の阿部力さんと友人の五十嵐くんが将棋で対戦し、敗れる。後編では五十嵐くんが、阿部さんにリベンジすべくお店に来るお客さんと対戦。そして阿部さんとの再戦に挑む。
 
店内のL字型のカウンターには私たちを除いて、3人のお客さんがいた。
1人目は、取材をする私たちに食パンをくれた常連のおばさん。
 
イタリー「1局打ってもらってもいいですか?」
 
「あたしは将棋できないから!」と笑いながら断られた。
 
2人目は、60代後半の男性。
店内にあるテレビを見ながら阿部さんの奥さんの廣子さんと陽気に会話をしていた。
 
イタリー「1局打ってもらってもいいですか?」
 
「いや〜おれはいいよ! いい! いい! おれはやんねぇから!」と頑なに断られた。
 
3人目は、30代の爽やかな男性。
 
イタリー「1局打ってもらってもいいですか?」
 
「打てる程度ですけど、いいですよ!」
 
返事も爽やかに了承してくれた千葉さんと五十嵐くんが対局!
このまま誰とも将棋ができないかと思ってヒヤヒヤしたぞ!
 

 
千葉さん「おじいちゃんに勝ちたくて勝ちたくて将棋覚えたんだよ。」
 
五十嵐「あ〜わかります。自分もおじいちゃんに勝ちたくて覚えて、勝てるようになってから楽しくなりました。」
 
子どもの頃からおじいちゃんに勝てたのか!と五十嵐くんのエピソードを聞いて、6枚落ちでもおじいちゃんに勝てなかった悔しい過去を思い出した筆者。
 

 
対局しながら話しをしていくと千葉さんは初めて「珠や」に来店したそうで、さらに話しを進めていくとなんと五十嵐くんと同じ大学のOBであることがわかった。
奇しくも巡り合わせた先輩後輩対決!
 
序盤は千葉さんが勢いよく前へ出て来たものの、中盤以降はカウンターのように追い詰めていく五十嵐くん。
6一銀と差した五十嵐くんの手に思わず「やべぇな。」と呟く千葉さん。
 
千葉さん「参りました。」
 
先輩後輩対決は後輩の五十嵐くんに軍配が上がった!
 
五十嵐「ありがとうございました。」
 
しばしここで新たなお客さんが来るまで腹ごしらえ。
 

 
「あの真ん中にある、『かき法蓮草ロックフェラー』が気になるなぁ〜」
 

 
「もう……間違いないじゃん……めっちゃ美味しい!」
 
牡蠣の塩加減とほうれん草の甘みが混ざり合って絶妙なコンビネーション!
 
この日はなかなか新しいお客さんが入ってこなかったので、我々も普通にお客さんとして飲んでいた。
私は食パンをくれた常連のおばさんと雑談し、五十嵐くんは2人目のおじさんと会話を楽しんでいる。
いや、おじさんの話しの熱量に五十嵐くんが押されているようにも見える。
 
そのまま1時間半ほどが過ぎた。
おじさんの熱は冷めることなく、むしろ美味しい酒とつまみとともに勢いを増し、五十嵐くんを飲み込んでいる。仕事の話し、政治の話し、国際情勢の話し。だが、現役大学院生の五十嵐くんも自分の主張で会話に食らいつく。
頑張れ!と内心で励ましながら、将棋よりも熱い1対1のディスカッションが繰り広げられている!
 
ふとした拍子に、おじさんが将棋のことについて語り出した。
私はその瞬間を見逃さなかった!
 
イタリー「あれ! お父さん将棋詳しいですね! どうですか?五十嵐くんと1局お願いしますよ〜!」
 
と、すかさずお願いしてみた!
 
「またそうやってね! すぐ勝負だ! 勝負だ! ってね。」
 
「…じゃあやるか?」
 
私は、ポケットの中で小さく握り拳を作った。
 

 
熱いおじさん、樋口さんとの対局いざ、開幕!
それまでの会話では五十嵐くんが防戦一方だったが、将棋では果敢に攻めていく。
 
樋口さん「げぇっ!」
 
「やだな〜やだな〜。」
 
稲川淳二の怖い話しを聞いているかのような樋口さんのリアクション。
 

 
阿部さん「うんうん、そうだねぇ。」
 
と、阿部さんも対局の様子を見守る。
 
樋口さん「ありぁ〜なんだこれっ。」
 
「負けた!!」
 
五十嵐くんが終始有利に試合を運び見事勝利!
 
 
さぁ、そして阿部さんとの再戦。
阿部さん「私が飛車角落ちでやってみるかね?」
 
と阿部さんからハンデの提案。
実力差はあるものの、ハンデがあれば五十嵐くんも負けない気がする!
 

 
阿部さんとの第2戦ハンデマッチが始まる。
 

 
阿部さんが「歩」を全体的に前に出してジワジワとラインを上げて行く。
それを受けて五十嵐くんは前に出づらい様子。
阿部さんが扱う「歩」のプレッシャーがすごいことは伝わってきた。
 

 
とてもハンデがあるとは思えない阿部さんの圧力に五十嵐くんが徐々に押され始め、ついには追い詰められた。
 
阿部さん「これでこう!はい、で、これはもう取るしかないねー!」
 
五十嵐「逃げると詰みなんですよねー。」
 
阿部さん「で、そうするとこう!」
 
五十嵐「………(詰み)。」
 
阿部さん「もう1回挑戦する!?」
 
五十嵐「お願いします。笑」
 

 
ハンデ戦は阿部さんがまたもや勝ったが、続けて泣きの1回に挑む!
 

 
だが、五十嵐くんはここから何かが変わった。
普段、大学の研究室に篭って実験&検証を繰り返す日々を過ごしている男だ!
この敗戦から同じ過ちは繰り返さないと、今度は優勢に立つ展開を作りだし、
阿部さんを追い詰めていく。
 
阿部さん「う〜ん、完璧に負けてる。でもでも、頑張るよ!」
 
と粘るもののついに!
 
阿部さん「参りました。」
 
やった!五十嵐くんがやっと勝てた!(ハンデあるけど)
 
阿部さん「いい筋だね! 強い強い。何十年と若い人見てきたけど、久しぶりに感じたね。うん、おたくは伸びる。強くなるよ!」
 
と、最後はお褒めの言葉ももらった五十嵐くん。
 
一日を通して五回戦った。
有段者の将棋好きのおじさんたちは、この日現れなかったが、将棋の腕試しを通してはもちろん、お客さん同士で交流が広がる居酒屋にも初めて入ったことにより、たくさんの気づきがあったようだ。
 
五十嵐「将棋は阿部さんと戦って成長できたし、もっと勉強しなきゃなと思った。いや〜いろんな人がいるんだなと思った。樋口さんとずっと話ししたこともそうだけど、初めてこういう場所に来たから新鮮だったよ。」
 

 
将棋好きが集まる店「珠や」。そこは将棋を愛する色々な人々が行き交う交流の場であり、私たち若者にとっては大人からたくさんのことを学ぶ学び場でもある。そんな気がしました。
 

 
(なぜか出っ歯の入れ歯をつけたチャーミングなお写真が飾ってあった!)
 
阿部さんご夫婦もとっても素敵なお二人なので、ぜひ行ってみてください!
 

珠や

住所 仙台市青葉区国分町3-2-13 電話番号 022-227-3916 営業時間 16:30〜22:00 日曜定休
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イタリーさとう
1993年宮城県仙台市生まれ。通称よっくん。地元仙台を拠点に活動するローカルフリーライター/宮城マスター検定見習い。地元の魅力あるものにスポットライトを当てて記事や映像で輝かせることが得意。仙台のカルチャーウェブマガジン「SEN.」などに寄稿。現在は利府町のシェア型複合施設「tsumiki」スタッフとして企画・運営に関わる。また、お笑い芸人としてもたまに活動中。特徴の太いまゆげは先祖代々の遺伝子情報に記載。

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antennasia san (vocal) とNerve (track) により1999年に結成。ブリストル・サウンド、ダブなどをルーツとする。アルバムごとに音楽性の幅を広げつつ、一貫して、sanのヴォーカルを軸としたトリッピーなサウンド/ベース・ミュージックを追求している。soundcloud